EDS疾病分類リスト

1997年のヴィルフランシュにおいて改訂された疾病分類リスト
エーラス・ダンロス症候群:
Peter Beighton, Anne De Paepe, Beat Steinmann, Petros Tsipouras, Richard J. Wenstrup

1998年8月発行の「American Journal of Medical Genetics」
に掲載された、「Loose Connections」からの転載。

南アフリカ共和国(P.B.)、ケープタウン、ケープタウン大学人類遺伝学科。ベルギー(A.DeP)、ヘント、ヘント大学病院遺伝医学研究センター。スイス(B.St)、チューリッヒ、大学小児科病院新陳代謝疾患・分子疾患研究部。アメリカ、コネチカット州(P.T.)、ファーミントン、コネチカット大学健康センター小児科学研究部。アメリカ、オハイオ州(R.J.W)、シンシナティ、小児病院研究財団人類遺伝研究部。

対応著者:医学博士Petros Tsipouras
コネチカット大学健康センター小児科
ファーミントン通り263番地
06030 コネチカット州ファーミントン
アメリカ

要約

エーラス・ダンロス症候群の分類は1960年代の後半に始まって、ベルリン疾病分類リストとして、形作られました。時を経るとともに、1988年に立証されて発表された診断基準が、それぞれの型のエーラス・ダンロス症候群、または、他の関係のある状態の表現型との間において、適切に識別されてないことが、明らかになりました。加えて、いくつかのエーラス・ダンロス症候群の分子レベルの基礎理論の解明によって、新しい特徴が、このグループの病気の特徴に加えられました。私たちは、エーラス・ダンロス症候群の、主として、それぞれの型の原因に基づいた分類の改訂を提案しています。主要(マイナーなものも含む)な診断基準は、それぞれの型で定義されていて、研究機関の所見は、可能な限りいつでも、補完されるようになっています。この簡単にされた分類は、エーラス・ダンロス症候群の間違いのない診断を容易にし、関連した病気の表現型の描写に貢献するでしょう。

キーワード:エーラス・ダンロス症候群、診断、関節過可動性、皮膚過伸展、脆弱な組織、動脈破裂、結合組織の遺伝病。

序論

エーラス・ダンロス症候群(EDS)とは、関節の過可動性、皮膚の過伸展、組織の脆弱性などの特徴を持った、遺伝性の結合組織の多様な病気の一群です。

EDSの分類は1960年代の後半に始まりました[Beighton, 1970, McKusick, 1972]。 そして、1986年のベルリン会議において、さまざまな型の用語体系がはっきりした形にされた疾病分類リストが提案されました[Beighton, 他, 1988]。最近の、EDSの生化学と分子レベルの基礎理論による解明の発展、合わせて治療経験の増加により、今、存在している疾病分類リストの完全化を可能にしています。私たちは、1997年6月にフランスのヴィルフランシュ・シュル・メールで、疾病分類リストを改定するための会合を設けました。この会合の主題を形成する私たちの提案は、EDSの多様な様態の理解の発展と改善を容易にするねらいをもっていました。
1)臨床かつ研究目的の画一化された診断。
2)病状の経過記録。
3)特殊療法。
4)遺伝カウンセリング。
5)研究の可能性のある範囲の確認。

私たちは、6つの主要な型をEDSの新しい簡略化された分類として提案します。私たちの、提案した分類を公式化した、基準となる原理は、一般医にとって役に立ちました。それぞれの型で、私たちは、主要な診断基準、マイナーな診断基準を定義しました。主要な診断基準には、高い特異性のある診断基準が含まれています。なぜなら、それらは、他の健康状態や一般の人々には、滅多に起こらないからです。一つまたは、それ以上の主要な診断基準の存在は、臨床診断の為か、高い徴候を必要として、いつでも可能な時は研究機関の確証を正当な理由とします。マイナーな診断基準は、特異的な診断には、重要なサインではありません。一つまたはそれ以上のマイナーな診断基準の存在は、主要な診断基準を欠いている(それらが診断基準を立証することが十分でない)といえども、特異な型のEDSの診断だとする意見があります。マイナーな診断基準の存在はEDS様の診断を思わせます。その症状は分子レベルの基礎理論が知られるようになった時に、解明されるでしょう。

