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レオナール・フジタ展



 北海道立近代美術館で開催されているレオナール・フジタ展はかなり大規模で、フジタがパリに行ってピカソやモディリアーニの影響を受けた時代から、ルーブル美術館に通って研究し、独自のスタイルを作るまでの流れを見ることができた。
 今回はフジタの技法について述べてみたい。

 まず、あの有名な乳白色のマチエール(視覚的な材質感)である。
 フジタはパリに行ってピカソやモディリアーニを知って、今まで受けていたアカデミックな教育では全く太刀打ちできないことを知る。

 さらにルーブル美術館では、ラファエロやルーベンスなどの完璧な絵画組成の古典技法が待っていて、これでもかと打ちのめされる。
 フジタの時代の日本では完璧な絵画組成の古典技法に触れることなど、ほとんど不可能で、「今まで自分のやっていた油絵は、油絵ではない。」と思ったに違いない。

 古典技法のいくつかは、木の板に描かれていたものも多く、宝石のように輝いて艶があり、触ってみたくなるようなマチエールである。
 それを見てフジタは、自分の油絵にも古典画の巨匠のようなマチエールがほしいと思ったのだろう。

 そしてフジタは、まずキャンバスにペインティングナイフでシルバーホワイトを、厚く二層か三層塗りつける。さらにサンドペーパーで粗目から徐々に細目へと、丁寧につるつるの乳白色のマチエールができるまで磨きをかけた。
 「おお!できた!なんてすてきな基底材だ!!」

 このフジタの作り上げたマチエールは、西洋画の巨匠たちから学んだにもかかわらず、なぜかすごく日本的である。
 キャンバスをつるつるになるまで完璧に磨き上げる超繊細なマチエールに、日本の伝統工芸のような美しさがある。

 フジタは、このオリジナルキャンバスに、まるでペンで描いたような細い線を、面相筆で息を止めて引いていく。一瞬でも気を抜くと、線はぶれてしまい台無しになってしまう緊張の連続。

 さらにヌードにモデリング(立体感を出す))をするために、半透明のグラッシーをかけていく。
 圧巻は茶色のグラッシーで描いた髪の毛である。
 ヘアーの艶と軽やかさと質感を、同時に仕上げることに成功している。



      レオナール・フジタ展
      2008年7月12日(土)〜9月4日(木) 北海道立近代美術館