今月のひとこと バックナンバー【平成24年】

平成24年

《1・2月》
 ビスホスホネート系(BP系)と呼ばれる薬・骨祖鬆症の治療薬に関して度々注意の警告文が送られてきます。この
欄でも問題にされ始めた4年程前にも記載していますが注意点の内容は「フォサマックを始めとする骨祖鬆症の治療
薬使用の患者さんが、抜歯などの観血手術後、顎骨壊死・顎骨骨髄炎を発症した事例がある」と有ります。
 先日も3年ぶりに健康診断のため来院した70才台の患者さんが、未来院の間の3年程前からBP系の薬を服用を
続けているとのことでした。検診の結果は特に急ぎの治療はないのですが、当院来院前に前医で残根上の義歯(何
故か抜くべき歯を根だけ残した上に義歯が入っていたのです)に隠れていた2本の歯の根に虫歯が起こり、悪化す
れば数年経たずに抜歯の必要性が出ると予想されました。
 本来抜歯が適応なのですが、前述のため手術が出来ませんので、再治療(虫歯部分を徹底的に掃除して)し蓋を
して悪化を食い止めることにしました。
 やがてPB系の薬剤も拮抗薬が開発されるか、抜歯などを行っても障害が起こりにくい服用停止期間が研究され示
されるまでの緊急処置ですが・・・

《3月》
 ビスホスホネート系(BP系)と呼ばれる薬・骨祖鬆症の治療薬に関しての話題の続きです。
 やはり2年ぶりに来院された患者さんです。28年前に治療した前歯の2本連結した継続歯(差し歯)が外れて来院
されました。ポーセレンを使ったかなり高度な治療でしたのでここまで堪えられたのですが、80歳過ぎのご老人です
から特徴的な根面カリエス(加齢によって露出した根から始まる虫歯で、手入れしにくいので高齢者に多いケースで
す)によってポスト(心棒)が外れたのです。
 奥には3歯しかなく、全体は義歯となっていて2歯にかなり負担がかかっていたはずで連結してあったのですが、幸
い1歯は保存可能なのでアタッチメント(ホックのような装置)で義歯との連結に使えそうです。が、もう1歯は虫歯が
ひどく、仮に蓋をしておくことも出来ず抜歯以外方法がないのです。
 ここでビスホスホネート系(BP系)と呼ばれる薬の作用、骨壊疽(抜歯後、周りの骨が腐ってしまう症状)を心配しな
ければなりませんので、現状では抜歯を避けなければなりません。この患者さん2年前に服用したのですが、胃に負
担がかかると主治医に伝え半年程で飲むのをやめています。必然性が少なかったようで服用前に今一度考慮出来
なかったかと悔やまれます。
 3年以内の期間の服用なら、一定期間おけば手術が可能との見解が出されました。朗報ですが、やめてからの期
間が3ヶ月とも3年とも言われており、確実な見解が出されるのも間近いと思われます。

《4・5月》
 最近TVで「入れ歯安定剤」のCMが目立ってきました。
 それだけ入れ歯で不快な思いをしている方が多いのでしょう。かっては総義歯(総入れ歯)の安定が悪く、落ちてし
まうので接着させるために使用するのが一般的でした。最近のCMでは局部義歯(部分入れ歯)の下に食べ物が入
ってしまうので、不快感をなくすために使うとのコメントが多くなっています。
 確かに義歯(入れ歯)は歯肉の上に載っているだけですからその隙間に食べ物は入りやすいのです。弾力性のあ
る安定材により隙間を埋めれば入りにくくはなりますが、粘着性のある糊状の材料以外ではやはり細かい食塊は入
ってしまいます。糊状の材料でも完全に接着は無理で、かえって入った食べ物は取れなくなり、食事毎に徹底した洗
浄が必要になります。
 弾力のある裏装材(裏打ちの材料)は診療用としても存在し、痛くて噛めないなどがどうしても解決出来ずやむを得
ず使うこともありますが、咬合理論(噛む力を求めるための考え方)では弾力によって噛む力が減少する、又、均一で
ない圧の加わることで骨の吸収変化にむらが出やすいので好ましいとは言えないのです。診療室で使う弾性裏装材
の弾力は1年以上も持続出来ます。
 市販の安定材は柔らかければ弾力性を維持するために頻繁に張り替え、固ければ汚れが溜まり易く張らないのと
同じになります。しかも1日限度でないと不潔になりやすいのです。
 普通のレジン床(プラスチック)を裏打ちすることによって適合を緊密にして、ある程度は改善され食塊陥入(食べ物
が入る)を最小限にすることが出来るのです。半永久的に入れ歯安定剤に頼るのは面倒なことですから、主治医に
相談してみることをおすすめします。
 
