「題詠マラソン2003」(026〜050)  神崎ハルミ(現、伊波虎英)


026:妻
        <イエス・キリストにも初恋はあっただろうか。>
あのひとの妻となるはずだった人、夜泣きのわれに乳ふふませり


027:忘れる
聖痕(スティグマ)のごとき下腹の傷あとに舌を這わせて「忘れておしまい」


028:三回
                <シモン・ペテロは、
                     鶏が鳴く前に三度「イエスを知らない」と言った。>

三回と四回の間の脆き壁 シモンはペテロ
(岩)となりましたとさ


029:森
カタ、カタ、カタ、カタコッコーと風見鶏「そっちじゃないよ、おまえの森は」


030:表
経文を身に纏(まと)いたる芳一のごとしわが身の正誤表、裂く


031:猫                                                                                        
ヒトラーにユダ、フセインもジョンイルもブッシュも居るらん 飼猫は愛(は)


032:星
      <メシア(救世主)の誕生を知らせるベツレヘムの星を頼りに、
               東方の3人の博士は、馬小屋のイエスに会いに来た。>

ベツレヘムの星を咥えた回収者(レトリーバー)  クリスマス・ツリーもケーキもめちゃくちゃ


033:中ぐらい
「詩を食べて心の中ぐらいせめて綺麗にしたい」――<彼女>   の、縊死。


034:誘惑
    <M・スコセッシ監督「最後の誘惑(THE LAST TEMPTATION OF CHRIST)」
                ―  エンド・ロールの間、僕は固まっていた。21歳だった。>

われも死後、女(おみな)となりて誘惑せん 誘惑地獄のキリストの笑み 


035:駅
  <阪急神崎川駅北改札口伝言板 
    1984年2月14日(火) 19年後のきみへ、俺より>

GODIVAより
(*転載者註 http://www.godiva.co.jp/welcome.asp
551の
(*転載者註 http://www.551horai.co.jp/
ハート型豚まんがいい

十三
(じゅうそう)駅の


036:遺伝
夕立に傘は不要だ、向日葵になるまで洗い流せ遺伝子!


037:とんかつ
とんかちで黄金分割とんとんとん鼻唄まじりでつくるとんかつ


038:明日
つまらない? 積ります積る積るとき積れトゥモロウ! 明日のわたし


039:贅肉
馬鹿でかいLOFTのレシート見るたびに君の贅肉思いだす僕


040:走る
先祖返りするまで走るアトピーの顔、透明な尾っぽを振って


041:場
砂場にはいろんなものが埋まってるたとえば僕の骨とかきみの……


042:クセ
Bonjour!(あなたは何も知らない)  Salut!(クセジュ)  Que Sais-Je?……(ぼくは chat noires )                           * < Que Sais-Je? 私は何を知っているのか >  < chat noires 黒猫 >


043:鍋
こびりつくカレーだ、鍋の、僕たちは、 唄って踊り乞う黒き雨


044:殺す
百万回殺した猫を抱きかかえ岬へつづく道を歩めり


045:がらんどう
がらんどうの午後の医務室ランドルト環がみつめるランドセルの


046:南
「北側」とテレビ・キャスターが言うたびに幻肢のごとく <南> は疼く


047:沿う
白線に沿って歩いた国道の、もう後ろにはあなたはいない


048:死
縊死をせしユダもろともに真夜、撤去されゆく公衆電話ボックス


049:嫌い                                                                                
「好き、嫌い、……」  歩道橋から舞い降りるDM、ハガキ、手紙、郵便配達人(メイルマン)


050:南瓜
かぼちゃ畑の南瓜いっせいにひび割れて世界は夕焼けに染まりゆく



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