薬王菩薩本事品 (10)
世尊
「この法華経を受持し読誦するものは、阿弥陀仏が説く来世らいせ にても 現世げんぜ においても
貪欲とんよく 瞋恚しんに 愚癡ぐち の煩悩ぼんのう に悩まされることはありません。
貪欲は 物質、名誉、地位、愛情などを 飽くことなく貪り欲する心。
瞋恚は 我が による怒りの心。 愚癡は 目先のことしか考えぬ愚かな心。
この貪・瞋・癡・の三つは、三毒さんどく といわれ、衆生の身を滅ぼす大元の毒(罪)なのです。
衆生がこの三毒を除くには、法華経の経典を受持し読誦どくじゅ を続けると良いのです。
根気よく法華経の経典を受持し読誦すると、必ず、三毒による苦悩から解放されます」。
経文: 「六煩悩/増上慢」:「3類の強敵」:
ー是の人現世に 常に 口のより青蓮華しょうれんげ の香か を出し 身の毛孔もうく より 牛頭栴壇ごずせんだん の香か を出さんー
意味:
この経文は 仏法を身に行うものの、境地を説いています。
青蓮華しょうれんげ の香か を出すとは…… その人の言葉は 周囲の人々の心を自然に美しくするという意味。
身の毛孔もうく の中より常に 牛頭栴壇ごずせんだん の香か を出すとは……
その人の行動が、自然のうちに周囲の人々に良い感化を与えるという意味。
善男子が振りまく周囲への移り香うつりが は、触れた人に良い感化を与えるのです。
経文: 「人間界」・人間は南閻部州の住人・
ー此の経は 即ち 閻浮提えんぶだい の人の病の良薬なり 一切衆生の老・病・死の海を 度脱どだつ すー
意味:
この法華経は、閻浮提えんぶだい (南閻部州)に住む人間たちの、身体の病・心の病に効く良い薬である。
ここでいう病やまい とは 心の病やまい を強調しています。
心が健康であると、身体も健康になります。 身体の病気は、心の在り方に多いに関係しています。
老・病・死の海とは、人生上の重大な変化のことで、仏はこれを生死しょうじ と説いています。
薬王菩薩とは、その名が示す通り、衆生の病を治す菩薩なのです。
身体の病も、もともとは心の病ですので、心を病を治すことで、身体の病気も完治するのです。
衆生の病を完治させる薬王菩薩の神通力は
薬王菩薩が過去世の一切衆生憙見菩薩の時に実行した、焼身供養の功徳の力が元になっています。
さらに、その後も、法華経の教えを身をもって実行しつづけた徳として、この神通力を授かったのです。
衆生の皆さん、心の病を癒すことは、身体の病にも、大いに影響あることなのです。
法華経を心から受持し読誦し実行することは、あらゆる病を克服する原動力なのです」。
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