珠玉のことば(2)

    「鑑草かがみぐさ
 ○ 世間の福
・さいわい・を思いくらぶるに、
     身やすく心楽しび、子孫繁栄を上とす、命
・いのち・長きを次とし、位高く富むるを下とす。
     此の・さいわい
の種は、明徳仏性・めいとくぶっしょう・なり。
     この種を蒔きてこの福を造る田地は 人倫日用の交わりなり。

 ○ 
明徳仏性・めいとくぶっしょう・の修行とは、すなわち後生仏果・ごしょうぶっかを得る修行なり。
     いかんとなれば、今生後生
・こんじょうごしょうすべて心に有り。
     今生に心なければ、此の身
しがいにて 今生のはたらきなし、
     後生に心なければ、極楽地獄の果を 受くるものなし。
     肉身には生死
・しょうじありといえども、心には生死なきによって、今生の心即ち後生の心なり。
                                  
LINK: 天上界 人間界 修羅界 畜生界 餓鬼界 地獄界
 ○ 総じて、
善を成すにはひそかに 人の知らざるようにとりなすを第一とす。
     少しにても人に知られんと思う心は
満心・まんしん・なり。
     満心はかならず魔縁
まえん・となる、魔縁あればかならず魔障・ましょう・あり。

 ○ 善悪の報いは 谷に声をあぐるが如くなれば、善を思い善をおこなうには かならず善の報い有り。
     悪を思い悪をおこなえば かならず悪の報い有り。 
     これ誠に天地感応
・てんちかんおう・の妙理・みょうり・なり。
 ○ まことに、善悪の報い、ひびきの声に応ずるがごとし。

 ○ 孝行というは舅姑
・しゅうとしゅうとめ・に良くつかうるのみに非ず。 
    
貪嗔痴・とんじんち・三毒を除き捨て 慈悲柔和の心を明らかにし、節を守り子に教え奴・やっこ・に情深く
    すぎわいの稼ぎを努め、かりそめにも偽りを云わず、無道
・ぶどう・をはたらかざるにまでも皆孝行なり。
                                               
LINK:「六つの煩悩」貪嗔痴・とんじんち・
 ○ それ人間の生楽
・せいらくは、身やすく(健康にして)心たのしぶ(安らか)に 極まれり。
 ○ 人間は義理を以って命
・いのち・の根とし、福・さいわい・の種とし、一生の楽しみとするものなれば、
     貧しくいやしきことは恥るところにあらず、くるしぶところにあらず。
     かりそめにも、不義無道
・ふぎぶどうの事は 恥ずかしき事にして、
     身を失い禍・
わざわい・を招く本なれば 恐れて除き去るべきことなり。 

 ○ 万物一原の理
 ことわり は、本来吾と人との差別なし、故に妬 にく みて人を憎み害 そこ なうは、
        我が身のためを思うにたれども、蓽竟 ひっきょう は、己が身を憎み害 そこ なうなり。
 ○ よく仁恕
 じんじょ の本心を興起 こうき して、陰隲 いんしつ を積みぬべきこと、人の大幸なるべし。
 ○ 人人
 にんにん の心の中に明徳 めいとく と名づく無価 むか の宝あり、これ姓命の宝、天下第一の宝なり。
    (3)へつづく