方法論

著者らは、既に知られている臨床データと、ベルリン疾病分類リストの会議以後に手に入れた生化学と、分子生物学の観察を通して、提案された疾病分類リストに到達しました。この文書はその後、調査や批評などの他の分野で働く専門家たちの間に配布されました。

改訂された疾病分類リスト

A) 一般的なコメント

1. 皮膚の過伸展は中立的な箇所(機械的な力がかからないところ、または瘢痕のないところ(例えば、前腕の手のひらの表面))でテストされるべきです。これは皮膚を、抵抗を感じるまで、引き上げることで、測定されます。このテストは幼い子供たちでは、判断するのが困難です。なぜなら皮下の脂肪が大量にあるからです[Beighton, 1993; Steinmann, , 1993]。

2. 関節の過可動性はベイトンの計測法を使って判断するべきです[Beighton, , 1983]。関節の過可動性は、年齢、性別、家系、民族等の背景に依存します。9つのうち5つ以上の得点で関節過可動性と定義されます。得点は以下の項目により加点されます。

a) 小指の、抵抗の無い90度以上の背屈; それぞれの手で1点。
b) 親指の抵抗の無い前腕との並列の屈筋の様態; それぞれの手で1点。
c) 肘の10度以上の過伸展; それぞれの肘で1点。
d) 膝の10度以上の過伸展; それぞれの膝で1点。
e) 膝をいっぱいに伸ばした胴体の前屈で、手のひらが床にぴったりと着く; 1点。

3. しばしば同じ個所で頻発し、茶色がかった変色を引き起こす、自然に起きる斑状出血のような、あざのできやすいことを特徴とします。あざのできやすいことは早期の子供時代から見られやすい症状です。児童虐待は鑑別診断を考慮するべきです。出血が長引いて、正常な凝固作用を困らせる傾向があります[Beighton, 1993; Steinmann, , 1993]。

4. あざのできやすいことと、治りにくい傷の存在のような組織の脆弱性を特徴とします。傷は圧力のかかる場所(膝、肘、額、顎)で多く見られます。そして、薄い、委縮した、紙のような容貌を呈します。しばしば、傷は広がり変色して、傷の治りは良くないです[Beighton, 1993; Steinmann, , 1993]。

5. 僧房弁の逸脱(MVP)と大動脈基部の肥大はエコー、CT、MRIで診断されるべきです。僧房弁の逸脱は普通に見られる症状ですが、大動脈の肥大は普通ではありません。EDS患者の一部のものでは、進行する恐れがあります[Leier, , 1980]。 バルサルバ洞の最大直径が、年齢と体格による通常の限界を大きく超えた時は、大動脈基部の肥大と診断されるべきです[Roman, , 1989, Roman, , 1993]。僧房弁の逸脱には、厳格な診断基準が使われるべきです[Devereux, , 1987]。 これらの、大動脈の肥大が存在する人たちは、anulo動脈拡張症という特異な鑑別診断を考える必要があります。

6. 慢性の関節と手足の痛みは普通に起こる症状です。そして骨格のレントゲン写真は正常です[Sacheti, , 1997]。 よくあることですが、痛みの正確な解剖学上の位置を特定することを立証するのは難しいとされています。

7. よく定義されているけれども、後側弯型、多発性関節弛緩型、皮膚弛緩型は、古典型、関節可動亢進型、血管型に比べて、 かなり少ないです[Beighton, 1993; Steinmann, , 1993]。

