世尊、多宝如来の大誓願を説く
「多宝如来たほうにょらい は、遠い過去世、まだ菩薩の修行時代に大誓願 だいせいがん を立てられて
そして、長い修行を完成されて、遂に、悟りを得て成仏されたのでした。
そして、いよいよ滅度を迎えるという時に天人/大衆を集め、過去世の大誓願を声高く宣言されたのです。
その過去世の大誓願とは
☆自分が成道(成仏)した後、法華経が説かれる場所ならば、世界中・どこでも・必ず宝塔を涌出し現われて
法華経の教えは真実であり・真理であることを証明する☆ というものでした。
この七宝の塔の中には、その多宝如来がおられるのです」。
大楽説菩薩 だいぎょうせつぼさつ 「世尊、ぜひ多宝如来のお姿を拝見したいのですが……」
世尊
「それはしばらく待ってください。先に話をつづけましょう。
多宝如来 たほうにょらい にはー重要でとても深い誓願ーが、まだあるのです。
多宝如来は、法華経を聞くために宝塔を涌出ゆじゅつ し現われても、すぐには、塔の外へ姿を現わしません。
この如来が大衆の前に姿を現すときは、如来の願いが”叶う時”のみなのです。
ここ重要↴‥‥‥‥ボサツマン
私(世尊)は、これからとても重要なことを発表します。衆生の皆さん、しっかりと聞くように。
☆法華経は、世界中のどこででも・いつでも・宇宙の本仏の分身仏ぶんしんぶつ が、説いているのです。
つまり、宇宙の本仏がその身を無数に分け、十方世界でそれぞれ真理を説いているのです。
ですから、多宝如来が大衆の前に姿を現すときは、
世界中で正しい教えを説く人はすべて、法華経を説く仏ほとけ の分身仏ぶんしんぶつ であること、
その分身仏ぶんしんぶつ が、全部集まっているということ、そして、真理は不変であるということ、
この三つのことを、大衆が良く理解した時のみなのです☆
その時だけ、多宝如来は姿を大衆の前に現わして、真理の教えの証人と成るのです。
これが、多宝如来の重要でとても深い誓願のひとつです。
観音経のー観音菩薩が仏を現じ‥ーとあるのも、宇宙の本仏が観音菩薩の身を顕わしているのです。
つまり、衆生の心が信しん 100%になった時ー観音菩薩が仏を現じ‥ーという意味なのです」。
:「観音経の一節」:「己身他身/己事佗事」
大楽説菩薩だいぎょうせつぼさつ は、ぜひその分身仏を拝み供養したいですと、世尊にお願いしました。
すると世尊は 「眉間白毫」 みけんびゃくごう から美しい光を放って、十方の世界を照らし出しました。
美しい光で照らされた世界は、すべて、仏の治める荘厳な世界であることが、大衆の目にも見えています。
その十方の荘厳な世界の諸仏たちは、国土の菩薩たちに向かい
自分は、これからすぐ、娑婆世界の釈迦牟尼如来しゃかむににょらい の許に参って、
ー釈迦牟尼如来の教えは真実であると、多宝如来が証明するー その座に参加すると話しています。
その会話が、法座にいる大衆の耳にも ハッキリと聞こえました。
すると、次の瞬間、娑婆の国土がみるみるうちに、清浄な美しい世界(浄土)へと、変じたのであります。
大衆の皆さん、良く覚えておきましょう。
浄土じょうど は、遠く離れたよその土地にあるのではないのです。浄土はこの娑婆世界にあるのです。
人々が悟りを得ると、この娑婆世界そのものが、即そく そのまま寂光土じゃっこうど (浄土)に変わるのです。
寂光土は、浄土・仏の世界・悟りの世界・涅槃の境地とも表現します。
さて、十方の諸仏が、ぞくぞくと、それぞれ侍者を従えて娑婆世界へ集まってきました。
そして皆、釈迦牟尼如来に正座し丁寧に挨拶・合掌して、宝塔が開かれるのを 待ち望んでおります。
そこで、いよいよ、釈迦牟尼如来が、右の指を七宝塔の扉に触れ、お開けになります。
大きな城の門が開くような、大音響だいおんきょう と共に 七宝塔の扉が開かれました。
おお~なんと・七宝塔の中には多宝如来が凛々しく・悠々と端坐たんざ (行儀正しく坐る)しておられます。
多宝如来の目的は何だろう?
多宝如来が、仰せになりました
「善哉・善哉、完全無欠な釈迦牟尼如来は、確信をもって真理の法(法華経)を説くのです。
私(多宝如来)も、この法華経を聞くために、ここへ馳せ参じてきました」。
たいへんに ありがたい極みでございます……ボサツマンも 合掌
真理の仏の多宝如来と真理を説く釈迦牟尼如来が共に端坐されておるのです。…………合掌
大感激・大興奮の大衆は、自分たちも、虚空こくう の二仏のすぐ側までいきたいと、心の中で願いました。
世尊は一度、大衆を地上から虚空の七宝塔しっぽうとう の近くまで、引き上げたのですが
大衆たちは、もっともっと、近くを望んでいるのです。
衆生たちは皆今まで、世尊の直前で説法を聞いてきたので、仏の目の前で真剣に説法を聞きたいのです。
再度、仏の神通力で、多宝如来の目の前に自分たちを、連れていってほしいと願っております。
この大衆の心をすでに察知されていた世尊は、またもや・ただちに・大衆たちを
神通力を用いて虚空こくう に浮かぶー七宝塔ーのすぐ目の前まで 進ませました。
大感激の大衆たちは皆、手に手を取り合い大歓声をあげて、大歓喜の涙をながしておりました。
つづく 二所三会にしょさんえ の説法