並河靖之七宝記念館は、明治・大正期に活躍した
七宝家 並河靖之<1845〜1927)の偉業を語り継ぐために
記念館として開館して以来、
この春で十周年を迎えました。
靖之の作り上げた有線七宝・邸宅の佇まい・庭園にさまざまな魅力を感じ、当館にお越しくださった皆様に心より感謝申し上げます。
十周年記念春季特別展では、清水三年坂美術館様の御協力をいただき、 清水三年坂美術館所蔵の七宝作品と、
当館が所蔵する下図を合わせて展示することがかないました。
並河七宝は、風景の他に“花と鳥”や“花と蝶”といった 身近にある題材が多く見られます。
この庭園の木々や花々に集った鳥や蝶を眺めながら、 靖之や職工たちは日々作品に向き合っていたと思うと、
靖之が愛した庭園は無くてはならないものであったといえるでしょう。
空を舞う鳥もいれば、枝に宿り周辺の様子を窺う鳥もいます。鳥の目からは、表情を画き出さずとも発せられる生気が、 何とも不思議な印象をうけます。
空気感までも想像させ、 今にも動き出しそうなリアリティーが作品いっぱいに表現されています。
ふわりと舞う蝶は、まるで辺り一面に花の香りが漂っているかのように感じさせ、作品に対峙する私たちを効果的にその世界観へ誘います。
靖之が作り出した鳥も蝶も、今もなお作品の中で生き続け、
時代を超えて現在のわれわれにも同じように感動を届けてくれます。
かつての佇まいを遺すこの空間で、小鳥のさえずりに耳を傾け、 花に集う蝶を眺めながら、心やすらぐ時間をお過ごし下さい。
|