01 ハスキーを扱っていますか?


 ペットショップを訪れた私達の第一声は「こちらでは“シベリアンハスキー”を扱ってます か?」でした。

 ブームは過ぎ去ったものの、おそらく「こいつら『動物のお医者さん』(佐々木倫子:白泉社刊)を読んだな」と思われた事でしょう)。実は思われたであろ うとおりに、全巻読み倒しました。特に妻はセリフも暗記するほど読み込み、しばらくの間、怪しげな「動物博士」を自称していたほどです。

 そして「チョビ」に惚れ込み、「ハスキーを飼いたい!」とまで言い出した事から、このお話は始まります。私もムツゴロウ王国にたまに出てくる「狼犬アナ バス」やジャック・ロンドンの『ホワイトファング』のような精悍な狼っぽい犬に憧れていたので、簡単に「シベリアンハスキー」を飼う事に賛成したのです (今思えばお恥ずかしい理由です…)。

 もちろん理由は他にもありました。それは妻が一人でいる事が多く、さびしい思いをさせていたという事。

 なぜなら夫である私の帰宅は毎日午前1過ぎ、会社に泊まるのもよくある事でした(一週間ぶりの風呂に入るために銀座にある銭湯「金春湯」(こんぱるゆ) にジャージとサンダルという出で立ちで銀座の通りを歩く様は、危ない人以外の何者でもなかったろうなぁ〜)。

 さらに休日も出勤など、独身時代と何ら変わらない生活は妻にとってはつまらない日常だったようです。という事で私の代わりに話し相手になれるような存 在、それがハスキー犬だったとしても不思議ではないでしょう(熱帯魚とカメは相手にならなかったらしい)。しまいには「カメと散歩に行ってくるぅ〜!」と 言う彼女が不憫で不憫で、うぅぅぅ。

 そういった経緯で休日になるとペットショップに足を運んで、「こちらで“シベリアンハスキー”を扱っていますか?」というお決まりのセリフを口にする事 になったのです(私は犬は「拾うもの」だと思っていましたが、そうそう落ちてないですね)。

 しかしブームが過ぎた上に大型犬であるハスキー犬は扱いづらいため、置いているショップがまったくなく、私達は途方にくれてしまいました。なかなか「生 ハスキー」に出会えない私達は『動物のお医者さん』の「チョビ」を見て、ハスキー犬の妄想を膨らませていくのでした。ハスキーって「腕の中にズボッと頭を 突っ込んでくるのかなぁ」「“これ食べていいの?”っていうような顔をするのかなぁ」などなど…。



02 ちょっと待ったぁ〜!


「置 いていないのなら取り寄せるまで!」と、最後に立ち寄った某大手ペットショップのチェーン店で「シベリアンハス キーのメスをお願いします」と依頼しました。返ってきた回答は「1週間後にご覧いただけます」。これでまた1週間、妄想の日々が続くのでした…。

 一週間待つ間にエサ箱やトイレなど、必要な道具(ハスキーに合わせてすべて大型犬仕様)を少しずつ揃えていきました。そして待ちに待ったハスキーの入荷 日が到来!

 私達は「チョビみたいな奴だといいな♪」と、まるで子供のようにいそいそとペットショップに出かけました。すでにお店の人とも顔見知りになっていたた め、入店するや「ハスキー来てますよぉ〜」とお声がかかった時はもうワクワクドキドキ♪

 ついに待望のハスキーの仔犬とご対面! ところが「ん、ちょっと待てよ? ハスキーはチョビのような顔をしているはずだが、このハスキーは左眼の周りに 殴られたような模様があって、まるでマンガに出てくる犬みたいでかっこ悪いなぁ」というのが第一印象。
 しかも「赤毛が所々に混ざっていて、お世辞にもかわいいとは言えない…」と、あの般若フェイスを期待していただけに多少ガッカリ。しかしゲージから出さ れた仔犬を触っているうちに愛着が湧き、本当にかわいく思え始めたので人間の感覚とは不思議なものです。

 しかし実際にハスキーの仔犬を前にして悩み始めました。

■「この大きさで生後まもないということは、この数倍の大きさになるはず…、狭いマンション(一応ペットOKの2LDKですけど)で飼えるのか?」
■「アラスカでソリを引くほど頑健な犬だから、主に散歩を担当する妻には荷が重いのでは?」
■「一体食費はいくらかかるんだ?」
■「夏場はクーラーつけっぱなしだから電気代がコワイ」

 などの問題が次々と出てきました。
 そうです、私達はただかっこいいから「ハスキーを飼いたい」という安直な気持ちだけが先走ってしまい、飼った後の事をろくに考えていなかったのです。 「考える前に行動!」という私のうかつな一面が露呈してしまいました…。

 悩んだ挙句、一週間後にまた来る旨を告げて、もう一度「犬を飼うとはどういう事か」を真剣に話し合うためにハスキー犬と別れて家路につきました。

 そして帰宅途中で以下の書籍を購入しました。

■「ワンちゃんお役立ちガイド いぬだす」(メイツ出版)
■「犬のしつけと訓練法」(西東社)
■「犬の写真図鑑」(日本ヴォーグ社)
■「00・01年版 犬の衣・食・住」(どうぶつ出版)
■「ドッグワールド」(成美堂出版)

 今、犬を飼うかどうか悩んでいる方がいたらとりあえず書籍から知識を得る事を推奨します。結構役に立ちますよ。


03 人と犬の幸せを考える


購 入した書籍を2人で熟読。私は会社でもインターネットで情報を収集するなど、勉強に余念がありませんでした(おいおい、仕事はどうした…?)。

 そしてペットショップに行く前日の午前0時過ぎ(午前様はどこまでも続く…)私達は話し合って「シベリアンハスキー」を飼う事をあきらめる事にしまし た。

 決して飼えない事はないけれど、現在の状況では十分な運動をさせてあげる事もできないし、いくら「ペット可」のマンションでも大型犬にとっては狭くて息 苦しいだろうという意見に落ち着いたわけです(「マンションでも大型犬は大丈夫」という意見は多くありますが、私達はやめておきました。誰だって狭い所よ りは広い場所の方がいいですよね)。

 それに「ほしい」という気持ちだけでは、後々「こんなに成長するとは思わなかったよ…、うちではもう飼えないな」など、不都合が出てくるかもしれませ ん。やはり「人と犬の幸せ」を同時に考える事が最も重要だという事に遅ればせながら気がついたわけです(我ながら勉強する前と後じゃあ全然違いますね、し かし)。

 この考えを伝えに1週間ぶりにペットショップに足を運ぶと、奥のゲージであのハスキーの仔犬がスヤスヤと寝ているのが目に飛び込んできました。私達はた とえ言葉が通じなくても飼えない事を詫びなければと思ってさらにゲージの前に行くと、ショックを受ける出来事があったのでした…。なんと、この前来店した 時よりも仔犬の価格が下がっていたのです! しかも2万円も安くなって…。

 おそらく私達が「もう買わないだろう」とショップ側が判断して、値を下げしたのでしょう。しかしわずか1週間でこの下げ幅、なんとなく悲しい気分に陥り ました(ビジネスだから当然の行為という事はわかってはいるのですが…)。

 仔犬と言ってもすでに入っているゲージが狭く感じるほど成長しているため、私達以外にこのハスキーを気にかける客は一人もいませんでした。気がつけば流 行のかわいい仔犬達が勢揃いしているショップの中では、悲しい事にすでに浮いた存在になっていたのです。

 「大きいし模様もハスキーらしくないから、買ってくれる人は誰もいないかもしれない」という正直な気持ちをショップの人にぶつけると、「他の支店にハス キーをほしいというお客様がいらっしゃったので、今週中に運ぶ予定です。ご心配なさらないでください」という言葉に少しは救われた思いがしました。
 そして冷たく身勝手なようですが「善い人に飼われてくれよ」と心の中で祈らずにはいられませんでした(後で妻に聞いたら同じ事を思っていたそうです。 よっ、さすが我が奥さん!)。

 すると「後先考えないで犬を飼ってしまうと、いずれ手放さなければいけない事態が起こる事もあり得ます。ですからお客様のように衝動買いではなく、十分 に考えてから買っていただいた方が販売する側としても安心できますよ」とショップの方は話しかけてきてくれたので(誉めてくれたのかな?)、また少し明る い気分が取り戻す事ができました。

 私達はいよいよ「小型犬から中型犬(人間の方が体力的に優位だから)」「ムダ吠えしない(集合住宅では欠かせません)」などの条件を持つ犬に焦点を絞っ たのです!



