.    '15年2月5日

   .

知っているつもりでも… その1

 事故(車のフロントガラスに衝突の後、轢かれたと思われる)に遭って落命した ヒレンジャク の(上から見た)尾の部分です。傷みのため、剥製にはできないことから羽標本にしました。 これまで、図鑑などでその姿は知っており、幾度かは遠目で見たことがありました。 しかし、見かけた時の多くは、群れでいたために、‘集団として見る’ことはあっても、‘個として観る’ことがなかったと気づきました。 この個体を目の当たりにしての思わぬ感動は、腹側から観た羽毛の色と形でした〔写真にマウス・オン〕。 このように羽を広げた姿は、野外での野鳥観察においても一般の図鑑においても観ることはできないと思われます。 机上の学問とフィールド観察は両輪となりますが、ありがちなのは『知ったつもり』になって、見慣れたものに興味を無くしてしまうこと。 それらにあらためて感動していただくべく、ただいま展示品作成中! ⇒ こちら





    写真にマウス・オンして、腹側からの写真


   .

知っているつもりでも… その2

 続いてこちらは トラツグミ の(腹側から見た)尾の部分です。 ‘虎のような黒と黄色の配色のツグミ科の鳥’ということから『虎鶫(とらつぐみ)』の名があるとか。 (しかし、虎というよりは、むしろ‘豹(ヒョウ)’柄に見えるのですが…?)   今までの、図鑑における知識やフィールド観察から‘トラツグミ=まだら模様’が固定観念となってしまい、このような羽があることに新鮮な感動を覚えました。 ところで、写真の剥製の左側は当園地で作製したもの 〔これまでの剥製作製の経緯は ⇒ こちら〕 ですが、右側はご寄贈いただいたものです。 せっかく、手続き(剥製にするには死因の証明申請が必要)をして剥製にしながらも、手放されたのは、『不吉な鳥』とのご懸念があったとのこと。  平家物語をはじめとした古典に登場する妖怪(物の怪)の『鵺(ぬえ)』。その鳴き声がトラツグミのようであるとされたことからの連想のようです。





    写真にマウス・オンして、展示中の剥製


   .

あがりこ?

 森林エリアの一角にある植林地。そこに、このような形をしたヒノキが自生しています。  薪炭林として利用された里山のブナナラの森には『あがりこ』 と称される樹があります。  積雪期に、地上 2,3mの高さで伐られた樹は、切断箇所から芽を吹き、それが成長してやがて新たな数本の幹になります。 一方、ヒノキはそのような芽吹きによるものではありません。 伐った直下の、それまで横に伸びていた枝が立ち上がり、幹の代わりに成長します。 その結果がこのような姿。 これと似た樹形のサワラが、当園地のある安曇野市隣接の北安曇郡松川村において 『あがりこサワラ の名で知られています。 ところで『あがりこ』とは ‘上がった所から新しく子が出る’を意味する東北地方の呼称とのこと。 ヒノキやサワラは、新たな芽吹きでなく、それまであった枝が成長することから、本来の『あがりこ』とは言えないのかも…
  中部森林管理局 資料





  人為的なものではなく、風雪害で折れたと思われる