「題詠マラソン2003」(001〜025) 神崎ハルミ(現、伊波虎英)
001:月
(あーん)月の裏の隕石孔みたい 銀冠を手に空をみる君
002:輪
OKの輪から覗けば満月が、首狩り族の歓喜の舞が
003:さよなら *表記修正
<もう二度と会えない呪文> 知った夏さよならさんかくまたきてしか○
004:木曜
くちづけは葉を濡らす雨、木曜にうまれた君はわれの翌檜(あすなろ)
005:音
無音なる宇宙の闇で祖母が読むお伽噺のどーんぶらこー
006:脱ぐ
ぬばたまの黒き Lingerie(ランジェリー) 脱ぎかけのままで散りゆく桜、さ、く、ら、さ、
007:ふと
ゴミ漁る鴉の一羽 <主の祈り> ふと呟いて飛び去る朝(あした)
008:足りる
たわむれに「足りているか」と訊いているイエスのようなティッシュ配りだ
009:休み
「僕のこと忘れたんだね」きみの影どんどん濃くし夏休み果つ
010:浮く
辻褄を合わせるために浮いている 午後九時半の温水プール
011:イオン
公園でマイナス・イオンをばらまける噴水のごと我が絶望は
012:突破
クォーター・バック、中央突破するように頬打つ三月の風
013:愛
愛という言葉が死語と(詩語と?)なる日に読むだろう君からのふみ
014:段ボ−ル
コンビニの脇に置かれた段ボールは月を焦れるかぐや姫なり
015:葉
コンビニに欲しいものなし一枚の葉書を買って月に翳(かざ)しき
016:紅
紅玉(こうぎょく)のごときJAPANの満月を見たのだろうかルビー・モレノも
017:雲
<吹き出し> のような夏雲、肩ぐるましてあげるから一緒に叫ぼう
018:泣く
泣かないときめていたのに泣けてきた きびだんごってまずくてうまい
019:蒟蒻
爪繰(つまぐ)るは蒟蒻芋の数珠玉か、声はゴータマ・シッダールタか
020:害
<ゴータマとは「最上の牝牛」という意味である。>
円らなる乳牛の眸(め)にこの僕は害あるものと映っているか
021:窓
<シッダールタとは、「目的を成し遂げた者」という意味である。>
いつまでも閉じられぬ窓ひとつずつ持って僕らは生きているんだ
022:素
<ブッダとは、「目覚めたる者」という意味である。>
釈迦牟尼の寝起きの素顔を一度みた つられて僕も欠伸をしたよ
023:詩
<イエスとは、「神は救いなり」という意味である。>
地に降るは真っ黒な雨、ずぶ濡れで吟遊詩人メシアを待たん
024:きらきら
<キリストとは、「油を注がれた者(メシア)」という意味である。>
永遠にオリーブ・オイルを浴びせられきらきらきらと溺れる男
025:匿う
値切られて銀三枚で三日間ユダを匿う三月の夢
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