観普賢菩薩行法経 (8)
世尊
「衆生が 諸仏現前三昧 しょぶつげんぜんさんまい ー仏がいつも自分といる確信の境地ーを得ると
東方の大日如来だいにちにょらい 阿閦仏あしゅくぶつ をはじめ 十方の諸仏とその国土を見ることがあります。
その時 その衆生の夢の中に 象の頭の上に坐した非常に強い金剛力士こんごうりきし が現われて
力士が衆生に向かって 手に持つ真理から離れた誤った考えを打ち砕く武器である金剛の杖を
衆生の「六根」の穢けがれ に突きつけてきます。
この六根の穢けがれ を打ち砕く夢を見た衆生は 懺悔さんげ の段階がより進行した証拠であります。
つまり 衆生の夢の中で 普賢菩薩が 六根清浄の懺悔の法を説く‥‥ということは
普賢菩薩が その衆生に 自らの心で懺悔し身も心も清められていく自覚を 強く得て欲しいからなのです。
そして 衆生が 諸仏現前三昧 しょぶつげんぜんさんまい を保ち 普賢菩薩の教えー法ーを実行していくならば
六根の煩悩の曇りが次第しだい にぬぐい去られていき やがて
物事を正しく見ること/物事を正しく聞くこと/の二つを完璧に行なえる衆生に成長していくのです。
このことを ー心を是の法に純じゅん となり法と相応そうおう せんーと表現します。
意味は 諸仏現前三昧を得た衆生は 身も心も喜びに満ち溢れ 心が大乗の教えに益々打ち込み
真に清浄な心となった結果 心がどう動いても 教えにかなう動きになる という意味です。
つまり この衆生の悪心 あくしん はすべて消滅し 善良ぜんりょう な心だけをもった人間になったのです。
善良な心の衆生の頭のなかは 常に 善の行いだけを考えているのです。
ここまで成長した衆生は 「旋陀羅尼」せんだらに ー周囲を感化する徳の力ーも
仏と共にある自覚である 諸仏現前三昧しょぶつげんぜんさんまい の力も 益々 増幅していくのです。
「諸仏現前三昧」:「三昧神通力」
ここまで成長した衆生に 諸仏は手を差し伸べ 衆生の頭を撫でて 次のことを説くのです。
『大乗の教えを心に守って 身に行い 諸仏の徳を具えようと志し 努力する汝は 立派であるぞ。
諸仏も皆 過去世にて菩提心を発したときは 汝と同様であったのだ。 今の心をしっかりと認識し保ちつづけなさい。
諸仏も 長い前世にて 大乗の教えを実行して 現在の清浄正遍知 しょうじょうしょうへんち の身を得たのである。
汝も さらに修行を務め励まねばならない けっして怠ることなかれ
大乗の教えは 十方三世の諸仏にとって 最も大切な宝であり 諸々の如来は皆 この教えから生まれたのである。
この大乗の教えを持たも つ衆生は 仏身ぶっしん を自分の身とする衆生であり 仏の身代わりとして
仏事ぶつじ (仏のワザ)を行じる衆生なのである。
その衆生は 諸仏・世尊の衣ころも によって守られており 諸仏・如来の真実の教えの子なのである。
汝 怠らず 大乗の教えを行じ 伸びゆく法の種を育てなさい まもなく 汝は東方の諸仏を見るであろう』
このような諸仏の御声みこえ が 衆生の心の中に響き渡ったのち 衆生は まもなく
あらゆる仏の美しい世界が顕われ出てくるのを 目ま の当たりに 見ることでしょう。
次に衆生は 仏の教えと仏が宝樹の教えを説くことは 同じく尊いということを、 さらに深く確信するでしょう。
仏の教えが 娑婆世界に普あまね くゆきわたれば この世のすべての人々も 社会も 世界全体も向上していき
この娑婆世界にー浄土の世界ーを実現できるという願いが やがて 確信の自覚となっていくことでしょう。
それでも その衆生は心の奥底から満足できていません。 なぜか? 次に これを説きましょう」。 (9)へ