《1・2・3月》
正月休み明け、近年になく多忙でした。曰く「詰め物とれた」「入れ歯が壊れた」「腫れて痛い」・・・。
日曜から日曜までの8日間、普段の1週間ではこれほどのトラブルはありません。正月とは特別な日なのかと不思
議に感じます。統計は取っていませんが抜歯とその後の義歯の修理と新製が多かったように思います。
当院の患者さん「後期高齢者」の方が4分の1以上、「前期高齢者」の方を含めると3分の1を超えています。最も院
長も後期高齢者でお付き合いが数十年に及ぶ患者さんも多いので当然でしょう。そのため義歯(入れ歯)を作ること が多くなりました。義歯は手順を正しく行えば適合のよい使いやすい作品ができます。たとえば、「各個トレー」(口に 合った印象(型)を採る道具を作る)などすればよい製品となります。もっとも採算には合わないのですが・・・装着して から調整に手間取ることを考えれば得策なのです。
そしてこまめな日常の調整も必要なのですが、具合がよければ定期検診も抜けてしまい、不具合が多くなってから
来院されます。ガタガタになってしまった義歯は修復に時間も手間もかかります。「検診」はこまめにすることが肝要 なのです。特に「義歯」は擦れて痛くなったり、外れ易くならない限り不便を感じないので来院されないことが多くなり ます。
4・5・6《月》
想像もしていなかった事態「新型コロナウイルス」の全世界での蔓延が起きました。連日新規の感染者が報告され
「緊急事態宣言」が出され、無用な外出、移動をしないと勧告されています。
歯科医院とはいえ医療施設ですから休むわけにも行かず、通常通りの診療を続けています。医療・介護施設での
感染も多くなっています。“歯科”は直接この種の感染症を扱わないのですが、歯科界のニュースとして「歯科医師、 歯科衛生士」のコロナウィルスの感染が意外に多いと報告されています。
歯科の診療は、直接口腔内に接触します。う歯の治療は直接歯を削る作業が多く、当然飛沫が唾液とともに飛散
します。口腔内外のバキュームを使用しても、完全には防御できません。マスク、めがね、手袋は必須となります。そ れでも3密の内もっとも感染の危険の大きい“密着”(通常40〜50cmの近接で施療)がなければ治療行為がおぼつ かないのです。
術者(歯科医)から患者さんへの感染は考えられませんが、毎朝体温測定し体調異常の有無を確認しています。
願わくば、患者さんも同様な管理を自己で行い、異常を認めたら様子が判断できるまで待機していただきたいので す。
《7・8・9月》
突然「保険診療」に6月から新しい材料が追加されました。「チタン」です。
「チタン」は歯科材料としては「鋳造床(鋳物の義歯)」としてかなり前から使用されています。最近では、「人工歯
根(インプラント)」の材料としては唯一無二の素材として認められています。しかし、いずれも保険適用外(一般診 療)でかなり高価となっています。
義歯では軽く薄く出来、インプラントでは組織親和性が良く(馴染みやすく排除されにくい・骨に良く着く)他の材料
では代えられないのです。保険採用されない理由は、いずれも高度の技術が必要で施術費用が高くなるからです。
それでは冠(全体を被せる治療)に保険適用になったのはなぜでしょう。単に材料が現在使用されている金パラジ
ューム銀合金に比べ格安なのです。というより昨年から「パラジューム」価格が高騰していて保険財政を圧迫し始め ているのです。急遽パラジューム合金の使用量を抑えるために導入されたと考えざるをえません。
「チタン」は軽くて組織親和性があり材料としては欠点がないのでしょうか。危惧するのは純チタンは溶融温度が高
く、硬度が高い(堅い)のです。製作は鋳造ですから、高温による鋳造精度の検証がどれほどされているか報告があ りません。精度が問題になります。“硬い”という事は歯根(歯を支える組織)に負担がかかり過ぎること、咬合調整 (噛み合わせ)も難しく、自然なすり合わせ(咬耗)も起こらないのです。
付き合いのある技工士さんも「チタン」に対しては懐疑的で、取り入れる事は静観するようです。患者さんの口の中
に長期間入れるのですから、それなりの実績のある製品が求められるのです。
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