観世音菩薩普門品第25 かんぜおんぼさつふもんぼん
このお経は、観音経 かんのんきょう という名で、古くから世人に親しみ読まれている。
前半は 観音の神通力を説いていて、長行ちょうぎょう とよぶ。
後半は 観音菩薩が神通力を得るに至った願を、述べていて、「自我偈」じがげ とよぶ。
経文: ー無尽意菩薩が衆生を代表して、仏(世尊)に聞くー
① にじ むじんにぼさつ そくじゅうざき へんだんうけん がっしょうこうぶつ にさぜごん
爾時 無尽意菩薩 即從座起 偏袒右肩 合掌向仏 而作是言
せそん かんぜおんぼさつ いがいんねん みょうかんぜおん
世尊 観世音菩薩 以何因縁 名観世音 「観音さまの呼び名」
その時ー説法の場でー、無尽意菩薩は、即、座より起・た・って 衣の右の肩を脱いで合掌して
観世音菩薩は ー何の因縁を以て観世音という名なのか?ーと、世尊に聞いた。
無尽意菩薩 ー 釈尊の説法の座で、衆生の教化の橋渡しをする菩薩で、成仏の仏が普賢仏ふげんぶつ 。
偏袒右肩 ー 尊者を拝するときに示す、仏教の基本的な礼の作法。
以何因縁・名観世音 ー 観世音という名前は、どんな因縁で付いたのですか。
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② ぶつごうむじんにぼさつ ぜんなんし にゃく・う・むりょうひゃくせんまんのくしゅじょう じゅしょくのう
仏告無尽意菩薩 善男子 若有無量百千萬億衆生 受諸苦脳
もんぜかんぜおんぼさつ いっしんしょうみょう かんぜおんぼさつ そくじかんごおんじょう かいとくげだつ
聞是観世音菩薩 一心称名 観世音菩薩 即時観其音声 皆得解脱
仏(世尊)が、無尽意菩薩に告げる。 「涅槃の門」:「六煩悩」:「六神通力」
善男子よ、無量百千萬億の衆生が諸々の苦悩を受けたなら、観世音菩薩を心に思い、
一心に名を唱せば観世音菩薩は、即時にその音声を聞き観じ、衆生を皆、解脱せしむる。
仏告ー お釈迦さまが話をされた。 善男子ー 仏法を信じる者。 無量百千萬億衆生ー 数限りない多くの人々。
解脱ー 苦しみから解放される。 涅槃ねはん ー 仏教の最終目標境地で、煩悩ぼんのう から解脱した心安らぐ世界。
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③ にゃくう じぜ かんぜおんぼさつみょうしゃ せつにゅうだいか かふのうしょう ゆぜぼさついじんりきこ
若有 時是 観世音菩薩名者 設入大火 火不能焼 由是菩薩威神力故
にゃくいだいすいしょひょう しょうごみょうごう そくとくせんしょ
若為大水所漂 称其名号 即得浅所
若・も・し、この観世音菩薩の名を信じ奉る者が有れば、その者は、たとえ燃え盛る火の中に入るとも
この菩薩の神通力により、その人は火に焼かれることはない。これが観世音菩薩の威神力である。
若し大洪水・こうずい・に漂うとも、観世音菩薩の妙号を唱せば、たちまちのうちに、浅き所に着くのである。
威神力ー 人知を超えた神や仏の不可思議な力(神通力)。
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④
にゃくうひゃくせんまんのくしゅじょう いぐ こんごん るり しゃこ めのう さんご こはく しんじゅ とうほう にゅうおだいかい
若有百千萬億衆生 為求 金銀 瑠璃 硨磲 瑪瑙 珊瑚 琥珀
真珠 等宝 入於大海
けしこくふうすいごせんぽう ひょうだらせつきこく ごちゅう にゃくう ないしいちにん しょうかんぜおんぼさつみょうしゃ