《6・7月》
 6月4日から6月10日までの1週間歯の衛生週間でした。毎年上野動物園のカバの歯磨きが新聞紙上に取り上げら
れますが、各地の歯科医師会でも啓蒙行事が行われています。所属している渋谷区の歯科医師会でも6月2日「し
ぶや・よい歯のつどい歯の健康ひろば」が開催されました。
 戦前には「虫歯予防デー」として発足し、戦後「口腔衛生週間」として復活しその後現在の「歯の衛生週間」として
定着しています。
 会の50年誌などを見ると、街頭にテントを張り白衣姿の会員が来場者を相手に相談に乗っている姿が載っていま
す。一時期は渋谷公会堂満杯に区内全幼稚園児と父兄を集め、余興を含め大々的にPR活動をしていました。
 最近は世の流れに引きずられ、質素な活動を余儀なくされています。それでも「口腔管理(虫歯だけでなく歯周病
などを含め口の中の全体を健康に保つ)」意識が一般に広がり、この週間だけでなく当院にも定期健診に訪れる方
が増えています。
 虫歯・歯周病についで最近では「口腔癌」に関心が集まり初め、「口腔癌」健診を本格化する動きが出てきており、
今まで以上に医療側でも対応出来るよう研修会などを行い、準備もほぼ整いました。関心のある方、というより関心
を持って検診を受けることをおすすめします。 

《8月》
 暑い夏がやってきて「熱中症」に対する注意が喚起されています。「歯科」と「熱中症」との関連を考えてみました。
 特別な関連はないように思えますが、「夏バテ」の言葉通り全身の倦怠が起こると慢性疾患が急性化することが多
くなります。口腔(歯に関連して)では歯周病(歯槽膿漏)や智歯周囲炎(親知らずの腫れ)がこれに当たります。口
内炎も多く発現します。
 慢性病は普段は体の抵抗力により押さえ込まれていますが、体力が衰えると急性発作という状態になり腫れたり
痛んだりします。予防法は通常の予防法「口の中ではプラークコントロール(刷掃)、全身では栄養摂取・適度の睡眠
など通常の体に良いことの励行」と常識の範囲なのです。
 暑さに負けて外出は控えめになりますが、暑さの和らいだ日や時間帯を選んで早めの手当や健診が必要です。状
態を悪くしてしまうと回復も遅れます。病は体力勝負なのです。

《9月》
  「口内炎が出来た」とか「歯肉が腫れた感じがする」と来院される方の中に「擦過傷」(擦り傷)や「火傷」(やけど)
の方が多く見られます。
 原因はトンカツなどのパン粉の衣や魚の骨など角やとんがりのある食べ物に因ることが多いのです。又、歯ブラシ
の使い方(強くこすったり毛先が曲がったり)によって傷つけてしまうこともあります。口の中は粘膜で、皮膚と違って
表面を覆う角質はなく柔らかく傷つきやすいのです。反面、より原始的な組織ですから回復も早いのです。歯槽膿漏
や口内炎などの細菌感染によるものと違って放置しても自然に回復しますが、深かったり範囲が広かったりすると細
菌感染し悪化することもあります。
 感染防止などの処置や、本物の口内炎との区別(鑑別診断)をするため早めの受診で「安心」を手に入れて下さ
い。もっとも、軟組織(粘膜など)に出来た炎症(傷や潰瘍、口内炎など)の鑑別診断(区別)は普段見慣れている口
腔外科の専門医と違って開業医にとってはやや苦手の分野ですが、経過や治療によって様子を見ながら最終的に
判断することが可能が多いのです。
 最近治りの遅い潰瘍(表面の荒れたぶつぶつ状)がやや心配なので大学病院で検査してもらった所「口腔癌」であ
ると診断されました。早期発見で手当が間に合ったようですが、50年近い臨床の中で3件しか遭遇していません。そ
れ程希な症例ですが、経験により「違い」が判断出来て安堵しています。

《10・11月》
 長かった猛暑の夏がやっと終わりを告げました。近年心地よい爽やか秋が続かなくなっています。夏の次にすぐ寒
い冬がやってきてしまうのです。
 とは言ってもやはり秋、この季節を大いに楽しみたいものです。が、この時期毎年「抗生剤」の使用量が多くなりま
す。歯周病や親知らずの腫れなど慢性病が急性発作を起こし、化膿がひどくなって腫れたり痛んだりするのです。季
節の変わり目に多い現象ですが、原因ははっきりしません。
 寒い冬から暖かい春への移り変わりにも同じような症状が多くなるのです。猛暑・酷寒に堪えてきた体がほっとして
気を緩めるのでしょうか?風邪を引きやすいのもこの季節なのです。少しでも異常を感じたら、早めに受診して下さ
い。

《12月》
 虫歯や歯周病の予防にはプラークコントロール(ブラッシングなどを正しくしっかりし、口の中を清潔に保つこと)が必
要なことは一般に知られるようになり、実際に実行する人が多くなりました。
 義歯(入れ歯)も汚れると口臭の原因や残っている歯との間の汚れなどが問題になりますので、同じように管理が
必要です。今やかなり普及してきたインプラントは、定期的に歯科医院での管理が必須なのですが、ややおろそかに
されている感があります。
 最近プラークコントロールが出来なくなった患者さんによく遭遇するようになりました。脳障害で体に麻痺が出て手
足の動きに障害が残リ、思い通りにブラッシングが出来なかったりします。病気で入院してベッド上での生活などで、
管理が不十分になることもあります。
 これらは介護者が手伝い、ある程度はカバー出来ます。対応に困ってしまったのは、認知症などプラークコントロー
ルの必要性を理解出来なくなってしまった患者さんです。かたくなに口を閉ざし、歯磨きや入れ歯の清掃を拒否され
てしまうのです。口の中に他人が手を入れるのを拒否するのは本能なのですから、気長に話しかけ理解してもらうま
で根気がいるのです。色々対策を考えているのですが、未だに名案は浮かびません。

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