B) 分類

1) 古典型

i) 遺伝形式

*常染色体優性遺伝

ii) 主要な診断基準

*皮膚の過伸展
*大きく開く委縮した傷(脆弱性組織の特徴)
*関節の過可動性

iii) マイナーな診断基準

*なめらかなビロードのような皮膚
*擬軟体動物の擬似腫瘍
*皮下スフェロイド(非悪性の塊がひきおこす、皮下の組織の穏やかな蓄積)
*関節過可動性の合併症(捻挫、脱臼、亜脱臼、偏平足その他;Beighton and Horan, 1969)
*筋肉の緊張低下、全身の筋肉の発育の遅れ
*あざができやすいこと
*組織の過伸展と脆弱性の症状(例えば、裂孔ヘルニア、小児期の脱肛、子宮頚管部の機能不全)[Steinmann, , 1993]
*手術の合併症(手術後のヘルニア、破裂)[Beighton and Horan, 1960, Steinmann, , 1993]
*疑いのない家族の病歴

iv) 原因と研究機関の診断:

proa1(V)またはproa2(V)のⅤ型コラーゲンの連鎖の電気泳動法における異常な動きが、古典型の家族構成員の全てからではないのですが、幾人からか検出されています。高精度のスクリーニングの方法がまだ発展してなかったので、 生化学的または分子解析で検出された異常が存在しないことは、Ⅴ型コラーゲンの欠陥の可能性を除外しません。家族の遺伝の連鎖の学習の提供は、出生前、出生後の診断に使用することができます。個体の変異の解析は、基礎研究として行われています。異種の染色体上の遺伝子座は文書化されました[Steinmann, , 1993]。いくつかの家族では、COL5A1またはCOL5A2遺伝子の、遺伝子内のマーカーへの遺伝子の連鎖は、中へ入れませんでした。コラーゲン原繊維の構造の変異は、いくつかの家族で電子顕微鏡により見つけることができました[Vogel, , 1979]。コラーゲン原繊維のカリフラワー状の奇形は、特徴的ですが[Hausser and Anton-Lamprecht, 1994]特有のものではありません。

v) 特別なコメント

1. 皮膚の特徴の重症度の範囲;軽度、中度、重度の症状を持つ家族は、(表)に記載されています。

2. 擬軟体動物の擬似腫瘍は傷に関連した肉質の病変です。それらはしばしば、強い圧力のかかる場所で発見されます(例えば、肘)。

3. スフェロイドは小さな皮下の球状の硬い塊です。しばしば、前腕や脛で動きまわり触診できます。スフェロイドは、石灰化しやすく、放射線機器で検知可能です。

4. 頻発する関節の亜脱臼は、しばしば、肩、膝蓋骨、側頭骨、下顎骨の関節でおこります。

5. 性交疼痛と性的機能障害は、古典型と他の型のEDSの、副次的な訴えです[Sorokin, , 1994]。

6. 心身の疲労は、よくある訴えです。

7. 特殊療法については、[Steinmann, , 1993]を見てください。

2) 関節可動亢進型

i) 遺伝形式

*常染色体優性遺伝

ii) 主要な診断基準

*皮膚に関わること(過伸展かつ、または、なめらかなビロードのような皮膚)
*一般関節の過可動性

iii) マイナーな診断基準

*頻発する関節の脱臼
*慢性の関節や手足の痛み
*疑いのない家族の病歴

iv) 特別なコメント

1. 皮膚の過伸展は不定です。関節可動亢進型の患者の委縮した傷の存在は、古典型の診断を暗示します。

2. 関節の過可動性は最も有力な、臨床上の特徴です。肩、膝蓋骨、側頭骨、下顎骨のような関節は、しばしば脱臼します。

3. リューマチ診療所においては、多くの数の患者が広範な関節過可動性の様相を呈します[Beighton, , 1983]。そのような人たちと、EDSの関節可動亢進型の人たちの間で、もしかしたら、思いがけない相互関係があるとする、重要な討論が存在します。