仮使黒風吹其船舫 飄堕羅刹鬼国 其中 若有 乃至一人 称観世音菩薩名者
ぜしょにんとう かいとくげだつ らせつしなん いぜいんねん みょうかんぜおん
是諸人等 皆得解脱 羅刹之難 以是因縁 名観世音
若し、百千萬の衆生が、金銀・瑠璃・蝦蛄・瑪瑙・珊瑚・琥珀・真珠などの宝を求め、大海に船を漕ぎ出して
仮に、黒風がその船舫せんぽう に吹き荒れて、羅刹鬼の国に漂い着いても、その衆生の中の一人でも、
観世音菩薩の名を称する者あれば、この衆生たちは皆、羅刹鬼の難から、逃れることができる。
世間の人々の苦の音声おんじょう を聞いて、観世音菩薩は人々を救う因縁故ゆえ 、名を観世音と称する。
七宝しっぽう ー 金銀・瑠璃・蝦蛄・瑪瑙・珊瑚・琥珀・真珠 「12天・神」:「四天王」
假使黒風吹ー たとえば暴風が吹いて。 船舫ー船団。 飄堕羅刹鬼国ー悪党の住む島(食人鬼の国)へ漂い着く。
羅刹鬼・夜叉(悪鬼)は、改心して仏法に帰依し、仏法の守護神・毘沙門天びしゃもんてん の家来になった。
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⑤
にゃくぶうにん りんとうひがい しょうかんぜおんぼさつ みょうしゃ ひしょしゅうとうじょう じんだんだんえ にとくげだつ
若復有人 臨当被害 称観世音菩薩 名者 彼所執刀杖 尋段々壊 而得解脱
若も し、復また 人有りて、まさに、被害を受ける時に、観世音菩薩の名を称するならば、
被害を加えようとする者の持つ刀杖は、あいついで、次々と段々に壊れて、その衆生は解脱を得る。
臨当被害ー 殺害されそうな時に。 刀杖ー 刀と槍。 而得解脱ー 害から解放される。
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⑥ にゃくさんぜんだいせんこくど まんちゅう やしゃらせつ よくらいのうにん
若三千大千国土 満中 夜叉羅刹 欲来脳人
もんご しょうかんぜおんぼさつみょうしゃ ぜしょあくき しょうふのうい あくげんじし きょうぶかがい
聞其 称観世音菩薩名者 是諸悪鬼 尚不能以 悪眼視之 況復加害
若も し、三千大千国土の中に満ちてる夜叉・羅刹(悪人)が、人に悪さをしに来て困り悩むときに、
観世音菩薩の名を、誰か一人でも唱える声を、その悪人が聞いたならば、諸々の悪鬼は、忽たちま ち
悪だくみの気持ちがすっかり消え、もう、悪眼を以て人を視ないので、害は加えてはこない。
三千大千国土ー 仏教の世界観でいう国土。 諸悪鬼ー 羅刹鬼らせつき や夜叉やしゃ のこと。
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⑦
せつぶうにん にゃくうざい にゃくむざい ちゅうかいかさ けんげごしん しょうかんぜおんぼさつみょうしゃ
設復有人 若有罪 若無罪 杻械枷鎖 検繫其身 称観世音菩薩名者
かいしつだんえ そくとくげだつ にゃくさんぜんだいせんこくど まんちゅうおんぞく ういちしょうしゅ しょうしょしょうにん
皆悉断壊 即得解脱 若三千大千国土 満中怨賊 有一商主 将諸商人
さいじじゅうほう きょうかけんろ ごちゅういちにん さぜしょうごん しょぜんなんし
斎持重宝 経過険路 其中一人 作是唱言 諸善男子
もつとく くふ にょうとうおうとういつしん しょうかんぜおんぼさつみょうごう
勿得恐怖 汝等応當一心 称名観世音菩薩名号
復また 人有りて、その人がもし、罪有る人も罪無き人も、その身が杻械・伽鎖され拘束されたとしても
