.    '15年5月20日

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無防備な飛翔

 この時期園内で、時にはフワフワと優雅に、時にはバタバタと不器用に、また時にはツゥーとグライダーのように飛翔するウスバアゲハ(=ウスバシロチョウ)。  園内には幼虫の食草となるムラサキケマンヤマエンゴサクが多いことから、もっと見かけても不思議はないのですが、思いのほか見る機会が少ないようです。
 種名の‘ウスバ’とは‘薄い羽’のこと。 本来、もっと透明感のある翅であることが多いのですが、この個体は燐粉が多いためか、妙に白っぽく見えます。
ところで、この蝶がちょっとかわっているのは… その1.交尾後のメスには、ヒメギフチョウ同様、腹部に交尾嚢ができます。 つけるのはオスで、その目的は⇒他のオスとの交尾をできなくするためとか ┐(´∩`;)┌  (ちなみに、写真に写っているのは、オスです)
かわっている点、その2.(蛾でもないのに)蛹が繭をつくること。なんとも、特異な生き方をしています。





 無防備で飛べるのは、有毒植物を食べた毒虫だから


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いまだ飛べず

 こちらはアケビコンボウハバチの幼虫。丸くなっているのは、(恐怖心を与えた当人が言うのも筋違いなのですが…)身の危険を感じたからです。 これ以上ストレスを与えると、自ら落下してしまいます。 〔アケビ〜〕の名があらわすように、アケビミツバアケビが幼虫の餌(食樹)となります。 (ちなみに、写真はゴヨウアケビ)。なお、ハバチ(葉蜂)の名の由来は植物の葉を食べることからですが、蜂のように刺すことはありません。 ヒトを刺す蜂の針は産卵管が変化したものです(よって、オスは‘刺さない’…といよりも‘刺せない’)。 しかし、ハバチの産卵管は毒針になっていないため、メスであっても刺すことはありません。  ところで、この他にも、園内のアケビに依存する昆虫に アケビコノハがいます。アケビだけでも多くの昆虫を育んでいる園内では、520種余の草本類、220種余の木本類、2,000種余の昆虫が確認されています。





    ちょっと葉を持ち上げたら、警戒して丸まった


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柳絮 (りゅうじょ)

 これからの時期、窓口にお問い合わせが多くなるのが、コレ。 『綿ぼこりのようなものはなんですか?』 とか、『タンポポの種ですか?』 とのお尋ねです。正体は【ヤナギの種(たね)】。  なんと、これには ‘柳絮’(絮とは綿のこと)という立派な固有名詞がつけられています。 〔写真にマウス・オンで果穂〕  純白の綿のような柳絮は、熟した種子を少しでも遠くに運ぶため、軽やかに大空に舞いあがります。  園内にはオオバヤナギ、コゴメヤナギ、オノエヤナギ、バッコヤナギ、イヌコリヤナギ、ネコヤナギ、オオキツネヤナギ、ヤマナラシ、ドロノキ など、種類も本数も多数自生しており、それぞれの結実時期が異なることから、 長期間にわたって見ることができます。 そのため、自然観察には好適な一方で、園路や部屋の隅に綿ぼこり(?)が吹き溜まり、あたかも『清掃をしていない』と思われる状況になることが悩ましい限りです。





  風が無くてもふわふわと飛び、写真撮影は至難の業