小林歯科診療所



思いつくままに(その1)

[健康保険制度のあれこれ]

保険診療と保険外診療の違い

 原則的に違いはありません。ただ、保険診療には、色々な決まりや制限があります。技術的
には制限はほとんどありませんので、仕入れのいらない技術的なところは、術者ががんばれ
ば、満足のいく治療が可能です。ただし、治療行為それぞれに、請求できる金額が決められて
いますので、使用できる材料には定められたものしか使えません。また中間材料といわれるも
の、たとえば型を取る材料などは、基準の価格に添ったものを使います。それが必ずしも悪い
わけでもありませんが、十分満足できるとは、限りません。また、義歯や金冠などの制作を依
頼する場合も、技術力は別にして、料金的に基準にあった技工所を選択することになります。
 歯科治療の最大の特徴は、最終の処置のほとんどが「もの」が口の中に入るという事です。
その「もの」に大きな制限を受けているのが、術者にとっての、最大の不満(保険治療の限界)
となっています。

保険のいれば(義歯)は、噛めない?
 噛めるはずです。使う材料も作る方法も、基準にあったものを使うので、ふつうの場合は、問
題はありません。ただ、患者さん個々の口の中の状態によっては、「難しいケース」と呼ばれる
場合があります。この場合は、制作途中に色々の工夫をしたり、特別の道具を個別に作った
り、材料や方法に保険の基準では間に合わない場合もあります。
 例えば自動車をうまく運転するのに練習がいるように、入れ歯を使いこなすのにも訓練が必
要です。また日常の整備も同じように必要になります。患者さんと術者が、とことん付き合って
訓練と調整と慣れを繰り返して初めて、入れ歯は自分のものとなります。ただ残念なことに、使
い心地の良いと言われる金属床や、外観を良くする材料の一部は、保険の対象外になってい
ます。

ごく一般的な義歯です。バネ
やバー(両側の義歯をつなぐ
装置)人工歯などの部品を
別々に作って、プラスチック
の中に埋め込んで組み立て
るため、異物感に問題があ
ります。
金属床義歯です。バネを含め
骨格を鋳物で一体として作り、
その上に歯を並べます。歯肉
に密着して、異物感が少なく、
慣れやすい義歯です。ただ、
保険外で、費用が高くなりま
す。
舌感や外観を良くするため、土台 の歯に装置(アタッチメントと呼び ます)を取り付け、バネを無くした り、バーを付けずに片側で纏める 製作法です。
(図はコーヌステレスコープです) 保険外になります。

前歯は保険で(白い歯の)治療は出来る?出来ない?
 原則的にすべての治療は健康保険で出来ます。ただ色々な決まりがあるので、希望通りに
いかないことが多いのです。特に前歯は外観が重要で、患者さんも白い歯を希望されます。
前歯の治療は、現在では土台の上に金
属を被せ、その表面に、プラスチックを張
り付けたり、瀬戸物を焼き付けるのが一
般的です。土台が崩壊して被せられない
ときは、ポストと呼ばれるピンを歯の中に
差し込み、その上に被せます。
 健康保険では通常白い歯はプラスチックを使います(既成の瀬戸物の歯を使う特殊な方法も
ありますが)。化学製品は進歩が早く、改良が重ねられ、現在ではグラスファイバーを混ぜて硬
く強さを増した「硬質レジン」と呼ばれるプラスチックが主流です。自然に近い色と形が出せる
ようになりましたが、材料の性能上からも、又、加工の手間賃が低く抑えられていますので、細
かい色付けをしたり繊細な形を表現する作業を追及することは難しく、保険外で手間閑かけら
れる陶器の歯にはかないません。改良されてもプラスチックは、退色(色が変わる)し磨耗(磨
り減る)するのは防ぎきれません。
 最近「ハイブリッドレジン」と呼ばれる新しいタイプのプラスチックが開発されました。弾力性も
あり、色の再現性も従来より優れています。ただ操作もやや複雑で、価格も高く、まだ保険に
は採用されていません。破断に強い(欠けにくい)性質を利用して、金属の代わりに鋳物と同じ
使い方で詰め物にも応用できるので(見た目が歯と同じ色)、今後が期待されます。
 特に前歯では、技術力の他に、製作する歯科技工士さんの「センス」によって外観の雰囲気
が変ります。センスが良くて、技工料のほどほどの技工士さんが確保できれば良いのですが。
                                                   つづき

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