観世音菩薩の名を称せば 皆 悉ことごと く断壞だんえ して、たちまち 解脱げだつ することを得ん。
一人の商主が 諸々の商人を率いて 重宝を斎持さいじ して 険しい路を通過するような時に、
若し、三千大千国土の中に満ちてる怨賊ー盗賊・山賊ーがあらわれて、身に危険が及ぶようなときでも、
その中に一人でも、観世音菩薩の名を唱える者あれば 諸々の善男子は皆、恐怖することは無い。
ゆえに、汝なんじ ら、当まさ に、一心に観世音菩薩の名号を唱言しょうごん すべし。
杻械伽鎖ー 鎖で身を繋がれる。 検繫其身ー 取り調べの為に拘束される。
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⑧ ぜぼさつ のいむい せおしゅじょう にょうとうにゃくしょうみょうしゃ おしおんぞく とうとくげだつ
是菩薩 能以無畏 施於衆生 汝等若称名者 於此怨賊 当得解脱
しゅしょうにんもん ぐほつしょうごん なむかんぜおんぼさつ しょうごみょうご そくとくげだつ
衆商人聞 倶発声言 南無観世音菩薩 称其名故 即得解脱
この菩薩は能よ く
商人たちが、南無観世音菩薩の御名みな を共に称すると、忽たちまち 解脱を得ることができる。
能以無畏ー 恐れがない。 即得解脱ー 即解脱できる(苦しみから解放される)
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⑨ むじんに かんぜおんぼさつまかさつ いじんしりき ぎぎにょぜ にゃくうしゅじょう
無尽意 観世音菩薩摩訶薩 威神之力 嶷嶷如是 若有衆生
たおいんよく じょうねんくぎょうかんぜおんぼさつ べんとくりよく にゃくたしんい じょうねんくぎょう
多於婬欲 常念恭敬観世音菩薩 便得離欲 若多瞋恚 常念恭敬
かんぜおんぼさつ べんとくりしん にゃくたぐち じょうねんくぎょう かんぜおんぼさつ べんとくりち
観世音菩薩 便得離瞋 若多愚癡 常念恭敬 観世音菩薩 便得離癡
無尽意菩薩よ、観世音菩薩の巍巍ぎぎ ー高く秀でるーたる摩訶薩な威神力は、かくの如し。
つまり、「三毒?」から離れられるのである。
婬欲 ー欲の貪りー が多い衆生でも、観世音菩薩を常に念じ、恭敬くぎょう せば、婬欲を離るる。
瞋恚 ー怒りー が多い衆生でも、観世音菩薩を常に念じ、恭敬せば、瞋恚しんい を離るる。
愚癡 ー無知ー が多い衆生でも、観世音菩薩を常に念じ、恭敬せば、愚癡ぐち を離るる。
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⑩
むじんに かんぜおんぼさつ うにょぜとう だいいじんりき たしょにょうやく ぜこしゅじょう じょうおうしんねん
無尽意 観世音菩薩 有如是等 大威神力 多所鐃益 是故衆生 常応心念
無尽意菩薩よ、観世音菩薩は、このように諸々の大威神力があるゆえ、鐃益にょうやく が多いのです。
是こ の故ゆえ に、衆生は常に心に、観世音菩薩の名を念ずるべし。
大威神力ー摩訶薩な神通力。 多所鐃益ー 衆生を救う益多いという意味で、鐃は豊か・益は為になること。
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⑪ にゃくうにょにん せつちよくぐなん らいはいくよう かんぜおんぼさつ べんしょう ふくとくちえしなん
有女人 設欲求男 礼拝供養 観世音菩薩 便生 福徳智慧之男
せつちょくぐにょ べんしょう たんしょううそうしにょ しゅくじきとくほん しゅにんあいきょう