4. 筋骨格の痛みの始まりは早く、慢性化し、弱体化させます[Sacheti, , 1997]。解剖学上の分布が広く、圧痛点は、ときどき、明るみに出されます。圧痛点は、親指、または2本指、または3本指で、触診をした時に4kg以下の強さで痛みを与える範囲として定義されています[Wolfe, , 1990]。

5. 特殊療法については、[Steinmann, , 1993]を見てください。

3) 血管型

COL3A1によりコードされるⅢ型コラーゲンの連鎖であるproa1(Ⅲ)の構造的な欠陥が原因とされます。

i) 遺伝形式

*常染色体優性遺伝

ii) 主要な診断基準

*薄く透き通るような皮膚
*動脈、消化管、子宮の脆弱性または破裂
*広範囲に渡るあざ
*特徴的な顔貌

iii) マイナーな診断基準

*先端早老症
*小関節の過可動性
*腱と筋肉の断裂
*湾曲足、内転尖足(内反足)
*早期に発症する静脈瘤
*動静脈瘻、頸動脈瘻(内頸動脈海綿静脈洞瘻)
*気胸/血気胸
*歯肉後退
*疑いのない家族の病歴、近親者の突然死

2つ以上の主要な診断基準が存在することは、大いに診断の徴候があり、研究機関でのテストが強く推奨されます。

iv) 原因と研究機関の診断:

研究機関の診断を必要とする方法: 1) 構造的に変異したⅢ型コラーゲンが分離の不足を原因とする繊維芽細胞によって産生されること、タンパク質合成後の過大修正、熱による不安定性、かつまたはプロテアーゼに対する感度の証明。 2) COL3A1遺伝子による変異の証明[Steinmann, , 1993]。

血清レベルのⅢ型プロコラーゲン・アミノプロペプチドの確定は、生物学上の可変性、付随する状態を混同すること、 細かな変更の分析検査の低レベルでの検出の必要性による、実験的なものです[Steinmann, , 1989]。

v) 特別なコメント

1. 顔つきは、幾人かの患者において独特な特徴があります(Fig.1)。特に、顔と手足に、皮下脂肪組織の減少がみられます。

2. 関節の過可動性は普通、指などの小関節に限られます。

3.  自然に起こる動脈破裂は、30代または40代に発生する確率が高いのですが、それ以前に発生することもあります。一般に、中径の動脈で起こりやすいです。動脈破裂は突然死の最も一般的な原因です。[Pepin, , 1992]。

4. 腹部やわき腹の激しい痛み(広範または局所的)は、動脈または消化管の破裂の一般的な初診の症状であって、緊急に調べるべきです。非侵襲的な処置が推薦されます。

5. 皮下の静脈の走行は、特に、胸腹部ではっきりと見えます。

6. 初めての合併症としてのひどいあざは、児童虐待か、または、血液関係の病気と考える必要があります。慢性のあざと異常な傷の形成の背景には、EDS古典型からの鑑別が必要です。

7. この状態の、家族の病歴を欠く子供の診断は難しいです。

8. 妊娠においては、出産時の子宮破裂、分娩前、分娩後の動脈からの出血などの合併症がありえます。出産の間の、膣と会陰部の裂傷は持続します。

9. 術中と術後の合併症(例えば裂開の傷)は、しばしば起こり、かつ重篤です。

10. 特殊療法については、[Steinmann, , 1993]を見てください。

4) 後側弯型

コラーゲン修飾酵素である、リシル-ヒドロキシラーゼ(PLOD)の欠損を原因とします。ホモ接合性または、突然変異のPLOD対立遺伝子の為のヘテロ接合の複合が、欠損の結果となります。

i) 遺伝形式

*常染色体劣性遺伝

ii) 主要な診断基準
*一般関節の緩み
*出生時の重度の筋肉の緊張低下
*出生時の進行性の脊柱側弯
*強膜の脆弱性と眼球の破裂

iii) マイナーな診断基準

*委縮した傷を含む、組織の脆弱性
*あざができやすいこと
*動脈破裂
*マルファン症候群っぽい体質
*小角膜
*放射線検査で注目に値する骨減少症
*家族の病歴、すなわち血縁者に影響するもの

