78章    清寧天皇
   恋敵 志毘の臣 しびのおみ
  袁祁の命おけのみこと は 若人が集まる歌垣で 志毘の臣 しびのおみ と過激な恋のバトルを行った。
  清寧天皇の時代 宮中では 大臣
おおおみ を務める平群へぐりの真鳥まどりが 強い権力を保持していました。
  志毘の臣は この平群へぐりの真鳥まどり の息子でしたので 肩で風をきって歩き 周りを威圧していた。
  歌垣の場」では 大魚おうおという名の美しい乙女が 男衆の注目を一手に集めていました。
  
袁祁の命
も志毘の臣も 共に 大魚おうおに夢中で 彼女の関心を引くため 目立つ振る舞いでアタックしていた。
  求婚トーナメントが進み いよいよ 決勝戦のときがきました。
  決勝戦まで勝ち上がってきたのは やはり 袁祁の命と志毘の臣の二人でした。

  大魚にとっては どちらに軍配が上がっても
 珠の輿たまのこし に乗った結婚ができます。
  清寧天皇の御子で 将来 天皇にも成り得る若人の袁祁の命と 大臣の息子の志毘の臣。
  勝負は 詠み歌合戦の方式で行われます。 手に汗にぎる戦いが さあ スタートしました。

  先行は志毘の臣 まづ… 嫌味の一発を出した
…… 『大宮の もとつ端手はしてすみ 傾けり』
  
 意味 大宮の袁祁の命の御殿の あっちののきはし が傾いているぜ
 後行の
袁祁の命 負けじとばかり 詠み返した…… 『大匠おおたくみおじなみこそ 隅 傾けり』
  
 意味 大宮をモジッテ大匠と すみ傾けりには オウム返しで 同じく 隅すみけりフテブテシク詠み返した。
 次に 志毘の臣 …… 『大君おおきみの 心緩み 臣おみの子の 八重の柴垣 入り立たずあり』
  
 意味 大君の心がダラシナイから の子(志毘の臣)の 八重の柴垣にさえ 入り込めないだろう。
     志毘の臣は挑発の言葉で
心が緩んだお前には 乙女の心は掴めないさと 一気に攻めてきた。
 すると 袁祁の命は …… 『潮瀬うしおせの 波折なみおり 見れば 遊びくる鮪しび (マグロ)が端手に 妻立てり見ゆ』
  
意味 潮の早瀬に 折畳むような波を見ると 泳ぎ来る鮪の群の端はしに 妻が立っているのが見える。
     袁祁の命は キツイパンチを出した大魚おうおの乙女は お前には無理だ 小魚が似合っている
 志毘の臣
怒って…… 『大君の御子の柴垣は あちこち結び廻らしているが すぐに切れるさ すぐに焼けるさ』
 袁祁の命止めの一発 …… 『大魚を狙い 銛もりを突く海人(臣の子)よ 大魚は逃げて 涙にくれる 志毘の臣』

 以上にて 決勝歌合戦は終了となりました。 誰が勝者の栄冠に輝くのでしょうか?
 どっこい
どっこい 男の勝負は 歌合戦などで決着つくほどユルくはありません。 最後は腕力勝負です。
 
袁祁の命 志毘の臣の寝込みを急襲す
 決勝戦の翌日 朝明ける前
袁祁の命は 志毘の臣の寝込みを急襲して めった斬りで殺してしまった。
 なんともはや 乱暴な袁祁の命だが 播磨の国での牛飼い時代は 毎日がそんな日々だったのでしょう。

 袁祁の命は 少年時代 牛飼いの荒くれ者どもから 喧嘩の仕方を学習していたのでした。
 いわゆる ただのボンボン坊主と 苦労少年との大きな差が 恋のバトルでハッキリしたのでした。
                             
いやはや 恋の場外乱闘とは ビックリしたね……ボサツマン
 
                                                    「播磨へ逃げる」:「兄と弟の舞と歌
 時
ときが流れて 清寧天皇せいねいてんのう 亡き後 兄の意富おおけの命みこと が天皇に即位するはずでしたが
 兄は辞退して 弟の袁祁の命おけのみこと こそ 天皇に相応しい人物だと 宮中で公言しました。
 「皆の者 良く聞いてくれ。我々二人の兄弟が 再び皇族の立場に戻れたのは すべて 弟の功績です。
  播磨の牛飼いの時代 酒宴の席で 弟が自分たちの身分を明かす歌を披露したお陰なのです。
  兄の私よりも 弟の方が でっかい度胸と広い度量をもっています。
  天下に君臨する天皇には 弟の袁祁の命おけのみこと が適任なのです。次期天皇に弟を指名します」。
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