詩 「やきもの『地球』」 060103/Hayakawa
太陽系第三惑星・地球。
四十六億年前、宇宙に誕生したとき、この星は灼熱のマグマにつつまれていた。
いま、私たちの住む星・地球は、海をもち、大気につつまれ、おだやかな相貌をしているが、それは時間の経過するなかで冷え固まった地表だけのこと。内部ではいまも原始の炎・マグマがとぐろをまいている。
燃え盛り、冷めつつある地球。
地球は一個のやきものである。
この星に生まれた私は、
日々、喰らい、排泄し、惰眠と快楽をむさぼり、欲をかき、汗をかき、他人に向かって少しばかりの気休めとたくさんの悪口をいい、口論し、議論し、ときにほめてもらいたい下心で賞賛し、
触し、交接し、慈しみ、
嫌悪に背を向けることもあるけれど、そこはニンゲンお互いさまだ。
宇宙年齢、百数十億年。
地球年齢、四十六億年。
ニンゲンの一生、八十年。
宇宙や地球の時間に比べれば、人間(ひと)の一生も、一週間のカゲロウの命も五十歩百歩。
私は毎日、土に触れ、土を捏(こ)ね、形づくったものを火にくべて、やきものを作っている。
朝から晩までロクロを挽くとき、土をはさむ手のひらの間に、土に触れる指先の向こうに、たまさか宇宙の広がりを感じる瞬間(とき)がある。
深夜にひとり窯を焚くとき、炎のなかに太古の地球を見る瞬間(とき)がある。
地球もまた、宇宙という大きな窯のなかの一個のやきものである。
この星に生まれた私は、この星のひとつぶ、ひとしずくをつかのま分けてもらい、今日もやきものを作っている。
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