幼児で、3つの主要な症状が存在することは、診断と研究機関のテストを行うことが正当な事を暗示します。

iv) 原因と研究機関の診断:

推薦できる研究機関のテストは、総合的な泌尿器のヒドロキシリシル・ピリジノリンとリシル・ピリジノリンのHPLCによる加水分解の後で起きる化学結合の測定です。そのテストは、容易に利用できて、高い程度の感受性と特異性を持っています[Steinmann, , 1995]。繊維芽細胞の中の活動的なリシル・ヒドロキシラーゼと(または)PLOD遺伝子変異の解析の確定が基礎調査のみ行われているにもかかわわず、皮膚のヒドロキシリシンの確定もまた容易です。

v) 特別なコメント

1. 筋肉の緊張低下は、とてもはっきりしていて、全身の筋肉の発育の遅れを招きます。この状態は、締まりのない幼児の初期の鑑別診断と考えられるべきです[Wenstrup, , 1989; Steinmann, , 1993]。

2. この表現型はたいていとても厳しいものです。しばしば、20代または30代で歩行の自由を失う結果となります。

3. 強膜の脆弱性は、小さな傷で眼球の破裂をまねくことがあります。この状態は、ブリットル・コルネア症候群から、分化したとすべきです[Royce, , 1990]。これは現在、重篤な眼の合併症は、しばしば、以前、それゆえに、この型の記述子の変化と思われていたよりも、とても少ないことが明らかです[Wenstrup, , 1989; Steinmann, , 1993]。

4. マルファン症候群の厳しい新生児の型は、鑑別診断を考えられるべきです。

5. 通常の活動性のリシル・ヒドロキシラーゼと、皮膚に含まれる通常のヒドロキシリシンの状態の、重症度の低い型のレポートがあります(OMIN #229200)。この型はとても珍しいです。

6. 特殊療法については、[Steinmann, , 1993]を見てください。

5) 多発性関節弛緩型

Ⅰ型コラーゲンの連鎖である、proa1(I)[タイプA]またはproa2(I)[タイプB]の、エキソン6のどちらかの遺伝子のスキッピングによる、アミノ基の末端の不足に至る処理による変異が原因とされます。

i) 遺伝形式

*常染色体優性遺伝

ii) 主要な診断基準

*頻発する亜脱臼を伴う、厳しい一般関節の過可動性
*先天性両側性股関節脱臼

iii) マイナーな診断基準

*皮膚の過伸展
*委縮する傷を含む、組織の脆弱性
*あざができやすいこと
*筋肉の緊張低下
*後側弯
*放射線機器により見られる軽い骨減少症

iv) 原因と研究機関の診断:

生化学の欠陥は、皮膚のコラーゲンまたは皮膚の繊維芽細胞の培養の結果、引用された、pNa1(I)またはpNa2(I)の連鎖の電気泳動法の実演により確定されます。完全な、または部分的なCOL1A1またはCOL1A2のcDNAにおけるエキソン6のスキッピングの、管理された実演は、それぞれに、変異の解析のフォローによって行われることができます。[Steinmann, , 1993]。

v) 特別なコメント

1. 先天性股関節脱臼は、全ての生化学的に証明された個体に存在しています。
2. 低身長は、厳しい後側弯型と(または)股関節脱臼の合併症を除いて、多発性関節弛緩型の特徴ではありません。
3. ラーセン症候群は鑑別診断を考えるべきです。
4. 特殊療法については、[Steinmann, , 1993]を見てください。

