4節 医療関係団体
1項 医師会(州医師会と連邦医師会) ♯23,24,25
医師が自己運営する最上位組織は連邦医師会(正式にはドイツという名は付かない)であるが、私的な団体で法的権限はない。その任務は例えば、「職業規則」の作成にあたっては全国の州医師会代議員会の決議を経た後に、更に監督官庁の承認が必要であるが、基本形を示すのが連邦医師会の役目である。
この点では、県医師会を傘下に納め、事実上の上下関係にある日本医師会とは異質である。
15の各州に1つと、ある州に2つの州医師会があり、実質的な活動を司るのはこれらの州医師会である。全ての医師は己の所属する州の医師会に参加する義務がある(日本医師会は任意参加)。そう言う意味では間違いなく診療に携わる医師の全体を代表する団体である。
州医師会は行政から医師の監督権を移管されている。このために州医師会は、医師の職業上の利益を守ると同時に国家的な立場で規則を作って医師会々員を監督しなければならない。州医師会の事業の中には専門医教育とその認定試験や卆業後の生涯教育の他、医療紛争に関する調停委員会など、医療に関するほぼ全ての事業を委託され、あるいは自主運営している。なお医療紛争ついては90%が調停委員会で解決され、訴訟になった残りの10%についても裁判所はそのまた90%にこの調停委員会の結論を認めるという。
2項 保険医協会(州保険医協会と連邦保険医協会) ♯26,27
医師会と同様に17の州保険医協会があり、連邦保険医協会に加盟している。専門医が保険医(正式名は契約医)として開業するためには保険医協会の認可が必要であり、従ってこの協会の会員は全て(開業した)保険医である。そういう意味では州保険医協会は連邦医師会の一部の様にも感じるが、(州)医師会と同じく独立した公法の団体である。また、役員の構成や活動の面から見ると、日本医師会はこれに近いと云える。
診療所の項で述べた如く、州保険医協会は契約医(保険医とも呼ばれる)が提出した診療報酬を審査した上で取り纏めて疾病金庫と協議を行う。その結果、州保険医協会が一括して診療報酬額を受け取り、これを個々の契約医に分配する。
上記の実務で分かる様に、州保険医協会は契約医の権利の代理を行うと同時に、契約医の義務についての監督も行う。救急医療業務で議論される外来救急医療の保証もまた州保険医協会の重要な任務である。
3項 病院協会 ♯29
ドイツ病院協会は、病院を運営する12の主要な連盟と16の州の病院連盟から成る。
協会の主な任務は病院制度の分野に関して、法的に依頼された任務を履行する際に会員を支援することにある。その際、単に個々の開設者や個々の連盟員に関する問題は扱わず、特に基本的な問題の面倒を見る。
救急業務を含む医療業務と直接の関係はない。
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