如来神力品 (4) 二門教一の教え 一時謦欬 いちじきょうがい
世尊
「経文から、教えを説きましょう。
釈迦牟尼仏 諸仏 然して後のち に還かえ って 舌相ぜっそう を摂おさ めて 一時に謦欬きょうがい し‥‥とあります。
この意味
釈迦牟尼仏をはじめ、無数の諸仏は、広長舌こうちょうぜつ を摂おさ めたのち 一斉に咳ばらいをしました。
釈迦牟尼仏が、次の説法に備え発声練習として咳払いすると 諸仏も 一斉に謦欬(咳払い)をしました。
この行為は 本門の教えも迹門の教えもすべてーひとつの真理に帰するー二門教一にもんきょういつ の教えを説くと
諸仏同志が 合図を行ったということなのです。
最初の頃の私(世尊)は 方便を用いた説法でした。 「方便とは?」
方便の教えも、勿論尊い教えなのだが、方便の教えは、あくまでも 真理の教えに至る過程の教えです。
そこで例として、迹門の教えは足し算、本門の教えは掛け算と考えてみると、理解しやすいのです。
2+2+2=6。 2を3回足すと6になる ことを学んでから 2×3=6という掛け算を 勉強していきます。
皆さんも、最初に足し算を覚え 次に掛け算を勉強して、九九くく を勉強したでしょう。
つまり 足し算は掛け算の基礎となっています。 方便の教えを説くのも、同じ考えからなのです。
最初からイキナリ 仏とは無始無終の生命である”と説くと、衆生はただ困惑し混乱するばかりです。
理解できずに困惑し混乱している衆生に 真理の教えを熱く説いても、初随喜(ありがたい心)は起きません。
諸仏は 衆生ひとりひとりの持つ機根の違いを すべて 理解できていますので
まづ、方便を用いて迹門しゃくもん の教えである 「三宝印」や「12因縁の法」を説いて教えます。
それから 「四諦の法門」 「八正道」 「六波羅密の行」を説きます。 ここまでが迹門の教え、つまり足し算です。
その後徐々に、本門の教え、つまり掛け算であるーすべてを生かしている偉大な力ー宇宙の根源の力ーである
『宇宙の大生命』を真理とよぶ 無始無終むしむしゅう の本仏ほんぶつ であると、教え説くのです。
このように、仏の教えは 衆生が教えを理解しやすいように 足し算から掛け算の順番で進めるのです。
すると衆生はーそうか、悟りの道とは、仏(真理)と一体になることなんだーと、より理解を深めるのです。
これから 二門教一にもんきょういつ の教えを説くと 一斉に咳払い・諸仏同志の合図・一時謦欬きょうがい の行動とは
つまり、大衆の前で、諸仏が皆、謦欬(咳払い)を一斉にした行為とは
方便の教え(迹門)も真実の教え(本門)も 同じ真理の教えである、という決意表明なのです」。
(5)へつづく 二門人一 倶共弾指 くぐたんじ