6) 皮膚弛緩型

対立遺伝子の変異のホモ接合性またはヘテロ接合の合成による、Ⅰ型プロコラーゲンのN末端ペプチターゼの不足が原因とされます(多発性関節弛緩型との対比では、Ⅰ型コラーゲンの連鎖の基質の位置を含む変異が正当とされています)。

i) 遺伝形式

*常染色体劣性遺伝

ii) 主要な診断基準

*厳しい皮膚の脆弱性
*たるんだ、冗長な皮膚

iii) マイナーな診断基準

*やわらかな、パンケーキ様の皮膚組織
*あざができやすいこと
*胎児の前期破水
*大きなヘルニア(へその近く、鼠蹊部)

iv) 原因と研究機関の診断:

生化学の確認が、プロテアーゼ抑制遺伝子の存在する皮膚から抽出された、または繊維芽細胞から保持されている、Ⅰ型コラーゲンからのpNa1(I)とpNa2(I)の連鎖の、電気泳動法の実証基礎になっています。Nプロテナーゼの活動の測定は、基礎調査のみ行われています。

v) 特別なコメント

1. 皮膚の脆弱性と、あざのできやすさは重大です。傷の治りには障害がなくて、傷は萎縮しません。

2. 顔の皮膚の冗長性は、あざと皮膚の脆弱性が皮膚弛緩症の症状でないとしても、皮膚弛緩症と似た表現の結果となります。

3. その名前は、以前から牛や羊やその他の動物に認められていた生化学的な不足と、よく似た表現型からつけられました。

4. 報告されている患者の数は少なくて、そして表現型の分布は広がるかもしれません。

EDSのその他の型

EDSⅤ型(Ⅹ連鎖型)は単一の家系で起こると説明されていました[Beighton and Curtis, 1985]。

EDSⅧ型は、歯周の脆さの症状が加わるのを除いて、古典型と似ています[Stewart, , 1977]。これはEDSの稀な型です。この症候群の、自律的な存在としての、存在は、はっきりとしていません。

EDSⅨ型は、以前、「オクチピタル・ホーン症候群(メンケス症候群Ⅹ連鎖型劣性状態の対立遺伝子)」として再定義されていました。(OMIM # 309400)[Beighton, , 1988]。

EDSⅩ型はただ1つの家系でのみ起こると説明されていました[Arneson, , 1980; コメントはこちら Steinmann, , 1993]。

「家族性関節可動亢進症候群」と呼ばれていたEDSⅪ型は、以前、EDSの分類から削除されていました[Beighton, , 1988]。そのEDSとの関係性は、まだ定義されてません。

おわりに

エーラス・ダンロス症候群の、臨床の変わりやすさと、遺伝子の多様性は、長い間、認められてきていました。分類の存在は[Beighton, , 1988]は、臨床の症状と遺伝子の様式に基づいた様々な型のEDSを区別しています。このアプローチは妥当で有用にもかかわらず、それは、個人と半定量的な、例えば皮膚の過伸展、関節過可動性、組織の脆弱性、あざのできやすいこと、その他など、主観の解釈の徴候を重く信頼します。その結果は、しばしばEDSの型と、EDSの広い診断に基づく表現型のよく似た状態を包括するものに関して、混乱した診断となります。

既存の分類が公表されてから、臨床での発見、経過記録、EDSの様々な型の分子生物学の基礎などの、いくつかの報告が、説明されました。この新興の情報は、以前のEDSⅠ型とEDSⅡ型の間の表現型の境界の多少の人工的な性質を明らかにしました。他の例は、しばしば起きる、EDSの型にあるような関節過可動性の誤診です。そこで、私たちは、以下の目的で、既存のベルリン疾病分類リストを考え直しました。
1) EDSのそれぞれの型について様々な臨床症状の特異性に基づいた診断基準の導入により診断の定義を洗練します。
2) 研究機関の発見したそれぞれの型の診断の定義の使用を、可能な限り、はっきりした形にします。
3) 普通の一般医達がもっと理解しやすいように、既存のEDSの分類を簡単にします。

