第62章   仁徳天皇記(3)
 またまた 皇后石之日売 いわのひめ 激怒する
  ある日 石之日売は 新嘗祭 にいなめさい 豊明りの祀りの酒宴の席で使う”柏の木の葉”を採りに
 おおぜいの従者を引き連れ 高津の宮を出発して 船で
(紀の国)へ向かいました。
 鬼の居ぬ間にというか 皇后の留守の間に 天皇は
八田の若郎女わきいらつめ 嫁に迎えたのでした。
   
         あ〜あ こりゃ また 大騒動になるぞ!こりゃ ツノ八本じゃ済まないよ オイラ知らないっと‥‥ボサツマン
 ☆ 水取人 仕丁よほろ                                     水取り人の始祖 もいとりにん
  一方 皇后石之日売は 御綱柏
みつなかしわ を満載に積み帰路に向かう船の上で ニコニコと上機嫌じょうきげん です。
  その途中 船の飲み水の補給で港に寄った時
水取人 もいとりにん 船の水の係り)
 
天皇は、皇后の留守の間に、また、新しいを娶った 港でもちきりの噂話を 聞いてしまったのです。
 
さあ!たいへんな話を聞いてしまった!どうしたらいいのか?                    
  港の噂話を聞いた
水取人仕丁よほろ は 皇后に知らせるべきか黙っているべきか 悩み苦しみました。
 皇后の従者の立場の仕丁よほろ 港で 見逃しできない話を 聞いちゃたのです。
 
仕丁には 皇后に伝える義務があります。でも 皇后が聞いたら大事おおごと に 発展するに違い無いです。
  でも この港の噂話を自分が聞いていた事を 後から 皇后が知ったならば 自分は殺されるに違いない。
  水取人の仕丁
よほろ  皇后さまに正直に話した方が 自分の身のためである と決心しました。
  そこで
仕丁船に戻って 港で聞いた噂話を 皇后に伝えました。
  港の噂話では 天皇は最近 八田の若郎女と結婚されたようですが‥‥‥」と 恐る恐る伝えた。
 これを聞いた 皇后石之日売いわのひめ つの 百本出して 激怒狂い    (ヤッパリ)
  頭に血がノボッタ皇后は 積み荷
祝いの柏 御綱柏みつなかしわ を ことごとく 海に投げ棄ててしまった。
 
それでもまだ 怒りがおさまらない皇后は 高津の宮へは帰らずに 難波の堀をさかのぼり
  淀川から山代の国へ船を進め 山代の国を廻って 那良
(奈良)の山口に着き 心境を歌にした。
 
 ーつぎねふや 山代河を宮上り我が上れば あをによし 奈良を過ぎ小楯倭を過ぎ我が見がほし国は 葛城高宮 我家のあたり
  しばらくして 皇后怒りが 少しづつ静まっってきた皇后ある日自分の心境を
 
我が見がほし国は 高宮 我家のあたりと 歌に詠んだ。
            オイラは 天皇の男の気持ちも分かるが 皇后の気持ちも理解できます 辛いですね 皇后さま……… ボサツマン
 本当の気持ちは高津の宮に帰りたいのに 素直になれない自分が嫌いや で自分を責めている皇后でした。
  この歌は 帰ることを望みながら 躊躇
ちゅうちょ して ”微妙にゆれる女心”を詠った歌です。
  その後
皇后高津の宮へは帰らずに 百済の帰化人奴理能美
ぬりのみ の家に落ち付きました。
 
奴理能美ぬりのみ の家は 筒木つつき の地(京都府綴喜群)ありました。
 
皇后奴理能美の家で まづは 暫く 腰を落ち着け暮らす覚悟を決めました。

 さて 一方の高津の宮では 皇后が立腹”したまま帰って来ないので 天皇も家臣も皆 困り果てています。
 連絡しても 全く知らんぷりで 返信がありません。無しのつぶてです。困った天皇は頭を抱えこんでいます。
 
新妻となったばかりの八田の若郎女わきいらつめ も 気が気ではありません。
 若い彼女は 何も考えられずに 頭のなかが真っ白で オロオロするばかりです
 天皇は とりあえず新妻 若郎女を 実家に 帰すことにしました。
          なるほど まずは 問題の女性をこの場から去らせておいて  ま 妥当な判断でしょう ‥‥‥‥‥ボサツマン