04 胴長短足だけど


ハ スキーのような大型犬はあきらめたけど、「犬を飼 う」という気持ちは変わりません(目的が定まると他の犬にも目が行くようになるので不思議なものですね)。

 さて、ショップ内をあらためて見渡すと、2000年からブレイクした「ミニチュア・ダックスフンド」、いまだ支持されている「ゴールデン・レトリー バー」など、人気の犬が数多くいます。自称「動物博士」は犬達のゲージの前に行くたびに「この犬は狩猟犬で祖先はテッケル〜」などと講釈をたれてくれます (いやはや恐れ入りました)。

 と、あるゲージの前で2人の足が止まりました。「3色に分かれてて胴長で短足のこの変な犬は何?」と、私は首を傾げながらこちらを見ている犬を(11万 7千円ナリ)指差しました。「これはウェルシュ・コーギー・ペンブロークといって、エリザベス女王のお気に入りの犬だから最近人気があるみたい」と自称 「動物博士」。そう言われるとどことなく気品が…。なんて事はありませんが、ユーモラスなその姿に私達は一瞬で魅せられてしまいました!

 しかし今度こそ「慎重に考えなければ駄目だ!」と、まずショップの人の話を参考にする事にしたのです。「コーギーは中型犬ですから、室内でも余裕で飼え ます。それに短毛種なのでトリミングに連れて行かなくても、ご自宅で十分手入れをする事も可能です。散歩は1日に1回2〜3km程度でいいので、それほど 負担にはならないでしょう。利口でムダ吠えはしないので飼いやすい犬種です」との事。

 私達は思いもかけず、理想的な犬種と出逢う事ができました!

 条件は満たしていますが、後は性格が問題…。そこでゲージから出してもらってスキンシップを取る事にしました(わかり合うにはやはり触れ合いですね)。 「コイツおとなしいなぁ。全然噛まないし、吠えないよ」と私達の好感度はアップ。
 その日は2人でさらに話し合うためにそのまま帰りましたが(売れてしまわないか心配だったよぉ)、自宅で話し合った結果は「飼う!」で一致。翌日は起き たらすぐにショップへ行って、飼う手続きを着々と進めました。

 それからは早いのなんの。飼い方の説明を受けた後、生命保証(期間中に死んだら代わりの犬をくれるというもの)にも勢いで入ってしまいました(後で考え たら代わりの犬で癒されるわけがありませんよね、これは入らなくても良かったと反省)。
 そしてショップの人が爪を切り、耳を掃除して身だしなみを整えた後、私達に渡してくれました。
 こうしてようやく我が家に新しい家族が加わる事になったのです(ちなみに新しい家族の総額は17万5千円。いてててて、お小遣い5ヶ月分じゃん!)。

 ショップで同時に購入した道具は次のとおりです(後で買い替えたものが多く、過剰在庫品を押しつけられた気もするので、勧められた場合断ってもいいかも しれませんね)。

■組み立て式ゲージ(留守番させる時は今でもここに入れています)。
■トイレマット(成長に合わせて大きなモノに買い換えました)。
■エサ(今では「ソリッドゴールド」を食べさせています。食いが違う!)
■おもちゃ(ゴム製の噛むと音が出るおもちゃ。音はかすかに鳴る程度のモノがうるさくなくていいですよ)。
■バスケット(仔犬の時はちょうど良かったのですが、今では大きなものを買い直しました。余裕があり過ぎると中で動いてしまうのでジャストフィットするも のを選びましょう)。



05 準備万端! あ、名前どうする?


銀 座の千疋屋で買ったメロンの箱に入ってしまうほど小さな新しい家族。これからどんな生活が待っているのか期待と不安が入り混じった複雑な心境(お互 い)…。
 自宅に帰って早速箱を開けると、私達を魅了した仔犬が不安そうに「ひぃーん、ひぃーん」とか細い声で鳴きながら、仰向けになって私達を見上げていまし た。「うっ、かわいいっっ!」(またもや魅了してくれましたね、コイツ)。

 さて、ゲージを設置するスペース(寂しくないようにリビングのソファの横)は確保してあったので購入したゲージを早速組み立て始め(こういう時って「犬 を飼うんだ」という気持ちが高まってきますよね?)、その他のトイレなども適切な場所に置いてこれで準備万端整いました。

 そこでふと「名前を決めてなかった」という事に気がついたのです。これは実に重要な問題、これから長い間呼ぶ事になる名前ですから、犬とは言え、まさか 「悪魔ちゃん」などという変な名前をつけて周囲から反感を買うわけにはいきません。良い名を付けてやらねば!

 という事で、「うちに新しく加わった小さな家族の名前をどうするか会議」開会の宣言です。まずは私から「コギ夫」「太郎助」「ザク」「ヤマト」「デス ラー」「ブラッキー」「タマ」「ポチ」「チビ」「フレンダー」「ヨーゼフ」「カール」「ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン」などなど(メディアからの パクリが多いですね)、実にハイセンスな名前が泉のごとく湧き上がってきます。

 が、ことごとく却下され、結局妻の「クック」が最有力候補として上がってきました。由来は「足先だけが全部白くて靴下を履いてるみたいだから」という他 愛のないものですが、仔犬を呼ぶとかすかに「ん?」と反応したような気がするので、満場一致で「クック」という事になりました!

 では「クック」について簡単な紹介を。

■誕生日:2000年12月12日(うちに来た時は生後3ヶ月)
■カラー:ブラック&タン&ホワイト
■性別:オス

 初めて犬を迎えた時はとにかく触りたくなるものですが、ここはグッと我慢。仔犬は新しい環境に来た事で不安で一杯ですから、過剰に触りまくるのはNGで す。ただし寂しくないように、人が近くにいてあげた方がいいでしょう。でも寂しさから鳴いた時にそばに行っていると、犬は「鳴いたら来てくれるんだ」と学 習してしまいます。

 こうなると人がそばに行くまで「鳴き続ける」という問題行動をとるようになります。これはあまり良い行動とは言えないので(「鳴いている」と感じている 時はいいのですが、これが「吠える」になると隣近所にも迷惑ですし)、犬と接するときは毅然とした態度が生涯を通して特に重要になってきます。

 で、クックの初日はどうだったかと言うと相変わらず鳴かないし、暴れるような事もありませんでした。元々おとなしい性格に不安が募って静かにしていたの でしょう(早く慣れてくれよ、クック)。



06 マナーを身につけよう-1


私 達は10日の間、クックをゲージの外には出しませ んでした(悪く言えば軟禁状態)。

 犬を飼い始めたら、最初の10日間はゲージから出さずにシツケをする期間だと決めていたからです。そのシツケの内容は「無駄吠えをしない」「人に飛びか からない」「噛まない」「排泄していい場所を認識させる」という最低限のものです。しかし長い間付き合っていく中では重要な要素でもあります。特に他人に 対して危害を与えない教育は欠かせません。

 もし他人を噛んで怪我を負わせたら「治療費」を支払うのは当然。さらに噛んだ拍子に転んで頭でも打って後遺症が残ったら莫大な「慰謝料」とその後の保証 を背負う羽目になってしまいます(ある日突然数百万円もの大金を請求されたら払えませんよね)。
 それに人を噛んで重傷を負わせてしまったら「かわいい飼い犬」から、単なる「害獣」に成り下がります。すべての人が不幸にならないためにも「シツケ」は とにかく頑張りましょう!