設欲求女 便生 端正有相之女 宿植徳本 衆人愛嬌
むじんに かんぜおんぼさつ うにょぜりき にゃくうしゅじょう くぎょうらいはい かんぜおんぼさつ
無尽意 観世音菩薩 有如是力 若有衆生 恭敬礼拝 観世音菩薩
ふくふとうえん ぜこしゅじょう かいおうじゅじ かんぜおんぼさつみょうごう
福不唐捐 是故衆生 皆応受持 観世音菩薩名号
女人が男の子を欲して、観世音を礼拝・供養すると、福徳智慧ふくとくちえ の男の子が生まれる。
女の子を欲するならば、端正有相たんしょううそう の女の徳が具わり、愛敬のある女の子が生まれる。
無尽意よ、観世音菩薩は、このような威神力を具えているのです。
衆生が観世音菩薩を恭敬・礼拝すると、必ず、福不唐捐ふくふとうえん と成るのです。
是の故に衆生の皆は、観世音菩薩の名号を受持して、恭敬・礼拝を行うとよいのです。
福徳智慧之男ー 幸福・財産・智慧に恵まれる男の子。 端正有相之女ー 容姿端麗な美しい女の子。
衆人愛嬌ー 多くの人々から 愛される。 福不唐捐ー 福はむなしく捨てられないという意味、必ず幸せになる。
不唐捐ふとうえん ー 無駄にならない。 唐捐とうえん ー 無駄になるという。
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⑫ むじんに にゃくうにん じゅじ おくごうがしゃぼさつみょうじ ぶじんぎょう くようおんじき えぶく がぐ
無尽意 若有人 受持六十二億恒河沙菩薩名字 復尽形 供養飲食 衣服 臥具
いやくおにょい うんが ぜぜんなんし ぜんにょにん くどくたふ むじんにごん じんた せそん
医薬於汝意 云何 是善男子 善女人 功徳多不 無尽意言 甚多 世尊
ぶつごん にゃくぶうにん じゅじかんぜおんぼさつみょうごう ないしいちじらいはいくよう
仏言 若復有人 受持観世音菩薩名号 乃至一時礼拝供養
ぜににんふく しょうとうむい おひゃくせんまんのくごう ふかぐうじん
是二人福 正等無異 於百千萬億劫 不可窮尽
無尽意むじんに よ、若し人有りて、その人が、六十二億恒河沙ほどの多くの菩薩の名字を受持し
形を尽くすまで、飲食・衣服・臥具・医薬を提供して、供養することを 汝なんじ はどう思うだろうか?
又、供養するこの善男子・善女人の功徳は、多いだろうか否いな か。 どう思うのか。
無尽意菩薩が答えた、世尊・とても多いです。
仏(世尊)が言う。 若し、復また 人ありて、観世音菩薩の名号を受持する人や、あるいは、
一時でも礼拝し供養する人あらば、この二人の福は、正等(同じ)にして同じなのである。
この福は、百千萬億劫過ぎても、窮め尽きることは無いのです、つまり、この福は消えません。
復尽形ー 形を尽くすまで、つまり寿命が尽きるまで。 正等無異ー 等しく同じである。
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⑬ むじんに じゅじかんぜおんぼさつみょうごう とくにょぜむりょうむへん ふくとくしり むじんにぼさつ びゃくぶつごん
無尽意 受持観世音菩薩名号 得如是無量無辺 福徳之利 無尽意菩薩 白仏言
せそん かんぜおんぼさつ うんがゆうししゃばせかい うんがにいしゅじょうせっぽう ほうべんしりき ごじうんが
世尊 観世音菩薩 云何遊此娑婆世界 云何而為衆生説法 方便之力 其事云何
無尽意よ、観世音菩薩の名号を受持すると、かくの如き無量無辺の福徳の利が得られるのです。
世尊、観世音菩薩はいかに此の娑婆世界に遊び、いかにして、衆生の為に法を説きたまうのか?
