《1・2月》
昨年1月にこの欄に記載した「保険で白い歯」の詳細が発表され実行されています。
診療に関する指針は難解で理解しにくかったのですがおおよそのことが理解出来ました。簡単に纏めると『CAD/
CAM装置を使ってハイブリッドレジンを削り出して上下小臼歯の歯冠修復をする。その際認可されたレジンブロックと 届け出された汎用性のある装置を使用する』
簡単に纏めたつもりですが、これでは意味がはっきりしません。更に要点だけを取り出すと『指定された材料と届け
出たCAD/CAM装置を使用し、経験のある歯科医師と歯科技工士が関与し氏名を届け出る。(歯科医院内に当該設 備・技工士がなければ適合している技工所と連携していることを届け出る)
高額の費用のかかる設備ですから、零細な歯科技工所では対応出来ません。ハイブリッドレジンも認可された物
はまだ3メーカー3種(昨年10月時点)しか有りませんでした。
ハイブリッドレジンは従来の積み上げ法(保険外診療)で使用していますが、金属冠に硬質レジンを貼り付ける前
装冠といわれる方法ほど安定性はありません。実績も無く設備投資も簡単には出来ないCAD/CAMをいきなり導入 した真意が分かりません。製造メーカーへの利益供与?・・・ではないでしょう・・・。
小臼歯だけでなく前歯にも適用を広げれば、一気に機械を導入する技工所も増えるし、機械の償却も容易になるで
しょう。前歯に関しては選択肢が増え外観上も優れた方法が選べるのです。
知る限りでは我々付き合いのある歯科医院も歯科技工所も静観しているのみです。
《3・4・5月》
この欄でも何回か記載しましたが、ビスホスホネート系薬剤(略称BP:骨粗鬆症治療薬)についての医師会・歯科
医師会合同の研修会に参加してきました。
高齢者の多い当医院ではBP系薬剤を服用している患者さんが多数います。歯科疾患を抱えた患者さんですから
当然抜歯の必要な方も多数になります。BP系薬服用の副作用として抜歯などの外科的侵襲に依り腐骨(部分的に 骨が腐ってしまう現象)が起こることが分かっています。今回の講演では1万人に数例が認められているとの報告で した。それも内服薬より注射薬により多く現れるとの解説でした。
以前より症例も集まりリスク管理の道が見え始めては来ましたが、かなり低い水準での発症で抜歯を行ってもリス
クは少ないように思えますが、リスクがある以上実行するのには危険が多すぎます。今回のように医師会との共同 研修で医師側にもよりいっそう理解して頂けるように希望したいのです。
「BP系薬剤の投与を決めたなら、速やかに歯科検診を受け必要な手術は先に受けておく」ことを患者さんへの指示
と決めて頂きたいのです。
《6・7月》
ゴールデンウィーク明け珍しく仕事が立て込んで更新が滞りました。多かったのは義歯(入れ歯)の不調や破折で
した。
40年以上も歯科医院をやっていると患者さんも年を取っていきます。もちろん私自身も。患者さんの3分の1(半分
以上かもしれません)が高齢者になっていました。従って義歯の需要が多くなります。
歯周病(歯槽膿漏)はメンテナンスをしても防ぎきれないので、次第に歯を失っていき、結果義歯となってしまいま
す。高齢者は全身疾患も多くなり、入院・手術も避けられなくなります。その折、義歯は外すように指示されることが しばしばあります。幸い予後が良く回復すれば義歯の使用も出来ますが、不幸にして体の衰弱が続けば、義歯を戻 すことが遅れます。
補液、輸液点滴などでの栄養補給が続くと義歯はその間必要なくなりますが、長期間外していた義歯は戻した時
うまく入らないこと、擦れたり違和感が強くなったりすることがあります。全身衰弱から歯周病の進行も起きやすいの です。退院後は、早い時期の検診とメンテナンスをお勧めします。
《8・9月》
春先から歯牙外傷(けが)による来院が続きました。自宅内と外出先での転倒(複数)、ベットから落ちた、スポーツ
中の転倒などですが、いずれも前歯を打撲により破折や亜脱臼をしています(義歯の破折や差し歯の脱離を含めて ですが)。全て70歳以上の高齢者でした。
私もすでにその年代に入っていますが、若い時と違って突然のアクシデントに反応が遅くなっています。転倒や衝
突などの危険が迫ると通常は手が真っ先に防御に出ますが、年を重ねた悲しさなのですが反応が鈍くなっていて手 が出るのが遅く、顔面が先に衝撃を受けてしまうのです。前歯はもっとも前にあるので被害が大きいのです。
乳幼児の衝撃による前歯の損傷も時折来院がありますが、近年高齢者のそれが増えています。当院の患者さん
の高齢化が進んでいるので当然なのですが・・・。
歯科的には防御策の知恵は湧きません。常時プロテクターを装着しておく訳にもいきませんから。日頃からの足腰
の鍛錬、アクシデント時の防御法の訓練など常識的な方策しか思いつきません。今後の課題としておきます。
《10・11月》
9月に入っても暑い日が続きましたが、やっと秋を感じるようになりました。
暑さのせいかこの夏は来院される患者さんがやや少なく感じました。高齢者の割合の多い当院では、来院される
方の熱中症も心配なのですが・・・。
毎年のことですが、過ごしやすい季節で体が快適になるはずなのですが、この時期潜在していた疾患、たとえば歯
周病や大きな虫歯などが突然急性発作(出血したり痛んだり・腫れたり)するのです。やはり暑い夏の体力の衰えが 残っているのです。
全身の健康状態はもちろん、お口の中も夏に外出を控えていて定期検診が遅れ気味の方は、早めに健診を受けて
健康を取り戻しておきましょう。寒い冬に備えて・・・。
《12月》
年の暮れです。かっては年間で最高に多忙な月でした。最近は口腔衛生思想が一般に浸透して歯科来院患者さ
んの数が減少傾向にあります。病気が減ったのですから良い傾向です。
もう一つは昔気質の方は晴れと褻の区別をはっきりさせて、正月に向けて身仕舞いを整えたものでした。そのた
め、正月に間に合わせるよう年末の歯科医院、技工所はてんてこ舞いをしていました。
時代は変わって現在では、多忙な年末を避け正月明けゆっくりと来院される患者さんが増えています。通年平均す
れば、思うようにゆったりとした診療が出来るので、良いことなのです。ただ、当院のように高齢の患者さんが多い と、(暑い夏同様)寒い冬もいささか外出を控えられて、暖かくなる春先に集中される傾向があります。やむを得ない 事象ですが、やはり無理がなければ定期的な検診がお口の中を正常に保つ秘訣となります。
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