第56章 第15代/応神天皇 (2)
応神天皇 和紀郎子わきいらっこ の母 矢河枝日売 やがわえひめ と出会う
ある日 応神天皇は 宇遅野うじの(宇治)から 遠く葛野かずの を望み
ー千葉の葛野を見れば 百千ももち 足る 家庭やには も見ゆ 国の秀ほ も見ゆー と 歌を詠んだ。
読み 千の葉が繁る 葛野かずの の国を見れば たくさんの満ち足りた村々が見える 秀ひい でた国原も 見える。
この日 天皇が木幡 こはた (宇治市小幡)の村で休憩した時 村一番の美しい娘が お茶を給仕をした。
天皇は この美しい娘の目を見て 「そなたの名は なんと申すか」と 聞きました。
初々ういういしい 娘は ー比布礼ひふれ の意富美おおみ の娘 矢河枝日売 やがわえひめ ーと答えた。
天皇は その場でーうむ 明日 そなたの家に 立ち寄るとしよう 親に申しておきなさいーと 娘に申した。
矢河枝日売は 家に帰って 父親に伝えた、
父親は さっそく歓迎準備を始め 「天皇さまが お寄りになるとは 恐れ多いことだ 娘よ お仕えしなさい」と 言った。
翌日 天皇が食事をする時 矢河枝日売は 大酒盞 おおさかずき を持って 御酒おさけ を差し上げた。
応神天皇は 食事膳を前にして その大酒盞をもって歌を詠んだ
『この蟹は いずこの蟹 遠くから来た敦賀の蟹 横這いで いずこまで行く 伊知遅島いちじしま の島に着いて 水鳥のように
水に潜ったり浮かんだり 坂を登ったり下ったり 私は ささなみ道を ずんずんと歩いて来た。
木幡こはた の道で会った乙女 小楯こだて のように可愛い姿 歯並びは椎の実 菱の実。
櫟井いちい の丸邇坂まるにさか の土を 上土は肌が赤すぎ 下土は赤黒く 三つ栗の真ん中の土は 顔を焦がすような強火で焼かず
いぶし焼きにした眉墨まゆずみ で眉を描き こう描き垂た らして 出遭った麗しい乙女。
素敵な乙女に 私は今 向かい合っている 本当に 寄り添っている うれしいな あ〜うれしいな』
こうして 応神天皇と矢河枝日売が結ばれて 誕生したのが 宇遅うじ の和紀郎子わきいらっこ です。
すると 天皇さま 美人の矢河枝日売の子 和紀郎子も美男子なんですね 羨ましい……ボサツマン
敦賀つるが の蟹は 最高級の御馳走。伊知遅島いちじしま は 琵琶湖に浮かぶ島。
三つ栗は 上中下の中をさす枕詞まくらことば で 土をほどよく焼いて化粧用の眉墨まゆずみ を造ったという意味。
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応神天皇は八幡の大神
天皇家の祖先・天照大御神を祀っている宗廟そうびょう が 伊勢神宮です。
また 天皇家の第二の宗廟として 「宇佐八幡宮」 うさはちまんぐう があります。
宇佐八幡宮は 大分県宇佐市にあり 全国・四万数社の八幡宮の総本山です。
その八幡宮の