.    '12年11月26日

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まもなく繁殖期

 日毎に寒々しさが増す烏川。 その‘カラス川’の名に縁のある カワガラスが、川面を盛んに行き来しています。  もっとも、カラスといってもカラス科ではなく、カワガラス科カワガラス属の野鳥。チョコレート色のこの鳥は、園内では年間を通して最も頻繁に観察できる一種です。 ところで、園内で繁殖する野鳥の多くは、春から初夏にかけて巣をつくり、卵を生み子育てします。  しかし、カワガラスは間もなく繁殖期が始まります。雪降りしきる中、はじめは巣材を、のちにエサを運び入れる姿を毎年見かけます。
 今年はこんなことがありました。春まだ浅い頃、園内にいたアマチュアカメラマンの『カワガラスのヒナが流されたっ!』との叫び声。 親が持ってきたエサをねだって岩の上に出たところを濁流に流されたとのこと。未だヨチイヨチ歩きのヒナだけに、とても助からないと皆が思った30分後… もといた場所に戻っていました。





          以前の話題は → こちら


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匠の技

 一方こちらは、カラス科のカケス[下]とカラス[上](ハシブトガラスあるいはハシボソガラス)の巣。 同じカラス科であるためなのか、両者はよく似た巣を作ります。 外側はしっかりとした骨組みとするために太い枝を使い、内側になるにつれて細い枝を編み込み、卵を産みヒナを育てる産座(さんざ)は、 柔らかな樹皮や動物の毛を敷きつめてあります。これをくちばしだけで作り上げたことに、驚くとともに感動をおぼえます。 レクチャールームにはいくつかの巣がありますが、その多くはシンプルなもの。 (なかには、コサメビタキサンショウクイのように、巣の外側に地衣類を貼り付けたこったものもありますが)   ところで、このカケスの巣は最近になって持ち込まれたもの。新しい園路開通を前に、市民会議会員による支障木伐採の際、伐った樹にあったものです。 (なお、この巣は今年使われたものであり、再び使うことはありません)





  巣の展示については → こちら(pdf) に従っています


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水もしたたる

 一ヶ月ほど前、園路工事のためにやむなく写真のサワグルミの枝を数本切りました。 最近になり、その一本の切り痕(矢印)から盛んに水が滴っています。 春先、水上げが多くなる頃に樹の枝を切ると、このように樹液が滴ることは珍しくありません。 (⇒ こちら
 しかし、冬を前に樹木は細胞内部の水を減らして糖度を高め、凍結を防ぐ準備をします。本来ならば今頃は、あまり水を上げない時期です。現にこの樹も、他の枝の切り痕からの水の滲出はありません。  なぜこの枝だけ、このように水が出ているのでしょう?  これがマツのような樹種であれば、切り口から脂(やに)を出して菌類や細菌、害虫の侵入を防ぎます。  一方、広葉樹はそのような対抗手段は持たず、他の方法で防御します。 ところが、最近になり当園地の周辺のアカマツ は、傷つけても脂が出ないものがあります。 それが[マツ材線虫病]に罹った樹です。 





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