観普賢菩薩行法経 (13)
世尊
「大衆の皆さん 眼根初境界の相 げんこんしょきょうがいのそう を得た衆生でも やはり 次にも
心を込めて大乗経典を読誦どくじゅ し 朝 昼 夜に仏の前に合掌し礼拝し 未熟な心を偽いつわ りなくさらけ出し
次の言葉で懺悔しなければなりません。
釈迦牟尼仏の教えは 最も尊いと理解できたけれど 未だ 多宝仏塔たほうぶっとう を 見奉るまでに到りません。
釈迦牟尼仏の説く教えが 宇宙の絶対の真理であるということが 自分は まだ完全に 理解できていません。
やはり 自分の心はまだ 完全に清浄になっていません と。
この懺悔の修行を 七日 つづけた衆生の心は さらに清浄になるのです。
すると まもなく 仏の功徳が与わって 多宝仏塔 たほうぶっとう のお姿を 見奉ることができるのです。
多宝仏塔のお姿を 見奉ることができた その衆生は
「釈迦牟尼仏の教えは絶対の真理」であることを 心にハッキリと確信できる境地を得た衆生なのです。
この絶対真理である多宝如来は 普現色身三昧ふげんしきしんざんまい を 得ています。
普現色身三昧とは どこでも 姿を普あまね く顕示けんじ できる境地ですので
衆生の心が多宝仏の心に至るならば 多宝仏のお姿を見奉ることができるのです。 これは真実です。
この時 多宝仏が大音声だいおんじょう にて 衆生をこの高い境地へ教え導いた尊大な釈迦牟尼仏のことを
賛嘆されている場面を 衆生は ハッキリと見奉ることができるのです。
すると 多宝仏は 懺悔行さんげぎょう を修行し この境地へ到達し多宝仏の心に通じた衆生に対して
善哉・善哉と お褒めの言葉を仰るのです。 「多宝如来」:「多宝如来の目的」:「多宝如来と七宝塔」
この境地を得て 多宝仏のお褒めの言葉を頂戴し ありがたさに感激・感動している衆生は
増上慢の心がスッカリ消滅した衆生なので 謙虚な心は変わりません。
そして また 普賢菩薩を心に念じ
ー普賢菩薩よ まだ 自分が悔い改めねばならないところを 教えてくださいーと 教えを願うと良いのです。
すると 普賢菩薩は次に 耳根の罪 にこんのつみ の懺悔を 勧めてきます。
汝は 長い間 耳根の罪も 重ねてきたのである。 そして今も 心の迷いがある故 外からの声に振り回されているのだ。
自分を過大評価してくれる 快こころよ い声を聞けば喜び その言葉をまるのみして 心が執着してしまうのだ。
反面 不快な声を聞けば 108の煩悩が燃えあがり 人に敵対する心や・復讐の心が メラメラと起きるのである。
また 汝には 人の言うことを すぐ悪い方へ解釈する癖くせ がある。 それが 次々と迷いを生じる原因なのである。
つまり 汝は 悪耳あくに の心・迷いの心で ものごとを聞くから その報いが 悪事 あくじ の心を生じるのだ。
つまり 汝は 顚倒てんどう した心でものごとを聞くので 汝の心が瞋恚しんに や嫉妬しっと という 三毒さんどくの悪道に堕ち
仏の教えと無縁の辺地へんち の世界や 邪見じゃけん の世界に走り 教えに耳を傾けなくなるのである。
このように 汝は 常に悪声あくしょう を聞き 耳根にこん の罪を 犯しているのである。
いや~ オイラのことを言われているみたい!耳が痛い……ボサツマン
ところが 汝は 最近 無限の功徳を藏する 大乗の経典を誦持じゅじ しているので その因縁によって
十方の諸仏の”み心”と 相通ずるようになったのである。 しかし 修行は これで十分ということはないのだ。
汝よ もっともっと 自分の悪をえぐり出して 懺悔しなければならないのである と。
ボサツマン
「世尊 今の話はオイラもよくわかります。 人の言った言葉を聞いて いつも 悪い方に解釈してしまうのです。
凡夫の品解ぼんかい です 悲しい癖くせ なんです。 人づてに聞いた場合などは とくに ひどく悪く考えてしまうのです。
一度 悪く思ってしまうと 先入感で固まり 深く信じこみ 悪い方へ悪い方へ加速していってしまうのです。
話の中身をきちっと確かめずに 人を憎んだり恨んだりする気持ちが 心を占有せんゆう してしまうのです。
だが よくよく考えてみたり よくよく聞いてみると 亦聞きの話の中身が 全く違うケースが けっこう多いのです。
そして 腹立つことではないことに気づくのです。 しかし その頃には 話が大きく成り過ぎて けっこう焦るのです。
人の話というものは 人から人へと伝わるうちに オヒレ・ハヒレがついて どんどん 膨れあがっていくものです。
落ち着いて判断して 早めに手をうてば大事おおごと にならないことを オイラは 最近理解できるようになりました。
世尊 ありがとうございます。 耳根の罪を勉強できました」。
世尊
「ボサツマンよ 耳根の罪を理解できましたね。次に 耳根の罪の懺悔法を説きましょう」。 ハイ……ボサツマン (14)へ