見宝塔品第11 けんほうとうぼん
見宝塔 けんほうとう 宝塔を見るの意味とは、七宝の塔 しっぽうのとう が地から涌出ゆじゅつ する意味とは?
七宝の塔とは、すべての人間の内面に存在する 仏性ぶっしょう (仏の心)のことです。
そのー仏性ーが 地の中から涌出して来たということは、五欲の世界に生きる自分(地)の中に、
考えてもいなかったー仏性ーを発見して、心が歓喜したという意味です。
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世尊
「娑婆世界の衆生が渇望かつぼう する仏の救い(仏の悟り)は、天の上から降ってくるものではありません。
仏には好き嫌いなどの差別的感情はありません。法界一切平等利益 ほっかいいっさいびょうどうりやく なのです。
仏の勝手な感情で、君が好きだからあげる・君は嫌いだからあげない、ということではありません。
真の仏の悟りや仏の救いとは、衆生自身の内面から湧き出るものなのです。
自分自身の内面から湧き出た悟りだから、救いの価値をもつ真の力が発揮されるのです」。
大衆一同
「今我々は、仏の尊い教えを世に広め・人の為に尽くそうという気持ちになりました」と熱意を世尊に伝えた。
すると、その時、多宝如来がご出現されたのです
地面から突然、高さも広さも目の届かぬくらいの大きな七宝の塔が 大衆一同の前に現われました。
忽然こつぜん として、地から涌出ゆじゅつ した七宝の塔は、大衆の頭上高く虚空こくう (空中)に とどまりました。
その塔の中には、多宝如来 たほうにょらい が坐っておられます。
多宝如来とは、釈迦牟尼如来しゃかむににょらい が悟ったー宇宙の真理ーです。
宇宙の真理とは、無始の過去から宇宙に遍満しているー永遠の法ーです。
ー永遠の法である真理ーは、あらゆる諸仏の教えで、すべての世界の大衆を教化する教えです。
地から涌出ゆじゅつ した七宝塔の周りは、譬えようが無いほど 美しく輝いております。
そこには、世界のあらゆる生命が集まっていて、多宝如来を敬い褒め称え、塔を供養しております。
その様子は、地上にいる大衆の全員にも、有々と見えているのです。
ー釈迦牟尼如来どうぞこの座に就きたもうべしーと、多宝如来が釈迦牟尼如来に、席のご案内をしました。
多宝如来が世尊の手をとり、自分の隣の座席にお招きしたのです。 これには、大衆一同ビックリです。
釈迦牟尼如来は、多宝如来の申し出に快く応じられました。
真理の多宝如来と、真理を説く釈迦牟尼如来が、塔の中で隣り合って坐っておられます。
おお!なんと・すばらしい 大衆一同は、大きな感嘆の声をあげました。
その時、多宝如来は宝塔の中から、虚空全域に響きわたる大きな声で、発声されました。
ー釈迦牟尼如来が説く教えは真理である、つまり、釈迦牟尼如来も真理と同等なのであるーと。
真理の多宝如来自らが、真理を証明されたのです。真理の本人が真理を証明したのです。
この時、大衆一同の心に同時に、ひとつの願いが湧き起こりました。
虚空こくう におられる多宝如来のもっと近くまで行ってみたい、という思いが湧き起こりました。
察知した世尊は、神通力じんつうりき を用いて、大衆一同を虚空の多宝如来のすぐお側へ引き上げました。
この表現の意味は、大衆が自分自身に仏性を発見すれば、つまり、
大衆が仏のそばへ行きたいと思うなら、たちまちのうちに、仏の世界へ住むことができるということです。
大喜びの大衆は、多宝如来と釈迦牟尼如来が座る宝塔に向かい、合掌しております。
その時、宝塔の中から再び、多宝如来の澄みきった大きな声が‥‥‥聞こえてきました。
「善哉・善哉 ぜんざいぜんざい 大衆たちよ、釈迦牟尼世尊の説く教えは、
平等大智慧 びょうどうだいちえ 教菩薩法 きょうぼさつほう 仏所護念 ぶっしょごねん の三つの教えに要約できる。
平等大智慧とは、衆生は皆、平等に仏性をもつ、という教え。
教菩薩法とは、人のために尽くす行いが仏の境地に達する道、という教え。
仏所護念とは、仏が深くお護りになっている、という教え。
この三つの教えは、真理の教えであり・妙法蓮華経の根本の教えです」と。
「薬艸諭品の善哉」:「教菩薩法/仏所護念」
多宝如来のお声は聞こえましたが、お姿は見えておりませんので、大衆は大きな目を凝らして見ています。
その時、大楽説菩薩 だいぎょうせつぼさつ が、宝塔の中におられる仏さまの名を、世尊にお聞きしました。
世尊
「この宝塔ほうとう の中には、真理の如来の全身であるー多宝如来 たほうにょらい ーという名の仏が居られます。
如来の全身とは、如来の具えておられる徳と力のすべてのことです。
人間は ひとたび仏性にめざめると 如来と同じく永遠の存在となり、仏と同じ最高の智慧を具え、
無限の慈悲のはたらきをするように成ると、今、多宝如来が宣言されたのです」と。
つづく