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* スイッチング電源とは *
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私たちの身の回りにある電気・電子機器には交流モーターのようにAC電源で直接動作させる機器、家電製品のようにAC電源をDC電源に変換して動作させる機器、携帯機器のようにバッテリーで動作させる機器等があります。
これらの機器を使用する際にはAC電源をDC電源に変換したり、DC電源を別の電圧のDC電源に変換したり、更にDC電源を再度AC電源に変換したりします。ある電源から別の電源に変換する方式には、シリーズ電源(リニア電源)と呼ばれる方式とスイッチング電源と呼ばれる方式があります。
水道の蛇口にたとえると、シリーズ電源は蛇口を開けっ放しにしておき、使わない分は捨ててしまう方式です。スイッチング電源は頻繁に蛇口を開閉し、必要な分のみ取り出す方式です。従ってスイッチング電源の方が電力使用効率が高くなります。
スイッチング電源には入出力が絶縁されている絶縁型、GNDが共通のチョッパ型等の構成方法による区別や、、電圧モード、電流モード、リップルコンバータ等の制御方式による区別等、多数の分類方法や呼び名があります。
このHmoe PageではAC電源をDC電源に変換するスイッチング電源をACDCコンバータ、DC電源を異なる電圧に変換するスイッチング電源をDCDCコンバータと呼びます。
弊社ではDCDCコンバータ用の制御ICの開発や応用分野を得意としていますので、DCDCコンバータを想定した記述が多くなっています。
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* スイッチング電源の問題点 *
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スイッチング電源はスイッチング素子をオンオフさせることで入力から必要な分だけ電力を取り出し、それをLCフィルターで平滑して、後段の負荷に送ります。
動作原理は簡単ですが、実際の回路設計に当たっては難しい点、注意すべき点が多数有ります。
主な項目は次のようになります。
−回路が複雑になる
−部品選定が難しい
−ノイズが発生する
−位相補償が大変
昨今の電子回路設計は回路シミュレータを用いて、試作を行う前に机上での確認が出来るため、実験室レベルでの試行錯誤が大幅に削減できます。しかしスイッチング電源ではTr,TfはnSecオーダー以下、動作時間は数十mSec〜数秒のオーダーとなり、細かな刻みで長時間のアナログ回路シミュレーションが必要です。シミュレーション時間が非常に長くかかるだけでなく、途中で止まることも多々あります。
それが前述の問題点がなかなか確立されないことの理由の一つかもしれません。
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* ノイズ *
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スイッチング電源のノイズには電流性ノイズと電圧性ノイズの2つの要素があります。
スイッチング電源はスイッチング素子をオンオフさせることで、入力電源から必要な分だけ電力を取り出し、それをLCフィルターで平滑します。そしてスイッチング素子のオンオフの瞬間に、回路に流れている電流の経路が急変します。この電流経路が変わる瞬間の電流の流れがスムーズに行かない場合は、回路の配線中にあるインダクタンス成分と相まって大きな電流性ノイズを発生します。
またスイッチングノードは入力電圧レベルからGNDレベルまでの振幅でパルス的に動作します。この電圧変化のスピードが速い場合は電圧性の輻射ノイズを引き起こします。また変化スピードが速いとスイッチング素子の入出力端子にリンギングが発生します。電圧変化のスピードを鈍らせれば電圧ノイズ低減につながりますが、電力変換効率が低下しますので、最適な動作に合わせ込みが必要です。
ノイズ低減には、制御IC、部品、基板パターンの3つの要素をバランス良く組み合わせ、かつTr,Tfを微調して全体を合わせ込んでいくことで対策します。ノイズ対策で最も知られているのはGNDパターンの描き方ですが、更に重要なのがバイパスコンデンサの位置です。電流経路の変化をスムーズにするために最も重要なのがバイパスコンデンサの位置で、パスコンの位置が決まればGNDの取り方が決まってきます。
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* 位相補償 *
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スイッチング電源は負帰還回路なので、安定に動作させるためには位相補償が必要です。
電源系の安定性やゲイン、帯域は位相補償によって決まります
電源系の位相補償は制御回路中のエラーアンプ(誤差増幅器)の入出力端子に接続するCRによって行います。位相補償の詳細は海外の文献にいろいろな記述がありますが、具体的な手順に関して記述した資料は殆どありません。
位相補償を行うには、まずSpice等の回路シミュレータを用いてひな形定数を導き出しておくことが重要です。下記資料はスイッチング電源の一種である電圧モードDCDCコンバータにおいて、回路シミュレーションによってひな形定数を導き出す場合の例です。
位相補償手順例 へのリンク
この方法でひな形定数を導き出した後に、FRA(Frequency respose Analizer ・・・ 周波数応答分析器)を用いて実際の基板でCRを取り替えながら調整します。
