「題詠マラソン2003」(076〜100&番外) 神崎ハルミ(現、伊波虎英)
076:てかてか
ケンタッキー・フライド・チキンでてかてかの口と口とをあわせる聖夜
077:落書き
グランド(ん?)ピアノに <ZERO> と落書きし逃げ出せ <TOKIO>
海亀に乗り
078:殺
ドトールの地下で珈琲啜りつつ <殺> の字多き歌集を読めり
079:眼薬
眼薬をさしてるあいだになくなった地球をさがす宇宙飛行士(アストロノート)
080:織る
ビル街を吹き頻く風が織りなせる曼荼羅絵図の綻びを愛づ
081:ノック
こんこんと降る雪に濡れクロネコとネオコンが戸をノックしている
082:ほろぶ
チグリスよユーフラテスよ 君の、吾の、何がほろびてゆくんだろうね
083:予言
時事詠の大洪水となるだろう予言ではない既視感である
084:円
円く円く地球を包みとぶ鳥のすべてを母と呼びたき朝(あした)
085:銀杏
さくら咲く春なのですか、銀杏(ぎんなん)の幻臭が街を覆っています
086:とらんぽりん
左眼と右眼の視力がバラバラでとらんぽりんな毎日である
087:朝
朝飲んだホットミルクの白はもう真っ黒だろう、お昼のニュース
088:象
反戦かアメリカ支持か曖昧な空模様ですと気象予報士
089:開く
ハンカチを開けど鳩は飛び立たず鳩になるしかなくてマジシャン
090:ぶつかる
駐車場の白い区分けが鳩にみえぶつかるなんて思わなかった
091:煙 *表記修正
火葬場の煙が白い鳩になるマジック、曇り空をめくれば
092:人形
<「お前たち、反戦だなんだって十二年間なにをしていた!」>
駅前の時計仕掛けの人形のように時間を食べていただけ
093:恋
麝香鹿(じゃこうじか)の匂いが肌を離れない、恋じゃないこれは戦争だ!
094:時
<我等が、<時> と呼んで恐れている暴君は幻にすぎない。>
時差という幻影をまず振り払え、暴君竜(ティラノサウルス)があばれてるだろ
番外(094:お題詠み込みミス詠草) *表記修正
<我等が、<時> と呼んで恐れている幻の暴君が嗤って言う。>
「暴君よ人民よ、勝ってうれしいか?(負けて口惜しいか?)花いちもんめ」
095:満ちる
みずいろをして戒厳令が満ちる時キラー・ホエールになる呪文を
096:石鹸
四月、きみは泡立ちすぎる石鹸に夜毎さくらを零らせていたり
097:支
支度ならばっちり、きみの裏切りや空の重さも織りこみ済みさ
098:傷
傷口のごとくひろがるゼブラゾーン渡るとき我のなに傾ぎたる
099:かさかさ
あかねさす昼かさかさと音させて食むバーガーのケチャップは垂れ
100:短歌
<人間は無力か? 言葉は無力か?>
器から器へうつす夢うつつ言霊信じ短歌を抱けり
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