今月のひとこと バックナンバー【平成31年】

《2・3月》

 昨年の健康保険3月改定で強く打ち出された第1が「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化強化、連携
の推進」でした。
 具体的には「1.かかりつけ歯科医の機能強化の評価」、「2.周術期の口腔機能管理の推進」、「3.質の高い在
宅医療の確保」、でした。
 抽象的すぎてすぐには理解し難かったのですが、要旨は「治療中心型」から「口腔機能管理」を追加して「治療・管
理・連携」の一体型を目指すと理解しました。が、それでも具体的に何を目指すのかは、依然理解し難いのです。
 高齢化に備えて在宅診療や他職種との連携を重要視している。そこまでは理解出来るのですが、通常の訪問診
療と異なる設定もされました。「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の設定に「施設基準」が設けられまし
た。歯科医師の数や歯科衛生士の数などの基準、詳しくは述べませんが一定の診療行為の数などいくつかの条件
を満たす必要があります。普通の一人でボチボチ診療している“町医者”で要件を満たすのは難しいのです。
 まだ完全には制度が理解出来ていませんので、順次解説出来る部分から述べていきます。特定の施設基準を満
たすか否かで、診療報酬に差が出ることに矛盾を感じます。患者さんの高齢化が進み、通院が困難になっている方
が増え、訪問診療の依頼が増えてきています。幸い、制度を利用して訪問診療専門の歯科医院も増えているので、
そちらに任せられるようにもなりました。しかし、長年お世話してきた患者さんは、出来るだけ生涯のお付き合いにし
たいのです。報酬の加算はなくても・・・。
 

《4・5・6月》

 「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化強化、連携の推進」を理解しなければと思い、資料を読んでい
ます。判りやすく解説をと思い読み返していますが、旨く纏まりません。講習会で提供された資料を読み返すほど混
乱してしまいます。
 それではと、要点をいくつか抜き出してみましたので、順に羅列になりますが述べて行くことにしました。
 先ず初診料・再診料の加算要件「院内感染防災対策について別に定める施設基準に適合しているものとして届け
出て認められる。(簡潔に述べるため細かい要件は省略しています。)
 最近の傾向として、何かの加算点数が定められた時に、「施設基準」なる要件を満たすことが要求されます。この
場合患者さん毎に滅菌処理をした機器・器具を使用する。院内感染対策の研修を受ける。滅菌器具の機種の届け出
などいくつかの要件があります。
 此所で疑問なのは、掲げられた要件は、教育を受けた歯科医師であり、診療に当たっている者にとっては当然のこ
とが述べられているに過ぎません。実行していることを証明すると言うことは、日常的に実行されていると限らないと
疑われていると考えます。医療担当者にとって、当然のことを、わざわざ「届け」によって証明する必要があるのでし
ょうか。書類だけ整えれば・・・などもあり得るのですが・・・。

《7・8・9月》

 白い歯・・・口元の自然な感じを求めることは当然な欲求です。
 以前より、健康保険でも前歯6本にはプラスティック(硬質レジンで前装した金属冠)仕様のジャケット冠(被せも
の)が認められていました。
 ごく最近ですが、小臼歯(前から4・5番目の歯)に少し性質は違いますがハイブリッドレジンと呼ぶプラスティックで
の冠が認められ、追加で「大臼歯(奥歯6・7番目)」にも、かなり厳しい条件付きですが認められ全ての歯が金属色
から逃れられるようになりました。
 しかし意外にそれらが施術されているのは実際には少ないのです。以前にこの欄に書いていますが、臼歯部(奥
歯)でのハイブリッドレジン冠はCAD・CANと呼ばれるコンピューターシステムでしか製作出来ません。導入には多
額の費用がかかり、注文がどれだけあるのか不明なので、大多数が小規模な技工所さんでは導入をためらってしま
います。
 実際に施術する歯科医師にとっても未知な点が多すぎます。歯台形成(被せものの土台の形を作る)が従来の金
属冠と異なる、材質の耐久性や強度に不安がある、模型上でも疑問はありますが口腔内の直接CADセンサーによ
る読みとりでは、一番肝心な歯頚部の再現が不十分ではないかなど解決出来ていない点が多すぎるのです。
 診療現場では「見切り発車」、何のためにとの疑念が尽きないのです。「高騰する貴金属による保険財政の負担増
を避けるため」などの憶測は当たっているのではと。
 数十万円、場合よっては百万円を遙かに超す負担をかけられる側にとっては、事前に説明もない項目の通達には
納得がいかないのです。  

《10・11・12月》

 「金」の価格が高騰しています。歯科治療にとって欠かせない材料なのです。健康保険での使用金属にも一部使
われています。
 科学の進歩によって、合成樹脂(プラスティック)の進歩がめざましく、歯科治療も金属を使わずに出来ることが多く
なっています。しかし、化学材料は進歩が著しく改良が更に進み未来がありますが、金をはじめとする貴金属には、
長年の実績と信頼があります。現在では使用目的によれば、金合金の性能に匹敵できる物も現れています。
 貴金属の最大の欠点は投機によって価格が変動する事です。というより現在では右肩上がりに高騰を続けていま
す。保険財政も圧迫され、行政も貴金属以外の材料への転換を推進しています。
 ただ現場では、経年的な評価が十分でない材料や製作方法には懸念が残ります。やり直し再制作が可能な義歯
(入れ歯)などには「試してみる」使い方が出来ますが、歯を新たに削ったり固定する場合、厚みが僅か10mm程度の
歯には負担が大きく再治療は避けたいので、経験的に信頼できる治療法に偏るのです。
 現状ではプラクティック製品の最大の長所は「歯に合わせた色の再現」短所は「耐久性と精密度の不足」といえま
しょう。


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