シミュレーションによって導き出した定数を変更するのは、回路中のコイルやコンデンサの容量が負荷電流依存性があったり、印可電圧依存性があったりするため、ひな形定数のままでは特性のずれがあるためです。
電流モードDCDCコンバータやACDCコンバータではシミュレーション回路が異なりますが、実際の調整を行う前にひな形定数を導き出しておくことが重要なのは同じです。
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* 過渡応答 *
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電源系のゲインや帯域、位相等の小信号特性はエラーアンプ廻りの位相補償で決まりますが、急激な入出力変動に対する過渡応答特性は大信号特性で決まります。
スイッチング周波数の高いDCDCコンバータでは、小容量のコイルや出力コンデンサを使用できるため、小信号特性おける帯域は広く設定可能です。そのため、DCDCコンバータではエラーアンプのスルーレートやドライブ能力で決まる大信号特性によって応答性が決まります。
電流モードのスイッチング電源は電圧モードよりも帯域を広く設定できるので応答性が優れているとの説明をよく見かけます。しかしDCDCコンバータではFRA(Frequency
Response Analizer)を使ってぎりぎりまで帯域を延ばすような位相補償を行えば、電圧モードでも電流モードと同じようなゲイン、帯域特性が可能です。ところがエラーアンプの外部に大きな容量のコンデンサが必要となることの多い電圧モードのDCDCコンバータよりも、比較的小さな容量で位相補償が出来る電流モードの方が応答性が良くなります。過渡応答は大振幅特性で決まることの例です。
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* 保護回路 *
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電源系は定常動作時に正しい電圧を出すことはもちろんですが、それ以上に重要なのは何らかの異常に極力デバイスの破壊が起きないような回路であることが重要です。更に発火、発煙は何としても防がなければ行けません。そのための保護回路が非常に重要です。
保護回路には次のようなものがあります。
1)OCP (Over Current Protection) 過電流保護
2)OVP (Over Voltage Protection) 過電圧保護
3)UVP (Under Voltage Protection) 低電圧保護
4)SCP (Short Circuit Protection) 短絡保護
5)TSD (Termal Shut Duwn) 過熱保護
また起動、停止時を安全に行うための機能として
6)UVLO (Under Voltage Lock Out) 低電圧時動作停止
7)SS (Soft Start) ソフトスタート
8)DTC (Dead Time Cintroll) デッドタイムコントロール
等があります。
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* LED照明 *
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LED照明用の電源もDCDCコンバータで作ることが多くなっています。
通常の電源は出力電圧が一定になるような制御をしますが、LED照明では出力電流を一定になるように制御します。またLEDには常に電流を流しておく使い方や、断続的に電流を流す使い方等があります。
またLEDの明るさの調整には、印可電圧を変えて電流を変える電圧調光と、印可電圧は一定にして、パルス状に電流を流すPWM調光等があります。
LED照明は低消費電力ですが、力率が低いので送電側から見ると期待するほどの低消費電力という訳ではありません。40Wクラスの蛍光灯を置き換えるためのLED照明の場合は力率改善回路が必要になります。
またLED照明は長寿命と言われます。しかし電解コンデンサがLED電球に組み込まれている場合は、LEDの発する熱のためコンデンサの特性劣化が進みます。その結果、期待するほど長寿命では無い可能性があります。
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* チャージャー *
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二次バッテリー用のチャージャー(充電器)もLED照明同様、定電流出力の電源です。
今市販されている二次電池や充電器は、携帯機器用の小容量のバッテリーはNiH(ニッケル水素電池)やLi(リチウムイオン電池)、動力用は鉛バッテリーが主です。
しかし今後は汎用の中容量二次バッテリーとして、電動アシスト自転車や電動バイクに使われているような、軽くて容量の大きなLi二次電池が製品化されると思われます。
また太陽光発電と二次バッテリーを組み合わせて使う用途も増えると思われます。
ところが電力ロスの少ないLiバッテリー用の充電器や充電制御用ICは1~4セルのバッテリーセル向けの製品が大半です。電動アシスト自転車や電動バイクの充電器はAC電源をDC電源に変換して充電しますが、電力変換ロスが大きいようです。中容量のバッテリーの充放電に対応した高効率の充電器や、充電制御用のICは未だあまりありません。
太陽光発電と組み合わせて使うには充電器の電力ロスの低減が必須ですが、今後そういう用途に使える充電制御用ICが開発されることを期待しています。
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