レタリングの移り変わり

漢字の発生は、中国の殷(いん)の時代(今からおよそ3500年前)の甲骨文字であるといわれています。

かな文字の発生は日本の平安時代(今からおよそ1000年前)で、漢字を単純化して作られました。

欧文文字(アルファベット)の発生はフェニキア人の地中海時代(今から3000年前)といわれています。

しかしどれも明確にいつとはいえません。文字の形は、時代がたつにつれて、さまざまな変化を経て、今日に至っているのです。

今日の印刷文字は、中国の明の時代(16世紀)に発生したといわれる明朝体を基本的な書体としています。

それは、版木(はんぎ)に文字をスピード・アップして彫る必要から、タテ・ヨコ垂直水平の、いわばメカニックな形にしたもので、のちに活字化するときに、この書体を取り入れたのです。

一方、ゴシック体は、欧文文字(アルファベット)の影響でつくられたものです。

欧文文字の基本は、ローマ字といわれるもので、古代ローマ時代の石に彫られた文字の形を活字化するときに取り入れたことから、そう呼ばれています。

1450年、活字の発明者として知られるグーテンベルクが活字として用いた文字の書体は、ブラックレターといって、今日ではほとんど使用されていないものです。

さて、日本では、明治の文明開化と同時に印刷技術が発達し、活字の書体は明朝体を基本として発展しました。ローマ字も移入されて、生活の中に入りこんできました。

大正時代から昭和の初期になると、西洋化もこなれてきて、欧米の影響を濃厚に受けながらも、日本的な解釈でレタリングが盛んになっていきました。

昭和の後期、つまり第2次大戦後は、平和な繁栄の時代となり、産業の発展と同時に、レタリングにさまざまのバリエーションがもたらされ、多様化の時代となりました。

別冊アトリエ 147(1990年10月25日発行)「新レタリングの書き方」よりの抜粋です。
著者; 女子美術大学デザイン科 教授 田中正明 助教授 立石雅夫
発行所; アトリエ出版社 東京都新宿区四谷2-8 新一ビル 電話03-357-2741
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