46章 倭建の命 東征記
尾張と相模を平定した倭建は 走り水の海 はしりみずのうみー浦賀水道ー を渡ろうとしていた。
この時 后・弟橘比売おとたちばなひめ が お傍そば に同行していました。
走り水の海は 潮の流れが速い難航海路です。この日も渦のうねりが早くて 倭建の船は立ち往生のまま。
波はさらに逆さか 巻いて高くなり 船の前に立ちはだかり 船は転覆てんぷく 寸前です。
このままでは 全員が海のモクズとなりそうです。だが 倭建の命の全力をもっても 無理な状態です。
その時 后・弟橘比売が 海の神に命を差し出した。
「倭建さま これは 海の神のお怒りなのです。 海の神は きっと 私を求めているのでしょう。
海の神の御霊鎮めみたましずめ のため 私が海の神のもとへ参りましょう。必ずや海の波も鎮まるでしょう。
倭建さま あなたさまは 天皇から受けた使命を完遂して 必ず 都へお戻りくださいませ」と 言って
自ら 海の上に敷かれた 八枚の菅畳すがたたみ 皮畳 絁畳きぬたたみ の上に坐り 最後の