又、その「方便の力」とは、どのようなものでしょうか?と、教えを請うた。
云何遊此娑婆世界ー 観世音菩薩は、この娑婆世界で自由な境地を得て衆生を教化して活躍している。
方便之力ー 良い方法を用いて衆生を導く力、近づく・到達する手段。 「法華経/方便品」
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⑭ ぶつごうむじんにぼさつ ぜんなんし にゃくうこくどしゅじょう おういぶつしんとくどしゃ
仏告無尽意菩薩 善男子 若有国土衆生 応以仏身得度者
かんぜおんぼさつ そくげんぶつしん にいせっぽう
観世音菩薩 即現仏身 而為説法
仏(世尊)が無尽意菩薩に告げた。 善男子よ、若し国土に衆生に対し、仏を以て得度すべき者には、
観世音菩薩は、即ち・仏の姿を現わして・衆生の為に法を説くのです。
善男子ぜんなんし ー 仏法の男性信者。 女性信者は、善女人ぜんにょにん 。
得度とくど ー 迷いの世界から悟りの世界へ渡ること。 即現仏身ー 仏の姿(身)で現われること。
観世音菩薩は、宇宙の本仏なのか
ー観世音菩薩は、仏を現じて法を説く‥‥ーと、経文にあるのだが、これが疑問 ‥‥‥‥‥ボサツマン
仏は、菩薩の姿を現じるのは可能でしょうが、観音さまは菩薩です、仏(如来)ではありません。
つまり、菩薩が仏の姿を現じることは、あり得ないはず……と ボサツマンは思うのですが?
あるいは、仏の境地を得た観音菩薩が、衆生の教化のために、あえて、菩薩の身のままでいるのかも?
だが、経文には、応以仏身得度者、ー観世音菩薩は仏ほとけ の姿を現じて法を説くーと、書いてある。
‥‥‥ということはやはり‥‥‥
ー観世音菩薩の本体は宇宙の本仏ーであるに、違いありません。 ………ボサツマンはそう信じている
宇宙の本仏が、「己身他身/己事佗事」(種々に姿を変えて)、衆生を教化しているのです。
見宝塔品(2)で、宇宙の本仏がその身を無数に分け、十方世界で法を説く‥‥とある。 「世尊ここ重要と説く」
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⑮ おういびゃくしぶつしんとくどしゃ そくげんびゃくしぶつしん にいせっぽう
応以辟支仏身得度者 即現辟支仏身 而為説法
おういしょうもんしんとくどしゃ そくげんしょうもんしん にいせっぽう
応以声聞身得度者 即現声聞身 而為説法
観世音菩薩は
辟支仏びゃくしぶつ の身を以て得度すべき者には、辟支仏の身を現わして、その者の為に法を説く。
声聞しょうもん の身を以て得度すべき者には 声聞の身を現わして、その者の為に法を説く。
辟支仏 ー 仏から教えを受けず、自分の体験で真理を悟る者で、縁覚えんかく とも言う。
声聞 ー 仏の説法を聞いて悟る者で、「四諦の法門」の修行で、「阿羅漢果」あらかんが を得る者。
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⑯ おういぼんのうしんとくどしゃ そくげんぼんのうしん にいせっぽう
応以梵王身得度者 即現梵王身 而為説法
おういたいしゃくしんとくどしゃ そくげんたいしゃくしん にいせっぽう
応以帝釈身得度者 即現帝釈身 而為説法
観世音菩薩は
梵王ぼんのう の身を以て、得度すべき者には、即、梵王の身を現じ、その者の為に法を説く。
帝釈天たいしゃくてん の身を以て、得度すべき者には、即、帝釈天の身を現じ、その者の為に法を説く。
梵王ぼんのう ー 仏教の守護神で、天界の上方を守護する王で、梵天ぼんてん ともいう。
帝釈天たいしゃくてん ー 仏教の守護神・軍神で、四天王してんのう を従え東方を守る。
「12天」:「梵天王」:「梵天/釈尊に懇願」:「四天王」:「素行不良な帝釈天」
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⑰ おういじざいてんしんとくどしゃ そくげんじざいてんしん にいせっぽう
