二所三会の説法
世尊の法華経の説法は ー二つの場所で法華経を三回の説法ー つまり、二所三会にしょさんえ で開かれました。
世尊は、地上の霊鷲山りょうじゅせん そして虚空こくう そして再度、霊鷲山で、妙法蓮華の法を説きました。
世尊は緻密な計画を考えて、二所三会の説法を行ったのです。
1回目は、大衆の身近な所である現実の社会・娑婆世界で説法し、智慧の教えを示しました。
2回目は、宇宙の広い虚空こくう で説法し、広大な慈悲の教えを説いて、理想の姿を示しました。
3回目は、2回目の慈悲の教えの延長である行ぎょう の教えなので、地上の霊鷲山で説法を行いました。
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仏(世尊)の神通力によって、虚空に浮かぶー七宝塔ーの目の前に、大勢の大衆が参集できました。
するとその時、釈迦牟尼如来は、感動に渦巻く大衆たちに、塔の中から大きな声で叫びました。
「誰かこの娑婆世界で 法華経を説く者はいないか!
私は、もうすぐ滅度めつど するのだから、末世まつせ のことを大衆の皆に 頼みたいのである。
末世で法華経を説くことは、非常に難しいことなのでー六難九易の法門ーの話を聞いておきましょう」。
世尊、六難九易の法門 ろくなんくいのほうもん を説き、大衆に勇猛心 ゆうもうしん を植え付ける 「六難九易の法門」
「例えば、「須弥山」しゅみせん ほどの大きな山を手にとって 他の世界へ投げることも、
足の指で大千世界 だいせんせかい を動かすことも、又、世界の1番上に立って
法華経以外の教えを、あらゆる衆生に説いて理解させることも、難しいことには違いないことです。
しかしー仏の滅後の悪世あくせーにおいて、法華経を説く難しさに比べると まだまだ簡単なことなのです。
空そら を手につかんで飛びあるくことも、大地を足の甲の上に乗せて、天まで飛び上がることも、
この世界が焼けつくす時代に、乾草 ほしくさ を背負って火の中に入っても、焼けずにいることなど……
これら、非常に難しいと思うことでさえも、
末世において、この法華経を持ち・読み・人に説く・ことに比べたら、まだまだ易やさ しいのです」。
大衆たちは、世尊の話を真剣な眼差まなざし で、聞いておりました。
世尊は、虚空に浮かぶ七宝塔の中からー六難九易の法門ーを説きました。
これは、仏の滅後にて、弟子たちが法華経を説いていくときに、
どんな困難にも挫くじ けずに進めるよう、偉大な親心で勇猛心を植え付け与えたのでした。
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