 しかしいくらシツケたと言っても、公園などの公共施設でノーリード(首輪なし)で運動させるのはマナー違反というもの。「うちの犬は絶対に噛まないから 平気」という、自分だけの考えはやめましょう。犬を飼っていない人や嫌いな人にとって、犬は「恐怖の対象」でしかないのですから。
 でも「うちの犬は呼べば必ず帰ってくる」という方なら夜中や早朝など、他に人のいない時ならOKかも。もちろん条例で罰則規定がある場合は危険ですけど ね。

 という事でクックのシツケは主に次のようになりました。

■ゲージと人に飛びついたら叱る
■ムダに吠え立てたら叱る
■トイレを失敗したら叱る
■噛んだら叱る(じゃれて噛むのもNGにしました)

 叱ってばかりでかなりイヤな感じですが、子供の頃に覚えこまさなければと私達は心を鬼にしてひたすら教育。ただし「叱り方」は殴る蹴るといった体罰では なく「音」で驚かせる方針です。
 つまり飛びついたり吠えたりしたら新聞紙を丸めたものでゲージを叩いたり、手を叩いたりして大きな音を出すのです。これはかなり効果を発揮して、2日目 には音をイヤがって飛びつかなくりました。この音によるシツケは今でも続けています。
 トイレもほぼ同様で、3日目にはトイレマットの上でするようになりました(さすがに最初の2、3回は全然違う個所にしてくれましたが)。

 ところが「噛む」行為だけは、今でも「甘噛み」(なぜか人間の「耳」が好きで甘噛みをしてくる)をするので、残念ながら完全になおす事はできないでいま す。

 以前犬の「噛む」行動について盲導犬協会の先生に聞いたら、「噛むのは犬の仕事だから“噛んでいい物”と“噛んだらいけない物”を分けて教えましょう」 との事でした。つまり「ボール」は噛んでいいけど「手」はダメなので、もし手を噛んでくるようだったら、「ボール」などの噛んでいいものを与えて犬の気を そらせるという方法も有効なようです。
 もちろんこの噛む行為をやめさせるシツケも継続して行っています。

 お金に余裕があればプロに頼むのも一つの手段ですが、とにかくシツケは子供のうちから気長に根気よく行わなければダメという事です。




07 マナーを身につけよう-2


(基 本的には)おとなしくてお利口なクックちゃん。だけど…。

 あるシツケをしていたら、鼻にシワを寄せて「ウゥゥゥゥ〜」と初めて私達を威嚇してきました。さて、そのシツケとは何だと思いますか?
 答えは「食事中に顔や手を触りまくって従順な犬にする」です。これはある本に「犬を服従させるためにも必要だ」という項目があったので実行したのです が、想像以上にクックの反撃を受けてしまいました。何度やっても「ウゥゥゥゥ〜」です。

 困った私達はプロに相談しました。
 するとプロは「あなた達も食事中に顔を触られたらイヤですよね? それは犬にも同じ事が言えます。ですから食事中に無理して触る必要はありません。それ よりも安心してゆっくり食べられる環境を創ってあげてください」と教えてくれました(ごもっとも)。

 仔犬の頃から食事中に触られる事に慣れている犬なら怒りません。私達もめげずに続けていれば、クックは怒らない犬になったかもしれませんが、私達はその 必要はないと判断して「食事中に顔や手を触りまくる」シツケはやめる事にしました。
 しかしクックはこのシツケを止めた事によって、次の事をやると怒る犬に育ってしまったのです(育ったとは言わないか)。

■食事中に顔や手を触る(なぜだか体全体は気にならないらしい)
■お気に入りのオヤツを取り上げようとした時(食事中よりも怒るので、時々ねじ伏せて猛省させる)
(うーん、続けてた方がよかったかなぁ? とやや後悔)

 こうして(多少の不安は残るものの)10日間で基本的なシツケを終えてからは、時々部屋の中を歩かせるようにしました。夢中であちこちの臭いを嗅いでい る仕草を見ていると一人前の犬のように見えます。
 ついでに服従性を増すために「マズルコントロール」(鼻先を口ごと掴んで人間の思うように向きを変えてコントロールする事)を行いました。これを毎日継 続して行うと目に見えて従うようになるのがわかるので絶対おすすめです。

 ゲージから出す時間を少しずつ長くしてからは、第二段階のシツケに移行しました。「スワレ」「フセ」「マテ」「オイデ」「ヒール(アト)」の5つです。

 シツケの担当は主に妻でしたが、帰宅するたびに確実に覚えていくクックを見るのが本当に楽しかった事を覚えています。結局「オイデ」と「ヒール」はおや つでつらないと今でもあまりできませんが、最初の3つは何もなくても1日で覚えたので頭は良いと思います(またバカ親ぶりを発揮)。

 さらに「オテ」(右前足を上げる)と「オカワリ」(左前足を上げる)を教えました(妻が)。この2つは基本中の基本というか、散歩中に出会う人が結構 言ってくる芸でもあるので、覚えさせておいて損はありません。この2つも1日でマスターしたクックですが、今では何かほしい物があると、オテとオカワリを 交互にしてくるようになりました。

 頼みもしないのに「オテ」をしてくるので本来の趣旨とは違うような気もしますが、とりあえず見ていてかわいいです。そんなクックは今日も交互に手を出し て私達に物をねだっております(何もあげないけど)。



08  クックは緑の妖精?!


シ ツケの話が続いたので本編から少し離れて「犬の血統」のお話をさせていただきます。

 「いかに優秀な犬の血を受け継いでいるか」、これによって(客観的な)犬の価値は全然違います。例えば両親が「インターナショナルビューティーチャンピ オン」だったりしたら、産まれてくる子供は販売価格が高いという具合です。そういった血脈を証明する1つの方法が「血統登録台帳」であり、日本でそれを管 理しているのが主に「社団法人ジャパン ケネル クラブ」です(関係ないけど団体職員て楽そうだなぁ)。

 血統書のある犬を購入した時には「国際公認血統証明書」がもれなく付いてきます。これは購入した犬の「曽祖父母」「祖父母」「父母」などの血統や、繁殖 させたブリーダーの氏名が記載されていて、国際的に通用する犬の証明書です(人間で言えばIDカードですね)。
 このままだとブリーダーの名前しか載っていないので、自分の名前を載せたいのなら名義変更(有料:6,400円)が必要になります(私は記念に書き換え ました)。

 ちなみに我が家の愛犬クックの正式な「犬名」は、「アンシーズ・オブ・グリーン・フェアリー・ジェイピー」です(落語の「寿限無」に通じるものがあるよ うな…)。

 うーん、なんかこの名前を見ると犬とは言え呼び捨てにしづらいですね。「アンシーズ・オブ・グリーン・フェアリー・ジェイピーさん」とさん付けにしない とさまにならないというか。なんかクックとかいう庶民的で短い名前をつけてごめんなさい、て感じです。あ、でも産まれは「埼玉」なのね、ちょっと安心。

 クックのお母様のお名前は

■「ドリーム・オブ・グリーン・フェアリー・ジェイピー」

 お父様は

■「ダービー・オブ・エリザベス・キッド・ジェイピー」です。

 あっ、母方のひいおじい様は「キャンドルズ・マーベリック」というお名前で、アメリカチャンピオンですか…。これはこれはもう、ひれ伏すばかりです。

 ぼくちんのお母ちゃんなんか“ひろこ”で、ひいじーさんは“とくざえもん”だもんね(「ドラえもん」じゃないよ)。どう考えても犬の一家に負けてるよ、 ぐっすん。
 せめて「ゴージャス・ヘヴン・メタリック・ひろこ」とか「スペース・ゴールデン・アフターケア・とくざえもん」とかならいい勝負だったのに…。

 とまあ、血統書は近親交配を回避するのにも有用で、その血脈を維持する上で非常に重要なアイテムなのです。もちろん血統書なんてものはなくても自分が 飼っている犬は十分かわいいですけどね。

※クックの兄弟犬を飼っている方がいらしたら是非ご連絡ください。



09  病気対策はしっかりと


ノー ブルな血が流れるクックも、すでに私達と共に生活してから2週間が経過して、ずいぶんと庶民の犬らしくなってきました。そしてようやく慣れてきた 頃に、ワクチンの接種がやってきます。

 最初に犬のワクチンを簡単にご説明しておきます。まずポピュラーなのが「7種混合ワクチン」と「3種混合ワクチン」の2つ(犬によってはアレルギー体質 もあるそうなので、獣医さん任せでいいと思います)。
 これはペットショップに行くと犬のゲージのガラスに「7種混合ワクチン接種済み」とか書いて貼られている事があるので、名称だけは目にした事があるかも しれませんね。

 これは1度の接種でそれぞれ7種類と3種類の病気を予防する事ができるという、大変ありがたいワクチンです(昔は1種類ずつだったらしく飼い主の経済的 な負担が大きかったとか)。通常は生後3ヶ月目で3回目の接種を終えて、後は年に1回の接種ペースに移行します。

 クックは私達が飼う前に「1月12日」に1回目、「2月12日」に2回目の接種を終えていたので、今回は3回目の接種(2回目の接種にかかった費用は クックを買った時に請求されましたが、皆さんもそうでしたか?)でした。3回目の時も暴れたりしなかったのでホッとしましたが、少しはうろたえる姿を見た かったです。
 でも安心するのはまだ早いぞクック。狂犬病も予防しなくちゃね、ふふふ。そうです、犬には各種混合ワクチンの他に「狂犬病ワクチン」もあるのです。

 さて、国内の食肉牛生産者や牛丼メーカーに大打撃を与えた狂牛病とは違い、狂犬病は1956年以来、日本国内での発症例はないそうです。すでに絶滅した ウイルスと言えるかもしれませんが、世界ではまだまだ狂犬病にかかった犬に噛まれて死亡する方もいるようなので、念には念を入れて絶対に処置しておきま しょう。

 中には「かからない病気にお金を払うのはもったいない」と注射をさせない飼い主もいますが(飼い始めた時に届出していない人ってまだ結構いるんです)、 これは大問題!
 もし他人を噛んでしまった時に「狂犬病の予防をしていない」事が露呈(被害者は病院に行くので100%役所にバレます)したら大変不利な状況に置かれま す。「それでも構わない」、または「ワクチンでも完全に病気は防げないだろう」と言うのなら無理には勧めませんが…。

 で、狂犬病は次のような特徴があります。

■潜伏期間は15〜60日(狂牛病は10年とか20年とか言いますね、スローモーな牛らしい潜伏期間と言うか…)。
■神経を麻痺させるので当然呼吸器系も停止、数日で死に至る(発症したら治療法はないのでいずれにしても死ぬ)。
■水を怖がる(そう言えば『ブラックジャック』で狂犬病の犬に噛まれた人を治療するシーンがありましたが、めちゃくちゃ水を怖がっていましたね。知らない かな?)。

 「よくわからない」という方はステーブンキング原作の『クジョー』をご覧いただければ、狂犬病の恐ろしさをご理解いただけると思います。DVDとビデオ がありますのでレンタルしてはいかがでしょうか?

