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やきもの作り からす窯

 

土(つち)

  粘土が出ている山の斜面

 やきもの作りの原料はなんといっても土(粘土)。はじめに土を用意することから始まります。
 土は信楽(しがらき)や益子(ましこ)などの土のほか、山で掘ってきた土などいろいろ。上の写真は山の切り通しに土の断面が見えているところ。地表1メートルくらいまでは黒い火山灰土ですが、その下には赤土があり、粘土層があったので、了解をとって掘らせてもらいました。

  山から掘ってきた土を足で練る

 山から採ってきた土は、天日で乾燥させてから、臼(うす)と杵(きね)でつきます。粉々にしたものをふるいに通して小石などを取り除いてから、水を加えて練ります。このときの土練りはそば粉やうどん粉を練るのと同じで、粉をかたまり(土)にするためのもの。
 上の写真は、土の粉に水を加えて足で練っているようす。練った土はビニール袋に包んで、しばらく寝かせておきます。土は寝かせておくうちに、微生物の働きで少しずつ粘り気が出てきます。
 信楽や益子の土も、練って寝かせておくことで、粘り気が増します。

  菊練り:菊の花びらの形に似ている

 土は、やきものを作る前にもう一度練ります。上の写真は信楽の土をブレンドして菊練りしたもの。菊練りは、台の上で粘土をくり返し押さえつけていくのですが、このとき少しずつ土をまわしていくのがコツです。菊練りで土の中の空気を抜き、土の固さ柔らかさを均一にします。こうしておかないと、ロクロを挽いたときに器の形がゆがんだり、小さな風船のような空気玉ができたり、最悪の場合は焼成中に土の中に残った空気が急膨張して破裂もします。

 

成型(せいけい)

  土を練る   ロクロを挽く

 器づくりでは、おもに電動ロクロを使います。ロクロを挽く前に、土のかたまりを菊練りします。つぎに土をロクロ盤の上に据えたら、ゆっくりロクロを回しながら叩いて締めます。土の芯が出てきたら、土殺しと呼ばれる土の上げ下げをおこないます。土殺しは、もう一度土の中の空気を抜くことと、土の固さを均等にしてロクロを挽きやすくするために行います。ここまでが準備作業。このあとが、ロクロ挽きです。
 上の写真は白土で湯のみを挽いているところ。土のかたまりからいくつもの器を挽くことを数挽き(かずびき)といいます。一つを挽いたら器の下の土を締めて、糸を回して切り離します。切り離した器は板の上に並べて乾燥させます。
 指で触れても跡がつかないくらいに乾いたら、器を裏返して底を削ります。同じ大きさの器を数多く削るので、このときもロクロを使います。底の部分(高台)を削りだしたら、ふたたび板に戻して乾燥させます。削りの段階で出る粘土のかすはとっておきます。水を加えて土に戻し、練ってまた使います。

  窯から出した素焼きの器

 器が十分に乾燥したら、窯に入れて素焼きをします。素焼きの温度は700度から800度くらい。素焼きをすると土の中の水分がぬけるので、土がしまり強度が増します。水に浸しても、もう粘土に戻ることはありません。
 素焼きをしたあと釉薬(ゆうやく)をかけます。釉薬をかけない焼き締めの器などは、素焼きをしないで本焼きをします。

 

施釉(せゆう)

  釉薬のテストピース

 釉薬は長石や灰などを原料として作ります。1200度を超える高温になると溶けて、素焼きの肌の上にガラス状の膜を作ります。この膜が表面を覆うことで器が強く美しくなり、水がしみ出るのを防いでくれます。
 釉薬には透明釉、不透明釉のほか、さまざまな色釉があります。木灰と長石で作る灰釉はうすみどり色、稲わら灰を原料とするわら灰釉は白色に発色します。
 基本となる釉薬に含鉄土石などの鉄分を加えていくと茶色から黒色に発色します。また銅を加えると緑色に発色し、焼成のしかたを変えると赤色に発色します。
 釉薬の発色は、原料だけでなく、焼成方法、器に使う土の種類でも大きく変わってきます。よく、やきもので「失敗した」というのは、窯の中の火かげんが想定していたものと異なり、釉薬が思うように発色しなかった場合が多いようです。
 釉薬は、焼成の温度が少し低いと溶けなかったり、少し高いと流れ落ちてしまったりします。このため事前のテストが欠かせません。
 上の写真は、原料の調合を変えたり、土を変えたり、焼成のしかたを変えたりして焼いた釉薬のテストピースです。からす窯でも、上のようなテストピースがたくさんあります。やきものを作りつづける限り、テストピースはどんどん増えていきます。

  霧吹きとタタラで作った皿

 釉薬はひしゃくでかけたり、釉薬の入ったバケツに器を浸してかけたり、たまに霧吹きやコンプレッサーを使って吹きかけることもあります。
 釉薬の濃度や器にかかった釉薬の厚さの違いで焼成後の釉調や発色が変わってしまうので、施釉(せゆう)は豪快に見えてけっこう慎重です。

 

焼成(しょうせい)

 施釉が終わったら窯詰めをします。窯詰めは火のまわり方を考え、釉薬の溶ける温度を考えて詰めていきます。

 からす窯でおもに使っているのは0.7立米の炭化仕様の窯です。左右に2個ずつ計4個あるバーナーを操作して窯を焚きます。焼成時間は20時間くらい。温度は1250度前後まであげます。

  窯詰め(左の写真は素焼きの窯詰め)

 窯の焚き方は、大きく分けて3つあります。
 焚きはじめから火を止めるまで、ずーっと完全燃焼で焚いていくのが酸化焼成(さんかしょうせい)。窯の中で炎が完全燃焼しているので煙りもほとんど出ません。酸化焼成は、おもに色釉の器を焼くときの焼成方法ですが、織部などは色の深みを出すために還元でも焚きます。

  還元焼成(色味穴から炎が吹き出す)

 途中まで完全燃焼で焚いていって、窯の温度が900〜950度になったら、不完全燃焼に切り替えるのが還元焼成(かんげんしょうせい)という焚き方。窯の中では赤い炎がとぐろを巻いて、煙突からは黒い煙が出ます。窯の中が酸素不足の還元状態になると、土の中に含まれている酸素も燃焼に使われるようになります。このため還元では土がよく焼けます。同じ土を同じ温度で焼いても、酸化だと白っぽく、還元だと茶色っぽく焼けます。同じ温度でも酸化焼成よりも還元焼成のほうが土がよく焼きしまります。

 3つめの焚き方に、炭化焼成あるいは冷却還元とよばれるものがあります。これは窯の火を止めたあとに強い還元状態を作り出す焚き方です。からす窯では、窯の火を止め密封したあとに薪を放り込んで窯の中を強還元状態にします。火を止めても窯の中は高温ですから薪は瞬時に燃えます。ただ密封されていて燃焼に必要な酸素が不足するため、土の中の酸素を取り込もうとして、薪から出た炭素が土と結びつき、その結果、器が黒く焼きしまります。これを炭化といいます。釉薬をかけなくても土がよく焼きしまるので、炭化焼きしめとも呼ばれています。

 以上、酸化焼成、還元焼成、炭化焼成(冷却還元)について紹介しました。
 もう一つ、中性炎焼成とよばれる焚き方があります。これは酸化焼成と還元焼成の中間の焚き方で、窯の中は酸化炎でもない還元炎でもない状態(中性炎)になります。窯は中性炎のときがもっとも燃焼効率がいいので(燃料消費が少なくてすむ)、昔の窯焚きでは、中性炎を操れることが窯焚き職人の大切な技量の一つでした。

 

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