応以自在天身得度者 即現自在天身 而為説法
おういだいじざいてんしんとくどしゃ そくげんだいじざいてんしん にいせっぽう
応以大自在天身得度者 即現大自在天身 而為説法
観世音菩薩は
自在天の身を以て、 得度すべき者には 自在天の身を現じて、 その者の為に法を説く。
大自在天の身を以て、 得度すべき者には 大自在天の身を現じて、その者の為に法を説く。
自在天 ー 宇宙を支配する神。 大自在天 ー 大千世界の主天神、白牛に乗っている。
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⑱ おういてんだいしょうぐんしんとくどしゃ そくげんてんだいしょうぐんしん にいせっぽう
応以天大将軍身得度者 即現天大将軍身 而為説法
おういびしゃもんしんとくどしゃ そくげんびしゃもんしん にいせっぽう
応以毘沙門身得度者 即現毘沙門身 而為説法
おういしょうおうしんとくどしゃ そくげんしょうおうしん にいせっぽう
応以小王身得度者 即現小王身 而為説法
観世音菩薩は
天大将軍の身を以て、 得度すべき者には 即、天大将軍の身を現じて、その者に法を説く。
毘沙門の身を以て、 得度すべき者には 即、毘沙門の身を現じて、その者に法を説く。
小王の身を以て、 得度すべき者には 即、小王身を現じて、その者に法を説く。
毘沙門天びしゃもんてん ー七福神のひとつ、仏教の守護神、夜叉・羅刹を従え北方を守り多聞天ともいう。
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⑲ おういちょうじゃしんとくどしゃ そくげんちょうじゃしん にいせっぽう
応以長者身得度者 即現長者身 而為説法
おういこじしんとくどしゃ そくげんこじしん にいせっぽう
応以居士身得度者 即現居士身 而為説法
おういさいかんしんとくどしゃ そくげんさいかんしん にいせっぽう
応以宰官身得度者 即現宰官身 而為説法
観世音菩薩は
長者ー 富貴な財産家ー の身を以て、得度すべき者には、即、長者の身を現じて、その者に法を説く。
居士ー 男の仏の弟子ー の身を以て、得度すべき者には、即、居士の身を現じて、その者に法を説く。
宰官ー 役人ー の身を以て、得度すべき者には、即、宰官の身を現じて、その者に法を説く。
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⑳ おういばらもんしんとくどしゃ そくげんばらもんしん にいせっぽう
応以婆羅門身得度者 即現婆羅門身 而為説法
おうい びく びくに うばそく うばい しんとくどしゃ
応以 比丘 比丘尼 優婆塞 優婆夷 身得度者
そくげん びく びくに うばそく うばいしん にいせっぽう
即現 比丘 比丘尼 優婆塞 優婆夷身 而為説法
観世音菩薩は
婆羅門の身を以て、得度すべき者には、即、婆羅門の身を現じて、その者に法を説く。
比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の身を以て、得度すべき者には、その身を現じ、法を説く。
婆羅門ーインドの社会種族・「カースト制度」の最高位。 比丘ー成人した出家の男子。 比丘尼ー成人した出家の女子。
優婆塞うばそく ー 在家の男性信者。 優婆夷うばい ー 在家の女性信者。
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(21) おうい ちょうじゃ こじ さいかん ばらもん ぶにょしんとくどしゃ そくげんぶにょしん にいせっぽう
応以 長者 居士 宰官 婆羅門 婦女身得度者 即現婦女身 而為説法
おういどうなんどうにょ しんとくどしゃ そくげんどうなんどうにょしん にいせっぽう