 とりあえず本当に怖い病気です…。そんなわけでクックは5月に入ってすぐに狂犬病のワクチンを接種したのでした、ブスーーーーッと。



10 超人気のお散歩デビュー


ワ クチンを打ってないと様々な病気に感染する恐れが あるため外に出せませんでしたが、無事にワクチン接種を終えた今は、クックにもようやくお散歩の許可が下りました桜が咲き乱れて、暖かくなってきた最高の 季節です! ワクワク♪

「さあ、いざ散歩へ!」、もちろん道具はあらかじめ購入しておきました。

■首輪(成長すれば買い換える事になるので、ショップに行く前に首周りを測っておいてちょうど良いものを選びましょう)。
■リード(いくらかっこいいからと言って、クックに土佐犬がつける「綱」をつけるわけにもいきません。これも身体に合ったものを)。
■散歩用の水入れ(散歩中喉が渇いた時に飲ませようと購入しましたが、はっきり言って今では使っていません。コンビニで売ってる「エビアン」とかの小さい ボトルと、水を受ける平皿を持っていけば十分です)。
■ビニール袋とティッシュ(別名「うんち取り袋」と「うんち取り紙」、これを忘れると散歩できません)。
■(ただ与えるのではなく、外でシツケる時に使いましょう)。
■カメラ(これは成長を記録するためにも絶対必要、かな?)。

 これらを持って私達とクックは外に飛び出しました(最初は「俺が散歩させる!」「いーえ、私が連れて行く!」と一騒動ありましたが…)。
 家から出たとたんクックはあちこちの臭いを嗅いでいました。クックにとっては見る物聞く物すべてが初めてのものばかりなのですから当然でしょう(私も取 材で初めて国会に行った時は臭いは嗅がないまでもキョロキョロしましたし)。

 すると歩き始めてすぐに、見知らぬ女性3人が「かわいいーー!」と叫びながら血迷ってきました、じゃなくて近寄ってきました。私達が「今日が初めての散 歩なんですよ」と言うと、もう興奮状態。それこそ「かわいいー」という言葉を100万回くらい聞かされたような気がします。

 その場を離れてからも他の人に何度も呼び止められ、「うわー、かわいいー」という言葉を浴びせかけられながらも初めての散歩は続きました(疲れたけど やっぱり嬉しかったなぁ)。

 さて、私は「オス犬は散歩中に必ず電柱にオシッコをする」と信じていましたが、クックは電柱よりも草木に関心がある素敵な仔犬でした。「まあ、なんて心 優しい子なんだろう」、散った桜の花の臭いをクンクン嗅いでいる姿はまるで妖精みたいだわ(犬名に「フェアリー」が入っているだけの事はある?)。
 …という想いもどこへやら、散歩デビューから1ヵ月後には電柱に片足を上げて「ジョーーー!」と勢いよくオシッコを、一方歩道には「ボトボト」とうんち をする始末。単に自分にとって「ここは安全だ」と認識するまでは外でしたくなかっただけみたいデス。

 「散歩デビューからしばらくは自分の名前を“かわいい”だと思ってたみたい。だってクックって呼んでも反応しないけど、“かわいい”って呼ぶと来るんだ よ」と妻は当時を振り返ります。

 現在成犬レベルの体格になったクックは「あまり呼び止められなくなってしまいました」(人間で言えば「ケンちゃん」みたいなものでしょうか?)。 ま あ、元気でいてくれればそれだけで十分です。



11 適切な食環境


こ こではクックの食事についてお話したいと思いま す。クックが我が家に来た時はペットショップで与えていた食事と同じ物をそのまま与えていました。

 飼い始めた時の食事1回分の材料

■「ヒルズサイエンス・ダイエットグロース」…おたまに1杯
■「粉ミルク」…スプーン1杯
■「整腸粉末」…耳掻き1杯
■「ニュートリスタッド」…チューブから出して2cm程度
■「缶詰のフード」…スプーン1杯

 この5品を混ぜた後、お湯を同量注いで柔らかくして、1日2回(3回の場合はそれぞれの量を減らします)与えていました。
 ショップと同じ物を与えていた理由は急激な食環境の変化で下痢をしたり、食欲不振を避けるための措置だったので、しばらく経ったら周囲の方や動物病院の 先生に尋ねて、よりよい食事を与えてあげられるよう勉強していました。
 特にドッグフードは数回変えました。あまり変えない方がいいという噂もありますが、ペットフードは犬の一生を通しての主食ですし、犬によってまったく好 みが違うので、ゆっくり様子を見ながら変えてあげた方がいいような気が私はします。

 飼い始めた時から与えていた「ヒルズサイエンス・ダイエットグロース」は5月で止めて、「ナチュラルペットフード ニュートロ」に切り替えました。でも 「ニュートロ」よりも「プリンシプル・ナチュラルドッグフード」の方が良いという人が多かったので、「プリンシプル」にまたまた変えてみる事にしました。 しかし、一番クックの好みに合ったものが、「プリンシプル」の後に与えた「ソリッドゴールド」です。そして今でもクックは「ソリッド」を喜んで食べていま す(たまに野菜も混ぜて与えていますが、量が多いと下痢をするので適宜量を調整しましょう)。

 ただ、メディアに露出し過ぎているメーカーの商品は、「なぜか犬と犬の飼い主に評判がよくありません」。想像するに「本来なら開発にかけるべき経費をプ ロモーション活動に回していて、商品内容がおろそかになっているのではないか?」「業績が悪化した企業はとにかくCMを打って消費者の目に触れる機会を多 く設けるじゃないか」という心理が働いてしまうからでしょう。
 「安いから」「コンビニで買えるから」「CMをたくさん見かけるから」「有名だから」という理由だけで、ペットフードを選ぶ愚は避けたいものです、かわ いい犬のためにも。

 後、肝心なのはオヤツ。与えすぎると確実に犬の身体にダメージを与えてしまいます。寿命を縮めてもいいのならどんどん与えて構いませんが、寿命をまっと うしてほしいのならば適量を決める事をお勧めします。

 私も最初はクックが喜ぶからと「豚の耳」を与えていましたが、あれは「脂」が多すぎるような気がしたので今ではあげていません。他のオヤツも「今日の 分」をまず出しておいて、食べきってもそれ以上は与えないようにしています。



12 タマはどこに行きましたかぁ?


サ ザエさんとマスオさんの愛息であるタラちゃんに とって「タマ」が大事なお友達であるように、「タマ」は男全体にとってとてつもなく重要なモノです。

 というわけで、ここでは「飼い犬(飼い猫)の去勢・避妊問題」を取り上げます(大マジ)。クックを飼い始めてしばらく経ってから妻が切り出しました。 「クックは去勢するの?」と。私は大反対!

 同性として「睾丸を取られるのは絶対イヤ」という感情がとっさに働いたのは確かでしたが、「将来発生するかどうかわからない病気の予防のため」や「おと なしくさせる」という名目で、犬本来の姿を消し去る行為に納得がいかなかったからです。

 もし大病を患ったとしてもそれはクックの「運命」です。でも万が一クックが病気になったら、私は全力でクックを治す努力をする事に決めています。また、 発情期を迎えて暴れるようになったら、噛まれてでも押さえつけて言う事をきかせるつもりです。

 だから妻と話し合って「クックは去勢をせずに犬の在りのままの姿を保ってもらう事にしました」。妻も私の考えを理解してくれたようです。

 この問題ばかりは犬や猫本人の考えが入る余地はまったくありません。本当に飼い主の方の気持ち一つなのです。だからこそ決して軽く考えてはいけないので す。

 ある日突然、磯野家からいなくなったタマがひょっこりご飯を食べに帰ってくるようにはいきません。「なくなった愛犬のタマは二度と帰って来ないので す」。納得の行くまでとことん考えて最良の道を愛犬や愛猫に指し示してあげましょう!