 仁徳天皇は まづ 新妻にいつま 高津の宮(住まい)から 実家へ戻しておいて  (距離をつくっておいて
  それから
皇后石之日売に歌文うたふみ を届け機嫌を伺いながら 気持ちを伝える戦法にでました。
 
ご機嫌をとりなす歌

 
山代に い及
け鳥山 い及けい及け吾が愛し妻に い及き逢はむかも 御諸の その高城なる大猪子が原
   大猪子
おおいこ が腹にある 胆向かふ 心をだにか 相思はずかあらむ

 意味: い及き逢はむかもぜひ逢ってください
心をだにか相思はずかあらむ心だけは お互いに相思わずにいられない
                      いや〜!天皇さまも大変だ〜 天皇の心の苦しみ わかりますよ ‥‥‥‥ ボサツマン

 さて この歌文を届ける役は 誰が良いのか これが難問重要です。ここが重要なのです。
 皇后さまの ご機嫌をそこねないようにして 歌の手紙を渡すことができる人物は そう簡単にいません。
 ところが
ギッチョンチョン。一人いました。口子の臣」くちこのおみ です。
 口子の臣くちこのおみ 口比売くちひめ
皇后に仕える下女げじょ です。 
兄と妹が会うのは 簡単なことです。
 こうして 天皇の歌文うたふみ を皇后に届けるという重大な任務は
口子の臣に決まりました。
 
天皇からの歌文皇后に届けるだけです。 この意図も簡単な行動なのだが 事態が事態なだけに
  もし 皇后さまが
”へそを曲げたら”もう アウトです。口子の臣に 切腹が命じられます。

  口比売
も 責任重大な立場になりました。 兄妹は この重大な局面を無事乗り越えれるでしょうか?
 
 
難易度が高い役目を請け負ってしまった 口子の兄妹の生命いのち をかけた戦いが 始まります。

 実は 口子の臣の役目は 単なる 天皇の歌文
うたふみ を届けるだけでは ありませんでした。

 天皇の歌文うたふみ を届け 且つ 天皇と大后との
依りを戻すという使命を 命じられておりました。 
 この計画の遂行は慎重に且つ丁寧に行う必要があるのです。失敗は死ぬことなのです。

 だが 成功の暁
あかつき には 口子の兄妹は 出世街道を悠々と 進んで行ける可能性が大いにあります。
 兄が天皇の代理でやって来ると聞いた口比売は 早めに手を考えていました。
 兄の成功は 同時に妹の成功なのです 兄も妹も真剣です。
                   
  何事も 真剣に行うことが 大切です ‥‥‥ ボサツマン 偉そうに言うな すいません
 ◎ かいこ が取り持つ縁
 口子の臣口比売の兄妹と 奴理能美ぬりのみ の三人は 膝を突き合わせて 綿密な作戦を練りました。
 
誰も悪者にならず
天皇もウシロメタさ無く 皇后も気まづさを感じない 最高の作戦が完成しました。
 Good idea
wondeaful  これはいい案です   ボサツマンも いい案があるのに 相談してくれれば‥‥‥関係ないか!
 口子の臣は さっそく 高津の宮に舞い戻り
 
『天皇さま じつは 奴理能美ぬりのみ の家では 非常に珍しいを 飼っていました。
  
皇后さまが 筒木
つつき
の地 奴理能美の家長く滞在しているのは その珍しい虫に 大変興味をもったからです。
  
なんと その虫は 這う虫ながら まゆ となり 最後は 飛ぶ鳥となる 三度も変わる不思議な虫なのです。
  
皇后さまは たいへんお元気で遊ばしておられます。その虫を大変お気に召して 毎日 楽しく お過ごしでありました。
  そして 天皇さまにも ぜひ ご覧になりに来てほしい皇后さまは申しておりました』と 天皇に報告しました。
 聞いた天皇は 安堵の表情をうかべ そんな不思議な虫ならば 私もぜひ見てみたい 今から出発じゃ
  その後 天皇 皇后共 穏やかな笑みを浮かべ 二人仲良く 高津の宮へお戻りになられた。
  天皇も皇后も 共にメンツが立ちました。よかった!三人の智慧と努力が 実を結びました。
  お土産として 奴理能美は飼っている
珍しい虫かいこ
を 天皇に奉りました。      めでたし!めでたし!
   
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