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2005年9月24日

今日も主には会えなかった。
でも・・・もう、いいかな・・・・


この沢を見つけたのは、3年前の今頃だった。いや、沢の存在自体は地図で知っていたが、本流出会いから遡っていくだけの根性が無くて諦めていただけの事である。ひょんな事から沢の上流部への秘密の入り口を見つけたのである。そして、初めて見る自然そのままの渓の景色、そして、ひっそりとした深い淵で見かけた尺二寸はあろうかという沢の主にオレは魅了され、取り憑かれた様にココに通った。
3年かぁ・・・ぼちぼち卒業してもいいかな?主には結局会えなかったけど、オレを充分に成長させてくれた。渓とのつき合い方、岩魚とのつき合い方もココで教えてもらった様なものだ。



沢の歩き方、攻め方もずいぶんと教えてもらった。ひとつ、ひとつ、難所をクリアする度に、なんとも言えぬ達成感で幸福な気持ちになった。
もちろん、難所と云っても、オレにとっての難所で、渓歩きに長けた人達なら、なんという所では無いのだが。所詮、小さな沢である。いくつかあるゴルジュなども、深くてもせいぜい胸までだ。それでも最初は怖くて、もちろん、ヘツッて行けるほどの技術もなかったから、怖々、胸まで浸かりながら、壁伝いに越していた。
何度も訪れていると、その恐怖心も和らぎ、ヘツリに挑戦する様になる。ダメなら途中でドボンする。そうやって遊んでいるウチになんとかヘツれる様になる。今度はもっと、カッコ良くヘツリたい。なんて、思うようになる。ココで腰をこう捻って移動すれば?そうやってるウチに、自分で云うのも変だが、器用にヘツリが出きるようになった。もちろん、これは去年のボードクライミングの経験がとても役に立っていると思う。



岩魚の習性もずいぶんと勉強になった。春先に居た場所には夏には居ない。春も夏も居なかった場所に秋には居る。小さな沢だが、岩魚達は季節に応じて移動している。いや、釣りをやってる人なら当たり前の常識だろうが、一年を通じて一つの沢に通い、実際に経験するとなるほどと身に染まる生きた知識となる。下手くそでも釣れる源流の岩魚釣り。それでも、下手くそには、下手くそなりの釣果しかない。餌の流し方、季節によるポイントの違い、水量によるポイントの違い、色々勉強させて貰った。



もちろん、人様に教えて貰うのも良いが、ある程度、基礎知識を身に付けたなら、じっくりと自分で実践し、経験するのが一番、合ってる気がする。歩みはのろいが、独りで迷い、とまどい、考えながら、確実に自分の体に染みつけていく。そうやって皆が1年で覚えることを3年かけて覚えてきた。これは、不器用なやり方だろうか?非効率的なやり方だろうか?そうかも知れない。でも、独りで切り開いた時の感動は、人様に、「さぁ、これから感動の場面ですよ〜(^o^)」って、ツアーで経験したのとは、比較にはならない。まっ、同じ考えを持つ者と一緒に遊べれば、感動も二倍三倍なのだろうが(苦笑)

どうしても解決できないときは、教えを請えば良い。教えて貰っても、鵜呑みにせず、逆の事もやってみる。結局は教えて貰った通りだったりするのだが(苦笑)。また、散々苦労して独自で覚えた技なども、達人にかかれば、実はもっと簡単な方法があったりする。そんなとき、あ〜やっぱりオレは未熟モノだなと、思う。でも、だからといって、一から十まで、人様の教えを頂くのは好きじゃない。渓の楽しみ方は人それぞれ、自分の器に合った楽しみ方でいい。自分の器以上の事をする必要もない。だから、人様のコピーをする気にもならない。オレはオレなんだから。

もう岩魚も遡ってこない奥深い渓の小さなナメ滝の脇に腰を下ろし、一服しながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。

「沢の主よ、アンタにゃとうとう逢えなかったが、ずいぶんと勉強させてもらった。ありがとよ」

時計を見ると、2時だった。今は陽が落ちるのが早い。だいぶ上まで来てしまったので、帰りは2時間はかかるだろう。名残惜しいが、渓を降りる事にした。下るオレをダイモンジ草が見送ってくれた。1時間半歩いて、やっと最後の滝前に辿りついた。かなり足が疲れていたので、一服する事にした。沢の水をすくって喉を潤していると、ふと、奇妙な石が目に付いた。手に取ってみると方解石の結晶だ。結晶としては小さいが、紫の結晶も入ってる。

この辺りは鉱山で有名だったところだ。以前にも方解石は見つけたことがある。ただ、この石はちょっと変わっていた。キラキラと輝く小さなものがくっついている。

ん?これは?もしかして?




金?間違いなく金だ!方解石の結晶群には、金銀銅の貴金属が含まれるというのを聞いたことがある。

きっと、主様からのご褒美だ!(いつから、「様」になった?)

オレが追い求めてきた沢の主は、きっとこの山の主様の化身だったのだな。未熟なオレを育てる為に姿を現さなかったのだろう。オレが3年間通い続け、少しばかり成長し、ココを卒業しても良いとの証に、この石を授けてくださったに違いない。

大事に石をザックに仕舞い、姿見えぬ山の主様に向かって、深々と礼をした。

(完)

(※ 誤解無き様記しますが、今まで沢山の方にお世話になりました。ほんのちょっと前まで、よちよち歩きの私を、「安心、安全、感動ツアー」に沢山連れて行ってもらったおかげで、今の私があります。今も釣りの腕は下手くそ、沢歩きは、沢登りの初心者のオチこぼれにすら、なれない程度です。これからも、皆様のご指導を賜りながら、岩國の渓遊びをいっそう充実したものにしたいと思います。長らく、「沢の主」を見ていただきありがとうございました。来年は新しいシリーズを始めたいと思います、って全然あてがありませんが(自爆))