 ちなみに去勢すると次のメリットがあるようです

■電柱などにマーキング(オシッコをかけない)しなくなる。
■従順になる(「オレがこの家で一番偉いんだ!」的な権勢欲が消失する)。
■睾丸に腫瘍ができない(睾丸がないから当然)。
 逆にデメリットはと言うと。
■肥満になりやすいくらいです。

 避妊のメリットは。

■子宮に腫瘍ができない(子宮がないから、これまた当然)。
■発情期でも散歩に行ける(生物学上「雌」ではなくなるので、雄犬も寄ってきません)。

 デメリットは。

■これも肥満になりやすいくらいです。

 はっきり言って「交配させて子供を作る気なんかこれっぽっちもないし、病気の予防にもなる」という事を第一に考えているのなら、去勢や避妊の手術をした 方が全然良いと思います。しかしその場合でも家族や獣医の先生と十分に話し合う必要があるでしょう。




13 床がなくなった日


去 勢と避妊の問題がヘビーだったので少々疲れまし た。ゆえにここではクックの問題行動(簡単に言えば犬や猫が言う事を聞かないで困っている事)を、気をラクーにしてお話したいと思います。

 さて、クックの問題行動には次の項目があります。

■散歩の時に私達よりも先に行こうとする(でもお腹を見せて前足を曲げる服従のポーズは取るので不思議です)。
■散歩の時にリードを噛む(「ビターアップル」(犬の嫌う臭いを持つスプレータイプのアイテム。噛まれたらイヤな所に吹きかけておけば効果てきめん!  の、はずなのに…)を塗ってもリードだけは噛む(どなたかリードを噛まなくなる方法ご存知でしたら教えてくださいませ)。
■玄関のチャイムに吠える(これはあまり気にしていません)。

 ほぼ散歩に集中した問題行動ですが、これくらいです。他には特にありません。家の中にある家具は何も噛まないし、靴やサンダルも噛みません。オシッコも きちんとするし、留守番もおとなしくしているのでゲージに入れる事はしませんでした。基本的には手のかからない犬だと誇りに思っています。

 が、油断してました…。私達2人共、クックの優等生の姿に騙されていたのです! やってくれました、大きなイタズラを。

 それは私達が買い物に出かけるため留守番をさせていた時の事です。およそ3時間後、買い物から帰ってきた私達はカギを開けて家の中に入りました。すると すぐにクックが短いシッポを振りながら近づいてきました。
 「ん? なんか床が散らかってるな? トイレの下に敷いておいた新聞紙でもカジったのかな?」と一瞬思いました。しかしすぐに気がつきました。その散ら かっている物が「床の切れ端」だという事を…。私達は卒倒しそうになりました(「てめぇー、これで敷金返ってこねーよ!」)。

 もちろん床と言っても「フローリング」ではなく、クッションフロアです。それをクックは30cm四方に渡って食いちぎっていたのです(平面で凹凸のない 床をどうやって食いちぎったのか、犯行の手口は謎のまま)。しかもその場で齧っていたわけでもないので叱れず仕舞い。

 翌日うんちと共に「昨日の午前中まで床だった切れ端」が次々と出てきたので、私達はその動かぬ証拠をふざけてクックの目の前に突きつけてやりました!  すると「うー!」と唸って威嚇して来るではありませんか。その姿はまるで「オレはやってねーよ! 何かの間違いじゃねーのか?」と犯行を否認しているふて ぶてしい犯人のようでした…。

 後日東急ハンズで、似た模様のシートを買って来て半ベソかいて修繕しました(微妙に色が違ってて違和感ありあり、こりゃバレル!)。私は修繕しながら 「コイツは良い子でも何でもなくて、猫をかぶってるだけだ」と思わずにはいられませんでした…。
 この事件以降、留守番させる時はゲージに入れるようになったのは言うまでもありません。




14 無料のシツケ教室をフル活用!


「犬 を飼い始めたけど、本を読むだけではシツケがうまくいかない…」「犬を飼っている人とお友達になりたい」と思っている方達にうってつけのイベント があります。
 それは市役所や区役所などの公的機関で「犬のシツケ教室」「犬と暮らすために」といった名称で時折開催される無料の講座です。無料です、無料。

 個人的には公的機関の「シツケ教室」のメリットは次の事にあると思っています。

■無料だから経済的負担がない(「タダより高いものはない」と言いますが、この場合は大丈夫でしょう。まさか「テキストは有料なんだよ〜、あーん?」など と職員が後で恫喝してくる事もないでしょうから)。
■役所なので民間企業よりも安心感が得られる(民間の有料シツケ教室の場合は「一度言ったら強制的にグッズや色々な教室に加入させられるのでは?」「実際 に行ったらいい加減な所だったらイヤだ」など不安を感じるケースがありますが、役所ならそれはないし)。
■区役所などの小さな行政単位の場合、参加する人達は地元の人が多いので話がしやすい(意外と「隣の家の人が教室に参加していた」という事もあるようで す。ただ、逆にケンカでもしたらその後がイヤですけど)。
■教室が数回に渡って行われたとしても、住まいから近いため比較的通いやすい(自転車で行けますからね)。

 納税している市民の当然の権利として、積極的にこれらの教室を愛犬のシツケに利用しましょう! と、ここまで読んで「私も無料シツケ教室に行きたい!」 と思っている方のために、妻が行った教室を簡単にご説明します。

 回数は全4回、そのたびにシツケに関してのプロの先生(民間なので役所が税金から講演料を支払うのでしょう)を招いて参加者に指導を行いました。この時 役所の人は見ているだけで特に何もしません、あくまでも主催者の立場として先生をサポートします。

 座学の後は会議室や付近の広場、公園などで犬を連れ立って実習を行います(フィラリアの薬を飲ませているとは言え、夏場屋外で行う場合には「蚊」が多い ので気をつけましょう)。そこで参加者と犬を整列させてシツケを一つずつ説明していくので勉強になるようです。

 先生によっては「どこまでも優しい物腰で接するタイプ」や、「とにかく飼い主に厳しい事を言って過剰なまでに危機感を煽るタイプ」など色々です。たとえ 厳しい事を言われても落ち込まないでください、最初は皆シツケなんてうまくできないんですから。

 ただし中には単に性格の悪い先生もいるので要注意! シツケのプロは確かに特殊技能を持っていますが、参加者を無知呼ばわりする権利はないので「この先 生なんかおかしい?」と思った場合には、主催者側である役所の担当者にクレームを言ってもなんら支障はありません。大体多くの人に不快感を抱かせてしまう 先生に、本当に犬をシツケられるのか私は疑問に思います。

 さて、学んだ事はすぐに自宅で反復練習して愛犬をシツケていきますが、犬にはシツケでは治らない行動があります…。
 次の章では「犬のノイローゼ」についてお話しましょう。



15 ノイローゼ警報発令


犬 と一緒に散歩している人が急に来た道を逆に歩い ていく、と思ったらまた向きを変えて戻ってきた、これを延々30分繰り返している人がいてもそれは「ノイローゼ」ではありません。
 「飼い主の行きたい方向に犬を従わせる」というシツケの一つなので、見かけても「うっ、うっ、うちの前の道を行ったり来たりしている変な人がいます」 と、「救急車」や「警察」を呼ばないようにしてあげてください。

 ここで問題としたいのは人間ではなく、「犬のノイローゼ」です(ノイローゼと言っても「頭がおかしくなる」という事ではなく、妙な行動を取り始める事を 意味します)。

 基本的に毎日きちんと食事を与え、散歩に連れて行き、遊んでやるという事をしていれば犬はそうそうノイローゼにはなりません。しかし不満が募るとその兆 候を見せてきます(実はある事情からうちも散歩に行く回数が減ってしまい、時折次のような行動がクックにも見られるようになってしまいました)。

 この大きな原因としては、家庭が「共働き」だという事が挙げられます(結婚したばかりの夫婦が犬を飼い始めるのは本当に多いケースです、現に私もそうで すし)。
 つまり朝から晩まで、家の中は「犬だけ」になってしまうという事です。もちろん予期せぬ事故(「電気コードをカジって感電死」とか。あ、「床を食べる」 もありましたね)を未然に防ぐためにも、犬はゲージに入れて仕事に出かけてしまうのが普通ですが、これがいけないように思われます。