応以童男童女 身得度者 即現童男童女身 而為説法
観世音菩薩は、長者・居士・宰官・婆羅門の婦女の身を以て得度すべき者には、即、婦女の身を現じて法を説き
童男・童女の身を以て、得度すべき者には、即ち童男・童女の身を現じて、その者の為に法を説く。
婦女ぶにょ ー 婦人や女の子。 童男・童女 ー 少年・少女。
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(22)
おうい てんりゅう やしゃ けんだっぱ あしゅら かるら きんなら まごらか にんぴにんとうしんとくどしゃ
応以 天竜 夜叉 乾闥婆 阿修羅 迦楼羅 緊那羅 摩睺羅伽 人非人等身得度者
そくかいげんし にいせっぽう おういしゅうこんごうしんとくどしゃ そくげんしゅうこんごうしん にいせっぽう
即皆現之 而為説法 応以執金剛神得度者 即現執金剛神 而為説法
観世音菩薩は 「天上界」:「人間界」:「修羅界」:「畜生界」:「餓鬼界」:「地獄界」
天龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽など、姿は人に似てるが人ではない人非人等の身を以て
得度すべき者には、即、皆、その者の身を現わし その者に法を説く。
執金剛神を以て、得度すべき者には、即、執金剛神を現じて、その者に法を説く。
天竜ー龍神。 夜叉ー羅刹鬼と共に仏法に帰依し、毘沙門天の従者となる。空中を飛ぶ。 乾闥婆けんだつぱ ー音楽師。
阿修羅ー闘争神。 迦楼羅かるらー金鳷鳥こんじちょう 美しい鳥の王。 緊那羅きんならー歌神・音楽天。 摩睺羅伽まごらが ー蛇神。
執金剛神しゅうこんごうしん ー 金剛杖を持ち、諸仏・諸天を警護する二体一対の神で、通称:仁王さま。
八部衆はちぶしゅう ー 仏法を守護する八神で、天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽の八部衆。
この八神は仏教以前、古代インドの鬼神・戦闘神・音楽神・動物神などです。
後に仏教に帰依し、仏の弟子となって護法を誓い、善神となった。
八部衆とは、八つの種族の意味で、経文では、人非人にんぴにん と表現している。
「阿修羅の戦い」 ある時、阿修羅は、格上の帝釈天に戦いを挑みました。 しかし、やっぱり格下は勝てません。
負けても負けても何回も挑戦したが、全戦全敗でした。 ついに阿修羅は、天界を追放された。
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(23)
むじんにぜかんぜおんぼさつ じょうじゅにょぜくどく いしゅしゅぎょう ゆうしょこくど どだつしゅじょう ぜこにょうとう
無尽意是観世音菩薩 成就如是功徳 以種種形 遊諸国土 度脱衆生 是故汝等
おうとういっしん くようかんぜおんぼさつ ぜかんぜおんぼさまかさつ おうふいきゅうなんしちゅう のうせむい
応当一心 供養観世音菩薩 是観世音菩薩摩訶薩 於怖畏急難之中 能施無畏
ぜこししゃばせかい かいごうし いせむいしゃ むじんにぼさつ びゃくぶつごん
是故此娑婆世界 皆号之 為施無畏者 無尽意菩薩 白仏言
ー世尊が無尽意菩薩に説くー
無尽意菩薩よ、この観世音菩薩は、かくの如き功徳を成就し、種々の形を以て諸々の国土に遊行し、
衆生を教化・度脱するのである。 この故に汝なんじ 当まさ に、一心に観世音菩薩を供養しなさい。
観世音菩薩摩訶薩は、怖畏急難ふいきゅうなん の中にも、能よ く無畏むい を施すのである。
この故に娑婆世界では皆、観世音菩薩を、施無畏者せむいしゃ と、声を大きくして呼んでいる。
ー世尊の話を聞いた後ー 無尽意菩薩は、仏に向かって申す。
怖畏急難ふいきゅうなん ー 急な災難に怖れ、おののく。 白仏言ー 世尊(仏)に申しあげる。
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(24)
