今月のひとこと バックナンバー【平成29年】

《1・2月》

 お正月休み明けに多いのは差し歯や詰め物がとれた、落ちたという患者さんです。
 1週間近くの中断とはいえ普段と同じはずなのに、(お正月ということで特別な食べ物を食べる???)なぜか治療
の終了した歯に起こるのです。今年の特徴は歯根(歯の根の部分で、差し歯や詰め物を支えている)が割れたりひ
びが入っている例が多かったのです。ひびの入った歯は抜くしかありません。
 カルテで調べてみると、歯内療法(通常神経を取ると呼ばれている歯の内部を掃除する治療)をして年数を経て(1
0年・20年以上)も経っている場合と、2度3度と治療を繰り返している例が多いのです。
 “神経を取る”という治療は歯の内部を掃除する−血管を含めすべての組織を取ることになります。すなわち歯は死
んでしまうのです。新陳代謝がなくなるので年が経つとひからびて割れやすくなります。「噛む」という作業は物理的
な力が歯にかかるので、必然的に割れやすくなります。
 それを防ぐには神経・血管を除く治療は避けなければなりません。表面だけの治療で済ませられるよう、健診と早
めの治療が有効です。

《3・4・5月》

 高齢の患者さんが多い当院にとっては、歯周病対策が一つの課題となっています。
 『年のせい」と片づけてしまっては義務が果たせません。90歳を過ぎた高齢者であっても、9020(90歳で20本の
歯を維持する)患者さんも多数います。どんな対策を取れば良いのかは、個々の患者さんについて対応するしかない
のです。
 最近新聞紙上で歯周手術時に骨の造成を促す薬品について掲載されていました。購読している学術誌には見つ
けられないので、歯周病関係のニュースを調べてみる必要がありそうですが、「GTR」法(詳しくはネットで見て下さ
い)など最新の治療法も症例(口腔内の状態)によって限りがあることが分かっていて、実際には完全治癒はなく施
療は少ないのです。
 今回の新手法も我々現場では情報すら入っていないのに、マスコミが大々的に取り上げる真意は何なのか疑問が
あります。
 と言っても本当に有意なら施行の価値があるので早速検討してみるつもりです。最も新聞記事に依れば「FPO手
術」に併用とありましたから、患者さんの説得が必要になります。何しろ高齢者は・・・限らないのですが・・・“手術”
に抵抗され出血を見るのを嫌いますから・・・

《6・7月》

 最近の新聞テレビなどマスメディアが、歯科特に歯周病を取り上げることが多くなっています。当事者の歯科医にと
っては有意義なことです。
 直近の話題としては「歯周病と脳梗塞との関連」がありました。「歯周病原細菌は血液の流れに入り込んで血液の
凝固を起こし血液の流れを阻害します。」すなわち血液中の血栓が脳の血管を詰まらせ脳梗塞の原因となり得ると
いうことです。
 特に「脳梗塞」との関連を取り上げた意図が理解しにくいのですが、慢性病である「歯周病」は急性発作を起こさな
い限り日常気にされないので、高齢者が意識の中にある「脳梗塞」に関連づけて注意喚起しているのでしょう。
 とはいえ歯周病に限らず健康管理は日常の“メンテナンス”、“管理”に尽きるのです。歯周病でいえば「プラークコ
ントロール」と定期検診でしょうか。今国会でも話題の「室内全面禁煙」の“禁煙”もリスク軽減に有効な手段なので
す。

《8・9月》

 歯科診療所の消毒(滅菌)体制について、最近の新聞テレビなどマスメディアがいろいろ報じています。曰く「エア
ータービンなどは患者さんごとに滅菌した器具を使うべき」などです。
 原則的にそのような対応を取っている医院が多いのですが、当院のように一日数人かせいぜい十人を超える程度
の診療体制ならば準備する器具も少なく対応出来て良いのですが、複数の歯科医がいて(一人診療ならなおさら)
多数の患者さんを扱っている場合、そろえる器具の数・種類は膨大になります。作業も専任の人が必要になり経費を
考えると並大抵では対処出来ないでしょう。
 メーカーもそれらに対応出来るようタービンハンドピ−ス(切削器具)などでは停止時にエアーを排出して内部汚染
を防ぐ機構を開発したり、今までの半値近い低価格を実現したりして対処しています。
 歯科の施療は医科の手術と異なり大部分は体表面であって体内には入ることは少ないので二次感染は起こしにく
いのです。そのためか、かっては煮沸消毒が主流であっても、二次感染の事例はほとんど聞いたことがありません。
細心の注意は払っていたのです。現在では、オートクレーブはじめ乾熱・ガス・薬液など器具の性質に合わせ消毒よ
り強力な滅菌方法がとられているのが一般的です。
 マスメディアが特に指摘していた「タービンハンドピ−スは高圧蒸気滅菌により内部の汚染を除去する必要が必須」
と述べていますが、内部汚染を起こさない機構があれば表面の薬液消毒でも対応できるでしょう。
 もちろんかってのように高価で操作が煩雑だったため歯科開業医では手の届かなかったオートクレーブが、歯科用
に改良され価格も抑えられ多くに備えらるようになりました。それでも20年近く低医療費に抑えられている「保険」対
価で年々強まる各種の規制に対応するのは並大抵の努力ではないのです。

《10・11月》

 最近原因不明で歯肉が腫れる患者さんが増えています。もちろん、原因は調べれば殆ど突き止められます。
 患者さんが腑に落ちないと思うのは、以前時間をかけて治療していて、数年どころか十数年、それ以上に異常を起
こしていない正常に機能していた歯が、突然腫れるのです。高齢になった方が多いのですから当然歯周病(歯槽膿
漏症)も多いのですが、歯根破折(歯の根にひびが入ったり、割れたり)も多く見られます。
 歯内療法(歯の内部が感染して拡大清掃する治療法)は基本的に内部の壁に着いた細菌を削り取り無菌状態に
することです。当然壁は薄くなります。同時に、血管はなくなりいわば死んだ状態になります。生きていれば新陳代
謝がありますが死んだ状態になればいずれはひからびてもろくなり、噛むという大きな力が掛かり耐えられなくなり破
折を起こすのです。
 残念ながら現在では治療出来ないのです。(一部には、取り出して破折を接着し元の骨の中に戻す療法を行った
報告はありますが、一般的ではありません。)抜歯して何らかの方法で噛むことが出来るようにするしかありません。



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