 誰もいない家の中…、しかも狭いゲージに8時間程度入れられた犬のストレスは相当なものでしょう。飼い主が忙しければ散歩にも行けません。これがノイ ローゼへの引き金を引いてしまうのです。
 さらにゲージに入れっぱなしでかわいそうだったと思うあまり、過剰にオヤツを与えて肥満にさせてしまうケースもあると聞いた事があります。

 私が考えているノイローゼっぽい行動は、「爪や足を噛む」「むやみに吠える」「自分のシッポを追いかける」など。さらに「円形脱毛症」が相当します。
 ひどいものになると、「肉球(足の裏の柔らかい部分)がふやけるまで舐める」「爪がはがれそうになるまで噛む」といった事になり、獣医に相談しなければ いけなくなってしまうのでのん気に構えているわけにいきません。

 ではどうすれば防ぐ事ができるのか? 手っ取り早いのは夫婦の一方が仕事を辞めて専業主婦(主夫)になる事です。ただし色々な事情で回避できない場合も あるでしょうから、その時は仕事で疲れていても、帰宅したら十分相手をしてかわいがってやるようにしましょう。

 特にクックのように活発で明るい性格の犬種には孤独が堪えるようなので、私達も極力気をつけていきたいと思っています。
 皆さんも愛犬の行動を注意深く見ていてください。ひょっとしたらノイローゼの兆候が出ているかもしれませんよ?



16 リーダーは俺だ


犬 の「順位付け」は動物を扱ったテレビ番組でもよく取り上げられるので、多くの人が知っている言葉ではないでしょうか? 簡単に言えば「この群れ(家族) のリーダーは誰か?」という事です。そして犬は虎視眈々とリーダーの座を狙っています。それはクックだけに限らずどの犬にも備わっている「本能」です。

 通常雄犬は雌犬よりも権勢欲が強いと言われています(人間は女性の方が強い時が結構あるので仕事でも何度泣かされた事か…)。
 そのためクックも我が家の実権を手中に収めようと、私や妻に闘争を仕掛けて来る事がまだまだあるのです(この行動は本能だけになかなか消失しないです ね。それにいよいよヤンチャな時期ですし)。

 しかしクックは私達に叱られると服従のポーズ(仰向けになって前足を曲げる)をすぐに取るので、私は妻と「コイツは大丈夫だよ」と話していましたが、結 局反抗する事があるので何となく違うような気がしてきました。
 つまりクックは仰向けになっても服従のポーズを取っている気は微塵もなく、単に「お前らオレ様を触れ! コラ、そこ。お腹をもっと擦らんかい〜!!」と いうつもりで取ったポーズが、あの「仰向けのポーズ」なのではないかと…(多分取り越し苦労だろう、と私は思いたい)。

 さらにクックは外で他の犬に会った時も必ず先にお尻の臭いを嗅ぎに行きます(犬同士の挨拶で先に嗅ぎに行く犬の方が優位な立場だとか)。それこそ他の犬 に嗅がせた姿はほとんど見た事がないほど徹底しています。私達が思っている以上にクックは、「プライド」と「権勢欲」が強い犬なのかしれません(こりゃ、 油断できん)。

 さて肝心の我が家の「順位付け」ですが、私が1位で2位「妻」、3位「クック」の順番だと思っています(妻に言わせると1位と2位は逆)。しかし私と妻 のどちらが上かというよりも、クックは「ぼくが一番偉いワン!」と思っているような気がしてなりません、ふぅ。

 ちなみに群れのリーダーになりたいという欲求は、専門用語で「権勢症候群」(アルファシンドローム)と呼び、矯正するには「1〜3週間程度の期間一切無 視する」のが一番効果的だそうです。
 無視とは「名前を呼ばない」「散歩に連れて行かない」「一緒になって遊ばない」など、犬とのすべての接触が含まれます(ただし、食事や水の用意、トイレ の始末は入りませんよ)。
 なんとなくかわいそうな気もしますが、悪い芽は早めに摘み取った方がよいので「うちの犬は暴れて困る」という方は専門家に相談して対処した方がいいで しょう。

 クックはそこまでひどい状況でもないので、今までどおりに…。

■「気がついたらクックの上におおいかぶさる」(上に乗る方が優位)
■「悪い事をしてもしなくても服従のポーズを取らせる」(母犬はよく自分の子供をたびたび引っくり返して順位を教えこむと言いますね)
■「ちょくちょく命令する」(「スワレ」や「オテ」といった命令を繰り返す事で従順度を増加させる)

 などを行っていく事で、沸き起こりがちな権勢欲をその都度削いで行く予定です。

 それにクックは今年の10月で生後10ヶ月を迎えました。人間で言えば中学生くらいの生意気盛りです。気長にやりますよ。



17 ペットショップの選び方


犬 の購入先を挙げるとしたら、誰もが 「ペットショップ」を最初に思い浮かべるでのではないでしょうか。各種生体だけではなく関連商品も扱っているし、大勢の消費者が訪れるので「みんなが買っ ているから大丈夫だろう」と安心感も得られるので当然だと思います。

 現に私達もクックを某大手チェーンで購入しました。理由は自宅から近いし、アフターケアもしかっかりしていると思ったからです。しかし実際に犬を飼い始 めて知識が蓄積されてくると、「あそこのショップはあまり良い所ではなかったのではないだろうか?」と思うようになりました。そんな気をつけたいショップ の例を挙げたいと思います。

■ゲージ(犬舎)があまり綺麗ではない
 人手が足りないのかもしれないけど、仔犬や子猫が排泄をしたらすぐに掃除をしてもらいたいものです。皆さんも買いたいと思っている犬のゲージが汚れたま まだと「大事にしてないのかな?」と不安になりますよね?

■スタッフが知識を持っていない
 買う側としてはわからないから聞いているのに、スタッフが「うーん、ちょっとわかりませんね」では困ります。これは全員オペレーションの徹底で防げる事 ですし、今時店員が自店で扱っている商品知識を持っていないようでは先がありません。

■破格値の犬達の扱いがひどい
 かわいい仔犬もやがて成犬になります。そうなると買い手が現れにくいため価格が下がり、同じように成長してしまった犬達と一緒の柵に入れられるようにな ります。と、ここまではビジネスなので別に不満はありません。悪いのはここからです。
 私達の犬仲間の知り合いが某ペットショップに行った時にある点に気がついて驚いたそうです。それは柵の中の犬達がみんな皮膚病にかかっていたからです。 この知り合いはペット産業関係者なので一目で「皮膚病」だとわかったそうですが、素人ではたぶんわからないよ、とも言いました。

■価格設定が変
 ほしい犬が決まったら、ショップを数軒回って「適正な市場価格」を見極めてください。その時に「毛の模様が綺麗ではない」という理由で安いのならわかり ますが、普通の仔犬なのに変に安いと要注意です(悪質な所では先天性の疾患などを隠して販売する所もあるとか)。
 逆に高い犬は「親がチャンピオン犬」とか「基本的なシツケをマスターさせている」事が多いです。しかし「いずれショーに出す」「シツケはやりたくない」 というのでないのなら大枚をはたいて買う必要はないでしょう。

■生後40日未満の仔犬を販売している
 仔犬は母犬や兄弟犬と遊ぶ事で社会性を身につけます(これだけ噛んだら相手は痛がるという事に気づくなど)。ですからあまり早い時期に親から離されると 「ルールを知らない犬」になってしまう恐れがあるので、少なくとも40日以上経っている犬を選ぶようにしましょう。中には「生後4ヶ月以上経ってからでな いと販売しない」というショップもあるので、これでも早すぎると思いますが。
 とりあえずこういう売り方をしているショップはどんなに大手でも信じてない方がいいかもしれませんね。

 最低限上記の点に気をつけて健康な犬を買うようにしましょう(クックを買ったショップはあまり良くない所だったかもしれませんが、クックを私達に出逢わ せてくれた場所でもあるので感謝しています。でももう行かない…)。




18 どこまでも広がる飼い主の輪


実 体験から言うと犬を買ったのと同じペットショップに訪れる事はほとんどありませんでした。

 私達は犬を飼うのは初めてで何をしていいのかわからなかったので、「専属の獣医師がついているから安心です」「いつでもどんな事でも相談してください」 「予防接種は会員割引するのでかなりお得です」とペットショップの方に勧められるままに「会員費」を支払い、会員になりました。
 当時は「これでクックに何が起きても大丈夫だ」と胸をなでおろしたものです。

