4年目のサプライズプレゼント
そして、結婚記念日当日。
予定通り航海に出た進は、ただいま某α星付近を航行中。奥様だけが一人、4年目の結婚記念日の朝を迎えた。
といっても、今日は何の行事もあるわけでない。いつも通り、息子達を保育園に預け仕事をし、そして夕方、再び息子達を連れて自宅に戻ってきた。
いずらを交えて、二人と一匹で仲良く遊ぶ息子達を眺めながら、雪はひとりごちた。
「ふうっ、今日もお疲れ様…… 今日で4年目かぁ〜 去年はママに子供を預けて二人でお食事できたのにねぇ」
仕事だから仕方がないと思いながらも、ちょっぴり寂しい。今頃は、夫は宇宙の真っ只中を航行しているだろうから、私信も届くことはないだろう。
せめて、宇宙の基地に滞在している時なら、顔を見て話くらいはできたのに、とさらに寂しくなった。
(もうっ、雪ったらだらしないわね。かわいいナイトさんが二人もいるじゃないの!)
元気に部屋の中で駆け回る――一人と一匹は這い回っているのだが――子供達を眺めながら、そんな風に自分にはっぱをかける。
(でも……)
出かける前に夫は、「記念のプレゼント贈るからな」などと得意げに言ってたけれど、今の今まで何も届いていない。
(ほんとに何か贈ってくれるんでしょうねぇ? もしかして、進さんが帰ってきてからなのかしら?)
などと思っているところに、ちょうどドアのベルが鳴った。
「お届け物です!」
その声に、雪の心が躍った。
(あっ、進さんから!?)
その予測はばっちり正解だった。受け取ったのは、両手の上に乗るくらいの小さな箱。
雪はリビングに戻ってくると、大急ぎでその箱を封を解いた。何かお届け物ということで、守と航もやってきて覗き込んでいる。守が代表してかわいらしい声で尋ねる。
「ママ、それなあに?」
「うふふ…… これはね、パパからママへのプレゼントなのよ。なにかしらねぇ?」
守に説明しながら、雪は自分の胸がどんどん軽く弾んでいくのがわかった。
彼がプレゼントをちゃんと覚えていてくれたということだけで、もう十分嬉しい。だからもう、中身はなんだっていい……雪は心の底からそう思った。
あて先の書かれた外装をとくと、中には美しい包み紙に包まれた四角い箱が入っていた。
守と航に見守られながら、雪はゆっくりとその包みを解いた。するとそこから出てきたのは……シンプルな木目デザインの上品な小箱だった。
「宝石箱?」
(それほど特別なものでもないけれど、進さんにしては上出来かな?)
などと思いながら、雪がそのふたを開けると……
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(背景:pearl box)