せそん がこんとうくようかんぜおんぼさつ そくげきょうしゅ ほうじゅようらく げじきひゃくせんりょうごん にいよし
世尊 我今供養観世音菩薩 即解頸衆 宝珠瓔珞 価直百千両金 而為与之
さぜごん にんしゃ じゅしほっせ ちんぼうようらく じかんぜおんぼさつ ふこうじゅし
作是言 仁者 受此法施 珍宝瓔珞 時観世音菩薩 不肯受之
むじんに ぶびゃくかんぜおんぼさつごん にんしゃ みんがとうこう じゅしようらく
無尽意 復白観世音菩薩言 仁者 愍我等故 受此瓔珞
無尽意菩薩は仏に向かい ー世尊・我今まさに観世音菩薩を供養いたしますー と申しあげた。
即、首につけていた百千両金の価値がある、衆宝珠の瓔珞ようらく をはずし、観世音菩薩に贈り申した。
仁者(観世音菩薩)へ申し上げます。どうぞ、この法施の珍宝の瓔珞ようらく を、お受けとりください。
だがその時、観世音菩薩は、受けとりませんでした。 すると、無尽意菩薩が再度ふたたび
観世音菩薩に向かいー我等をあわれむが故に、此の瓔珞をお受けとりくださいー と申し上げた。
仁者ー 観音菩薩への尊称語。 衆宝珠の瓔珞ー たくさんの宝玉ほうぎょく がついている首飾り。
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(25) にじ ぶつごう かんぜおんぼさつ とうみんしむじんにぼさつ ぎゅうししゅ てんりゅう やしゃ けんだっぱ
爾時 仏告 観世音菩薩 当愍此無尽意菩薩 及四衆 天竜 夜叉 乾闥婆
あしゅら かるら きんなら まごらが にんぴにんとうこ じゅぜようらく
阿修羅 迦楼羅 緊那羅 摩睺羅伽 人非人等故 受是瓔珞
そくじかんぜおんぼさつ みんしょししゅ ぎゅうお てんりゅう にんぴにんとう
即時観世音菩薩 愍諸四衆 及於 天竜 非人等
この時、仏(世尊)は、観世音菩薩に向かい
四衆及び、天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽・人非人等を、愍あわれ み
無尽意菩薩の差し出した瓔珞を受けとるように、と勧め告げた。
すると即、観世音菩薩諸は、四衆及び天・龍・人非人等を愍あわれ んで、その瓔珞を受けとられた。
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(26) じゅごようらく ぶんさにぶん いちぶんぶしゃかむにぶつ いちぶんぶたほうぶっとう むじんに
受其瓔珞 分作二分 一分奉釈迦牟尼仏 一分奉多宝仏塔 無尽意
かんぜおんぼさつ うにょぜ じざいじんりき ゆうおしゃばせかい にじむじんにぼさつ いげもんわっ
観世音菩薩 有如是 自在神力 遊於娑婆世界 爾時無尽意菩薩 以偈問曰
観世音菩薩は、受けとった瓔珞を二分に分けた。ひとつは、釈迦牟尼仏しゃかむにぶつ に、
ひとつは、「多宝如来」 たほうにょらい (多宝仏塔)に奉りました。
無尽意よ 観世音菩薩は、このような自在神力を持って 娑婆世界を遊行していているのです。
観世音菩薩は、自由自在な威神力を発揮して、法を説き、衆生を救済されておるのです。
その時に、無尽意菩薩は、偈(詩)を述べました。
多宝仏ー 釈尊の説法の時、現われ法華経の正しいことを証明する仏。 以偈問曰いげもんわ ー 詩の形式で述べる。
☆この節のポイント
無尽意菩薩は、観世音菩薩を供養する心で、首にかけていた瓔珞を差しあげたが、観世音菩薩は、受け取らなかった。
再三、勧められましたが、断りつづけていたが、釈迦牟尼仏が、受け取るようにすすめたので、瓔珞を受け取りました。
すると、観世音菩薩は、その瓔珞を、二つに分けて、釈迦牟尼仏と、多宝如来に奉りました。
意味:
自分(観世音菩薩)が神通力を得たのは、真理を教えた釈迦牟尼仏と、真理である多宝如来のお陰であることを示した。
後半につづく