 しかし特に恩恵を受けないままに会員の有効期限は切れてしまいました。それはなぜか? 答えは簡単です。近所に犬を飼っている人がいくらでも存在してい るので、その人達が良き相談相手になってくれるからです。
 私達もクックを飼い始めてすぐに近所に友達ができました(主に妻が散歩中とかシツケ教室で知り合いました)。
 皆さん犬をきちんとシツケ、マナーを守っている常識のある方達ばかりで本当に勉強になります(犬の事以外にも「おすそわけ」をいただいたり、車で病院に 連れていってもらっています、いつもありがとうございます、クッキーママ!)。

 例えば前述の「専属の獣医師がついているから安心です」という項目については、専属の医師がいつでもショップにいて急患に対応してくれるわけではありま せん。多くは自分の病院で働きながら月に数回ショップに来るだけという状況が多いのです。専属というよりは単なる「通いのお手伝いさん」です。

 私達が不安を感じていた所へ、クッキーママが「あそこの獣医は親切に診てくれる、向こうの病院はダメ」という事を教えてくれました。
 しかも病院の診察代もショップの会員でいるのと大差なかったので驚きでした(会員になると絶対に安いわけではないので要注意)。

 それにショップでは入手できない飼い主さん達の実体験に基づく情報も、近所の犬好きの人達と交流を持つ事でどんどん得る事ができました。実際にクックの シツケはそうやって得た情報を元に行っています。

 また、妻は地元の区役所が主催した犬のシツケ教室で、主婦の方(ヴィーナママ;妙齢のお美しい方でまるでアイドルみたい!)と知り合い、今ではカル チャー教室に一緒に通っているほどです。
 クックを飼った事で本当に多くの人と知り合い、楽しい交流を持つ事ができました。これが犬を飼う事の付加価値なのかもしれませんね。

 さて、調子にのって長々と書いてしまいましたが、私達がクックを飼った事にまつわるお話はこの辺で一旦終わりにさせていただこうと思います。
 もちろん面白い話やタメになりそうな情報があったら、その都度追加させていただきます。

 それでは最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました!



19 トイレのしつけリターン


引っ 越すまでクックのトイレについての シツケは完璧だったと思います。いつも決まったスペースで用を足して外にハミ出してしまうことさえなかったのですから。
 ところが引っ越し後はトイレに連れて行ってもまったくしなくなってしまったのです。このクックの行動には私たちも途惑いました。

 当面は朝の6時頃と夜の8時頃に外に連れ出してさせていましたが、雨の日などはそうもいきません。やはり家の中でするようにシツケておかなければ困るよ うなことがあると思ったので、家の中でウンチとオシッコをするように再びシツケることにしました。最初にやったのは次のようなことです。

▼以前暮らしていたマンションで設置していたのと同じトイレ環境を再現。
▼クックが外でしたウンチをシーツの上に置いてトイレだと認識させる。

 ところがこれでもクックはしませんでした。そしてりこぴょんに「ウンチを置くと汚れてるから嫌がるんじゃない?」と言われて私も納得。でもクックの排泄 物で臭いをつけておくことが一番安心できると考えていたので、ウンチはやめてオシッコをかけることにしました。
 まず散歩に行って電柱にオシッコをかける段になったときに、用意していた容器でクックのオシッコを採取。手に結構かかっちゃいましたがたっぷり採れまし た(^^;

 家に帰ってオシッコをシーツの上にかけて様子を見ていると、クックはその上にオシッコをしてくれたのです! いやぁ良かった、良かった。意外と単純なこ とで、これでもう大丈夫だろうと思っていたのですが、汚れたシーツを綺麗な物に取り替えるとまたしなくなってしまったのです。でも一度トイレでしたからし ばらくオシッコをかけて慣らせば平気だと私たちは判断しました。

 その2日後、天候が崩れたこともあって丸一日外に出さないことがありました。
 そして私が自分の部屋(ベランダ)で煙草を吸っているとクックが窓越しに近づいてきましたが、いつものことなのでさほど気にも留めませんでした。ところ が吸い終って中に入ろうとして窓を開けると、クックはベランダに飛び出して仰向けになり反省のポーズをとるのです。

 ベランダに出ないようにするシツケは完成していたので「何かやらかしたな」と思ってクックがいたところを見回すと、絨毯の上にしっかりとオシッコの跡が ついていました。どうやらクックにとって新しいトイレはまだまだ排泄するには価しない場所だったようです。

 それから再びトイレの場所を教え、シーツを取り替えるときには必ず汚れたものを残すようにしてようやくクックはオシッコとウンチをトイレでしてくれるよ うになりました。

 さて今回のトイレのシツケはクックが初めてうちに来た時のトイレのシツケよりも手間と時間がかかっています。年を取ってからのシツケは時間がかかるとい うことなのか、住環境が変わるというのは犬にとってとても重大なことなのか、またはその双方なのかというのは不明ですが、私たちにとってもクックのことを 考える良い機会になりました。
 でも絨毯の上でするのはコレっきりにしてもらいたいですけどね(^^;)



20 4年9ヶ月目の出来事〜おタマ取 り の儀〜


 2005年10月2日、市内某所において、

 「でんちゅうの宮クック様」 のおタマ取りの儀がしめやかに行われまいた。

 さようなら、タマタマ

 今までクックに付いていてくれてありがとう 人(-- )


というわけで今回はクックの去勢という非常に重い出来事に遭遇しました。
 遭遇と言ってもクックに判断できるわけがありません。
 なぜならクックは犬なので、去勢なんて考えたこともないでしょう。
 そもそも去勢という概念どころか、
 具合が悪くなっても1人で病院には行けません。
 たとえ行っても症状を伝えることができません。

 去勢を決断して病院に連れて行ったのは私たち飼い主です。

 ……正直、悩みました。
 クックと暮らし始めてから悩んでいたと言ってもいいでしょう(-- )

 悩んで悩んで4年経って出した答えが去勢でした。

 この答えが 「正しい」 のか、それとも 「間違っている」 のかはわかりません。
 でもクックに詫びる術を持ち合わせていない以上、この判断が間違えだったと思うわけにはいきません。私たちのエゴですが、今回のクックの去勢は 「正しかった」 と強く信じることにしました。

 そして今ご覧いただいているように今回の件は公開することに決めていました。
 皆さんに読んでいただくことでこれから愛する犬や猫の 「去勢」や「避妊」 をお考えの方たちのご参考になるかもしれないし、私の贖罪の意味も少しはあるのかなと(苦笑

 と、これを書いている隣でクックは寝息を立てています。
 その姿を見ながら今回のポイントを考えてみました。それではこれらについてちょっとだけ語らせていただきますので、お付き合いくださいませm( _ _ )m


クックのタマをなぜ取る(去勢)ことになったのか?

 クックの睾丸は2つありますが、片方は生まれながらに体内にとどまったまま。
 成長したら降りてくるものと漠然と思っていましたが、その気配は一向にありませんでした。

 そうしているうちにクックは 「皮膚がデリケート」 ということが判明。
 アレルギーまではいかないようですが、病院の診断ではカビ(ただし原因は結局のところ不明)などに過剰に反応してしまうという難儀な症状でした。

 右の写真はまだ軽い状態ですが赤くなり、ひどいときは水ぶくれのようになってしまいます。

 クックは患部が痒いらしく噛んだり、舐めたりしてさらに悪化するということも多々ありました。
 抗生物質を与えると改善も見られますが長続きしません。また効果も期待したほどではありませんでした。
 さらに消毒用のシャンプーも皮膚に悪影響を及ぼしている可能性もあるという始末、これでは本末転倒でした。

 結局、投薬で抑えてはまた発症の繰り返しという堂々巡り。根治しない治療は空しさが募ります。

 そこで症状の打開策として「去勢」が浮かんできました。

 冒頭の麻呂さまの疑問も当然、「悪いのは皮膚なのになにゆえ去勢か?」 です。

 クックの去勢は 「吠えてうるさいから」 や 「交配させる予定がない」 という理由ではなく、皮膚の治りが遅いのは睾丸が閉じ込められたことでホルモンのバランスが崩れて悪影響を及ぼしているのでは? と考えられたからです。
 ただしこれはあくまでも可能性で、去勢しても治らないかもしれません。

 さらに睾丸は本来体外に出して冷やす必要があるため、体内にあることは決して良いことではありません。睾丸を包む袋の部分にシワがあるのも表面積を増や して放熱効果を高めているからであって、無駄にシワが刻まれているわけではないのです(^-^ ;)ゞ
 このように体内にある睾丸は悪性の腫瘍に化ける確率が高いということだったので、去勢することで悪性の腫瘍化するのを未然に防ぎ、かつ皮膚の症状も緩和 させることが狙いでした。

