動物にも権利主体としての法人格を認める殺処分ゼロの国、日本

 動物との真の共生を実現するための、より良い未来に向けたビジョンの提言です。以下の3本の基本的な柱によって構成されています。

動物法人の制度

 日本の法律においては、動物は、あくまでも物と見なされており、人間あるいは法人の権利の対象(客体)にはなっても、権利を有する立場(権利主体)とはなりえない存在として明確に定められています。そのような現状に対し、本来、動物には人間によって不必要に殺されたり虐待されたりすることなく、寿命をまっとうすべく生きる権利があるとする考え方から、動物に権利主体としての法人格を与え、動物にもあってしかるべき権利を認めようとする法技術が動物法人の考え方です(動物法人に関する詳しい内容については、一橋大学法学部教授、青木人志氏の著書をご参照ください)。さらに、動物自身が虐待行為に対する差し止め請求や損害賠償請求を行ったりすることはできませんから、動物法人の意義を実際に実現するためには、動物法人の立法化に加えて、動物に代わって権利の行使を行う機関の制度化が必要になり、これには一定の要件を満たした動物保護団体があたるということが考えられます。このように、命ある動物の基本的権利を法的に保護する動物法人の制度を実現するためには、大きく次のような活動が必要となります。


 動物が物として扱われる限り、動物愛護管理法などの法律による動物福祉の向上には根本的な限界があります。現在の法律で言えることは、結局のところ、「動物という物を大切に扱いましょう」というような趣旨に止まり、物である動物に何の権利も認められないという前提がある限り、動物愛護管理法に謳う動物愛護の精神の実現は絵に描いた餅に過ぎないと言わざるを得ません。このような法律の枠組みの中では、動物の愛護や福祉の精神が叫ばれるなか、法律の網を潜り抜ける(あるいは罰則を適用する執行力が十分に伴わない)多くのケースを根本的に解決することは難しいでしょう。このような意味で、動物法人の法制化による動物の基本的権利の保護といったことについて、社会的な議論を巻き起こすことが必要であると考えています。

殺処分ゼロのオペレーションモデル

 コンパニオン・アニマルと人間の共生にとって一番望ましい形は、飼い主の家族の一員として一緒に生活することに他なりません。しかし、心ない人間の行為の結果として、多くの犬と猫が行政の動物愛護センターに収容され、既定の猶予期間内に譲渡先が見つからない場合に殺処分が行われています。このような現状を打破するためには、最終的に行政の動物愛護センターを殺処分ゼロの譲渡センターに転換することが求められますが、その仕組みが永続的に機能していくためには、譲渡件数を増やすことと同時に、動物愛護センターに持ち込まれる頭数を減らすことが必要です。殺処分ゼロを実現すること、すなわち行政の動物愛護センターを殺処分ゼロの譲渡センターに転換するためには、次のような活動が必要です。


命を尊重し慈しむ人間の心

 仮に、人間による無責任な動物の飼育放棄や遺棄といった心ない行為がなくなったとしたら、その時から動物の殺処分問題は解決することになります。つまり突き詰めれば、動物の殺処分問題は人間の心の問題だと言えます。当サイトの序論で考えたように、地球環境が育んだ多様な生命あふれるこの世界が、宇宙の摂理に基づき引き続き成長・発展していくためには、人間がもっと命を尊び慈しむ存在へと進化していくことが必要です。そのためには、命を尊び慈しむ心がもっともっと増えて、動物に対しても、命ある存在として、もっとやさしく思いやりのある行動を取ることができる成熟した社会へと進展してくことが必要です。そういった意味において、命に対する我々の心のあり様は、動物とのかかわり方ということにおいてだけでなく、広く日本社会の先行きをも左右する重要な問題として認識し、次のような観点からの教育が必要であると考えています。