観普賢菩薩行法経 (16)
  世尊
 
舌根の罪ぜっこんのつみ の懺悔 説きましょう。 舌根の罪も 心の迷いがもとになっています。
 
口は悪業の想いに動ぜられて 諸仏が教えるように 舌根の罪の解消には 心の強い改心が必要です。
  その理由は
 口に出た言葉は 深心の所箸 つまり心の底のわずかな習気じっけ に残りやすいのです。
  その習気が悪の心を目覚めさせて
増長することが 非常に多いからなのです。
 
心と言葉の作用は 原因と結果の両方をつくるので 舌根の罪の解消には 強い改心が必要となります。

 舌根の罪には 妄言もうげん (嘘を平気で言う) 綺語きご (口先のでまかせを言う) 悪口あっく (わるぐちを言う)
   両舌りょうぜつ (悪口を言って人の仲をさく)  誹謗妄語ひぼうもうご (事実でないことを言い人を誹そしる)
   邪見じゃけんの語ことば を賛嘆する(悪い思想を褒め人を迷わす) 無益むやく の語ことば を話す(下劣な話し)などがありますが
 衆生の日常生活で最も多い舌根の罪が この
無益の語を話すことです。
  
無益の語は レクレーション的な感覚をもち 害は無いように思い易やす いのですが
 無意味で 下劣な
話題ばかりを話す衆生は 頭の働きが固定観念で固まっている衆生です。
 つまり
クダラナイおしゃべりの習性がついてしまうので 新しいことを協議したり意見交換するなど……
 物事の本当の意義を考えたり
思考を廻らすことなど 鬱陶うっとう しい人間になってしまうのです。
 ですから
普段のおしゃべりで心掛けることは 明るい話題を正しい言葉で 話すことが大事なのです。
 仏の道を志す衆生は
無益むやく の語ことば (ツマラナイおしゃべり) 慎むことです。

 では なぜ 舌根の罪を懺悔しなければ ならないのか。
  それは
(言葉)の誤ちは 兎角とかく 諸々の悪業あくごう の元となるからです。
  日本の諺にもあるように
口は禍わざわい の元 なのです。
  その故に
 闘遘とうこう (人同士が排斥しあう行為) 壊乱えらん (人々の生活の平和を乱す)など 
   
さらには 正しくないことを正しいと力説りきせつ して 世の中の人々を惑わしたりするので
  仏の道を志す衆生は
常に自分の口から出る言葉に注意し 反省し懺悔しなければなりません。
  とくに 仏の法の広宣流布こうせんるふ つまり 娑婆世界を無限に幸福にする種たね を殺してしまうとなれば
  それは 最大の罪つくりであり その罪は量りしれないものです。
  舌根の罪が起こす
わざわい の最も大きな罪は 仏の法の広まりを断ちきる罪です。

  又
非義ひぎ (理屈に合わないこと) あれこれとコジツケテ説くのは 邪見(誤った考え)を誇張する行為です。
  例えば
火に薪まき をくべて炎を燃え上がらせる如く 邪見を焚きつけて その邪見を大きくさせてしまいます。
  その被害は
猛火もうか にて 人の身が焼かれるにも 等しいものなのです。
  又
毒が表面の皮膚には影響しないで 体内に貯まり内臓が焼き爛ただ れる結果 死に至るように
  自分では気づかないうちに
正しい心を失っていくのですから 実に恐ろしいことなのです。
  衆生は 以上のことを理解して
ただ ちに 舌根の罪を懺悔しなければなりません

 舌根の罪を懺悔し 一心に仏を礼拝し奉たてまつ る衆生に 諸仏は光明を放ちてその身を照らします。
  すると
衆生の心は洗い清められ 明るく喜びに満ちた気持ちが また甦よみがえり漲みなぎ るのです。
  その衆生の心が
 諸仏の心と直じか に通い合うことで 一切の人々を救いたいという大慈悲心の念
  わんわんと
心に湧き起こってくるのです。
  そのとき
 諸仏は その衆生修行者に向かい
  大慈悲心
だいじひしん 及び喜捨きしゃ の法を説き 愛語あいご の心を教え 六つの和敬わきょう の精神を修するのです。
  喜捨
きしゃ の心とは 自分の我欲を捨てて世のため 人のために尽くす心のことです。
 
き とは 人の喜びを共に喜ぶ気持ちのことです。
 
しゃ とは
 人に施した恩も 自分が受けた害も すべて忘れてしまう気持ちのことです。
 愛語あいご とは
やさしい言葉で話すことです。
 
和敬わきょう とは 信者同士が日常生活の面でいろいろと お互いにうち解け合い 敬い合う教えで
  
しん和敬わきょう  口和敬  意和敬  戒かい和敬  けん和敬  行ぎょう和敬 の六つがあります。
 このような仏の教えを修した衆生は 懺悔の功徳の喜びが確信できるまで成長したので
 自分は
まだ懺悔する必要があると気がつくのです。そして 自分の次の懺悔のテーマを考えるのです。
 これは
 衆生の魂が成長した証拠なのです。 これに関して 次に説きましょう」。     (17)へ