 さらにさらに、体内の睾丸が膀胱を圧迫しており、尿漏れの症状もありました。
 お腹を軽く押さえると、尿がポトッと落ちるのです。

 ここまで聞いて 「犬は人間と違って自然が一番! それに家族の一員という者の身体に勝手に手を加えるのはおかしい」 という私の考えもぐらつきました。


 睾丸が2つきちんと外に出ていて、歩くたびにプラプラ揺れていれば私はりこぴょんの「取った方がいい」 という意見には耳を貸さなかったと思いますが、この先クックの睾丸が外に出ることがなく、ましてやクックを苦しめているとあっては 「取る」 ことこそが自然だという結論に達しました。


 この写真は手術前日のクックですが、見ているとツ、ツライ……。

手術(病院の対応)

 いざ取るとなったら話は早いです。
 タマを取ることを決めたのが9月26日、実際の手術は10月2日。
 日程が合わなかったので1週間程度かかりましたが、本来決断さえすれば3日ほどで終わりそうな勢いです。

 当日、執刀する動物病院の院長に初めて会ったところ、自身あり気で簡単な手術だということを強調していましたが、こちらはクックを預ける以上はどんなに 簡単な手術でも不安があります。個人的にはその物言いが好きにはなれませんでした(-- )

 さらに院長に手術の内容を聞くことを約束した時間は2日の11時だったのですが、その時間に行くと院長は不在とのことで一旦出直す羽目に。

 午後になって院長が戻ってきたと連絡があったので再び出かけると、遅れたことに対する謝罪がなくてがっかり。
  「お約束の時間に遅れてすみません。では手術のご説明を〜」 くらい言ってもらうだけでも私の受ける印象はかなり違ったので残念です……。
 まあ、クックを治してくれれば他のことはどうでもいいだろうと二人でひそひそ話していました。

 さて、愚痴は終えてクックの診断と手術のご説明をさせていただきます。


手術前診断
何もわからずに診断を受ける クック。
つくづく動物の運命は飼い主次第ですね。
血液検査は問題なし。
心臓や肺なども異常なし。
体内にある睾丸の上、丸印の あたりにはリンパ節が通っています。
もし睾丸が悪性な腫瘍に冒されていたらその部分も心配ということでしたが、開腹して確認したところ異常は見つかりませんでした。
全身麻酔
「ショッカーめーー!」

じゃなくて、麻酔がよく効いています。
ついでに犬の足が真横に開くのを初めて知りました。
麻酔をしても大丈夫か、事前 の検査は欠かせません。ある意味、手術より大事かも。
オペ室に入って思いましたが 設備は圧巻。

若い頃に私がオートバイ事故で担ぎ込まれて処置を受けた手術室よりもはるかに立派です。
手術後
手術から1時間後。
眉間にしわを寄せてシブい顔をしていますが全身麻酔がまだ効いているため、意識が朦朧としています。

円内は傷口に付いていた血なのでご心配なく。
皮を寄せて縫合しているので 見た目も痛々しいです。
皮が馴染んで元に戻るまで1年くらいかかるのでしょうか?
これを見たとき思わず股間を 押さえてしまいました(苦笑

摘出したクックの睾丸です。
左が外に出ていたもので、右が体内にあったもの。体内にあった方は成長していないので左に比べて小さいです。

睾丸に腫瘍はなく、異常が見られなかったので病理検査するまでもないということでした。

 さて、我が家の家計を直撃した今回の治療費(税別)は以下のとおりです。
 クックと暮らしてから毎月貯めていた 「クック基金」 がなかったら危ないところでした(-- ;)

 この金額が高いのか安いのか、または相場なのかは数社から見積もりをとったわけではないので全然わかりませんが、「睾丸が体内に1個残っている去勢の ケース」 として一応の目安にはなるかと思われます。

 ちなみにこの動物病院ができたのは1年前くらいで、次々と建てられている豪華マンションで飼われているペットたちを主なターゲットにしています。
 店舗はきれいで設備も豪華、スタッフも多いうえに年中無休のスタイルもウケてお客さんは増えているようです。が、それらの経費は確実に治療費に上乗せさ れるので便利で豪華というのも考えものですな(-- )

 この金額についてご意見 ( 「高っ!」 「安っ!」 ) がある方は掲示板でお聞かせください。同じ出費は二度とありませんが、他の方のためにも相場は知っておきたいかなと。

診療費(2回) 2,000
レントゲン検査(4枚) 12,000
麻酔料(中型犬) 10,000
注射(静脈1回・皮下2回) 2,400
薬剤処方料 5,300
血液検査 6,000
入院費 3,000
超音波検査 1,500
手術費 30,000
合計 72,000


退院後

 ごはんも食べて縫合痕の経過も問題ないということで退院は手術の翌日、3日の午前10時半頃でした。人間なら1週間くらい入院していそうな感じですが、 さすが動物は丈夫?!
 
 そして帰ってきたクックはさすがに痛いのか普段と違いました。
 その様子をご紹介します。

■手術翌日
 ・電話が鳴っても吠えない
 ・玄関チャイムが鳴っても吠えない
 ・走らない
 ・飛びつかない

 痛覚が人間より鈍いとは言え当たり前と言えば当たり前かもしれません。人間なら手術の翌日に跳んだり跳ねたりはできないですからね。
 ただ食欲だけはありました。私たちが食事をしているとヨロヨロと歩いてきて、いつものように食べたそうな顔で食べ終わるまで見つめていました。

■2日目
 獣医師からOKは出ているので朝は早速りこぴょんと散歩に行ってきました。
 さすがにグイグイ引っ張りませんし、おしっこをする際の足の上げ方も低目。
 手術前のような大きな声はまだ出ません。

■3日目
 玄関のチャイムが鳴ると3〜4回吠えるようになりました。(やってほしくないことは)元に戻りつつあるようです(笑

 ただ患部が気になりました。
▲ご覧いただくとわかるように手術をした 痕が水ぶくれのようになっていたので気になりました。 ▲その水ぶくれ付近見るも痛々しいほどの内出血。

 私たちは気になったので病院に連絡すると、「傷口を舐めたり、舐めようとしたときにカ ラーが傷口に当たって腫れてしまったのかもしれません」 ということでした。
 少なくとも私たちが起きている間は舐めている姿は見ていないので、医師に言われたものの多少不安。しかしクック自身は食欲はあるし、別に苦しんでいるわ けでも何でもないので今日はこのままに。それでも様子がオカシイ場合は即、病院に行けるよう準備をしておきました。

■4日目
 朝はご飯を普通に食べて以前のように散歩を待つようになりました(雨が続いて行けませんが)。廊下を走り始めたのも今朝からです。
 朝の時点では内出血は治まってきたように見えましたが腫れは一向にひいていませんでした。
 ところが午後になると全体的に腫れが治まってきたのでその回復力に驚き。
 そのおかげでようやく写真もモザイクなしで載せられます。昨日まではさすがにひどくて…(-- ;)


■5日目
 円内は内出血や腫れが特にひどかった部分ですが、ほぼ治まりました。動物のたくましさにまたまた驚き。
 予定では明日は抜糸です。この調子なら問題はないでしょう♪


■6日目
 予定通り午前中に抜糸を済ませました。青い部分が糸(釣り糸のようなナイロン製)です。
抜糸は40秒ぐらいで完了。
これでクックの去勢手術は無事に終わりました。

 去勢手術は何事もなければ大体1週間くらいでOKのようですね。
 ただしお風呂はまだダメで 「あと3日待ってください」 と言われました(^o^ )

■10日目
 抜糸後は傷口が開いたり化膿したりなどはなく、去勢前と何ら変わりありません。よく吠えて元気そのもの! しかし近所で 「去勢して1ヶ月ほど経ったらおとなしくなった」 という実例があるので性格の変化が起こるかもしれませんね (^o^ )

  〜時は流れて〜

■1年後
 去勢によって「皮膚の弱さ」はほぼ、「尿漏れ」は完全に改善されました。
 これだけも去勢は正解だったかと思います。
 ただ去勢後によく聞かれるような「マーキングしなくなった」「吠えない」「おとなしくなった」などの点はクックの場合皆無です。気持ち、以前より元気 に、そして吠えるようになったような気がします。なんでやねん…(-- ;)


 結果はどうあれ、私たちの都合で手術を受けさせて痛い思いをさせてしまいました。

 それでも痛みに耐えて以前の元気な姿を取り戻しつつあるクック。

 長く元気でいてくれること、それだけが願いです。