提案された分類は、EDSの6つの主要な型として定義されます。検索のキーワードとなる語句は、何であるか、私たちの意見としては、それぞれの型の、ある疾病に特徴的な症状を捕らえます。さらに、それぞれの提案された型の分子生化学の基礎は、どちらもはっきりと定義されているか、または、新興的なものとされています。だから、私たちは、最近の根拠は、それらはCOL5A1またはCOL5A2の遺伝子の変異のような共通の原因を持つことができると、示しているので、以前、EDSⅠ型とEDSⅡ型が一つの実体として併合されることができると知られていたものを、古典型として提案されると結論を下しました。そのうえ、以前の分化は、表現型や遺伝子型の相関関係のせいと考えられることができる皮膚の特徴の、厳格な広がりが最初に基礎とされていました。そして、必ずしも原因に基づく区別はありませんでした。関節可動亢進型の為に提案された診断基準は、他の型のEDSと、さらに表現型が関係している他の病気と、はっきりとした区別を可能にするでしょう。私たちは、臨床症状とCOL3A1遺伝子の変異の存在に基づいて、EDS血管型を定義しました。同様に、私たちは、臨床症状と特有の生化学的な異常の存在または分子的な区別に基づいて、後側弯型、多発性関節弛緩型、皮膚弛緩型を定義しました。以前の、EDSⅤ型は、分子生物学の基礎上、不明なまま残されている、珍しい変種です。現在、EDSⅧ型として知られている実体の臨床症状は、このように、その病態はさらなる臨床と分子的な情報を求めていて、不確かなままです。

私たちは、これらの改訂された基準は、エーラス・ダンロス症候群の臨床診断のための新しい暫定的な標準にもかかわらず、その遺伝子の異種と表現型・遺伝子型の相関関係と、これらの状態の様々な外観の臨床の研究の、調査のため、役立つことを、望んでいます。この発表の更なる目的は、EDSと部分的に重なった病気との、よりはっきりした区別と、それらの臨床上の確立と調査の評価を手伝うことを、認めるであろう臨床の診断基準を供給することです。

謝辞

この事業は、アメリカのEDS患者会とイギリスのEDS患者会によって、後援されました。いくつかの全国的なEDS団体の代表者たちは、同時に、彼ら自身の最初の国際会議を開催しました。この意見の一致が、連絡、相互作用、意見交換、関係している素人に、EDSに関する基本理念の発展への価値のある情報を供給することを可能にすることを、促進しました。著者たちは、原稿への論評、批評に対して、Peter Byers, William Cole, Michael Pope, Peter Royce, Andrea Superti-Furgaらの医師たちに感謝を表明します。

一覧表
エーラス・ダンロス症候群の分類

遺伝形式AD…常染色体優性遺伝
遺伝形式AR…常染色体劣性遺伝
遺伝形式XL…Ⅹ連鎖型    

新しい分類

古い分類

OMIM #

遺伝形式

古典型

Ⅰ型(重症型)

Ⅱ型(軽症型)

13000

130010

AD
AD

関節可動亢進型

Ⅲ型(過可動型)

130020

AD

血管型

Ⅳ型(動脈斑状出血型)

130050

(225350)

(225360)

AD

後側弯型

Ⅵ型(眼性脊柱側弯型)

225400

(229200)

AR

多発性関節弛緩型

ⅦA型とⅦB型
(先天性多重関節弛緩型)

130060

AD

皮膚弛緩型

ⅦC型(ヒト皮膚弛緩型)

225410

AR

その他の型

Ⅴ型(Ⅹ連鎖型)

Ⅷ型(歯周炎型)

Ⅹ型(フィブロネクチン不足型)

Ⅺ型(家族性関節過可動性症候群)

早老型

明記されていない型

305200

103380

225310

147900

130070

XL

AD

?

AD

?

参考文献

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