.    からすの学校  第1回〜第77回

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橋本郁三先生を囲んで(’05年6月12日)

 植物生態学者であり、「花と山の幸」や「採って食べる山菜 ・木の実」ほか多くの著書を上梓されている 橋本郁三先生を囲む会 が開催されました。
 午前中は、この周辺の自然にまつわる興味深い話をお聞きしたり、各地で取材されたビデオを拝見。 午後は森林エリアを散策しながら、植物のあれこれや、食し方などをレクチャーしていただきました。
 今回の催しが実現できたのは、当園地に深い思い入れのある人々が立ち上げた 【からすの学校】の熱意と、橋本先生のご厚意からです。 皆さんの願いは、「この公園が、単に遊んで楽しい場所というだけでなく、品の良い公園になって欲しい」 ということ。
 これからも、同様の集いを継続したい思いが主催者にあるとのことです。 「こんなこと・あんあなこと、や
ってみたら」のご提案があれば、お気軽にどうぞ。



    『食べられる野草』は、あちらこちらに生えています


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冬芽観察会(’06年1月28日)

 この時期、あちこちで開催されている「樹木の冬芽観察会」。当烏川渓谷緑地では、今回とても素敵な講師をお招きすることができました。 元信州大学助教授の馬場多久男先生。 ご存知、『葉でわかる樹木』『冬芽でわかる樹木』等の著者にして、 楽しくもわかりやすい観察会講師として大評判の方です。
 午前中はフィールドに出て、気になる樹木の冬芽の観察と採取。じつはこのなにげない採取にも、注意すべきことやテクニックがあるのです!  午後は屋内での検索実習。 興味深いスライドを見ながら観察のポイントをおさえます。そのあと、図鑑を使っての検索方法を学び、いざ実践。参加者の多くの方が『冬芽でわかる樹木』を自己所有 されていましたが、今までは検索の途中で挫折された方が少なからずおられたようです。今回その使い方を知り、まさに目から鱗、渡りに船。 ありがたいバイブル 誕生です。





 今まで、こんなに真剣に冬芽を観たことがあったでしょうか?


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アニマルトラッキング(’06年2月11日)

 からすの学校・第5回は、スノーシューを使ったアニマルトラッキング (アニマルトラッキングについては、→こちら)。 講師には岸元 良輔さん〔長野県環境保全研究所主任研究員〕をお招きしました。 わかりやすく楽しく、有意義なひとときでした。
 出会えた足跡は、テン、リス、サル。 痕跡は、ツキノワグマの‘くま棚’とその爪あと、ホカホカのサルの糞 などなど。 また、サルの食痕(エサを食べた痕跡)がタラノキ、ノリウツギ、ニワトコ 等の冬芽にありました。
 足跡の種類や数は、むしろ 水辺エリアのほうが多いようでしたが、今回はスノーシューハイクも楽しんでいただきたく、森林エリアでおこないました。 ほどよく締まった雪質、スノーシューには格好のフィールドとなっていました。





         森林エリアで動物探し


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昆虫あれこれ(’06年3月11日)

 からすの学校・第6回は、「芋虫のつぶやき 〜 虫の目で見る安曇野の自然とこどもたち」と題して、 三郷昆虫クラブ世話人の那須野雅好さんに講演
していただきました。
 知らなかった昆虫、名前は知っているけど じっくり見たことがなかった昆虫、知っていたつもりだけど「へ
ぇ〜 そうだったんだぁ!」と認識をあらたにする昆虫
…等々。説得力ある映像に思わず引き込まれると同時に、自然との対峙のしかた・そこに棲む昆虫の見方など、最近は忘れていた 「あのころ」を思い出
された方も多かったのではないでしょうか。 関心をもたなければ見のがしてしまいそうな小さな生命。どんな場所であっても、それら 小さな生命体と共存していることに、いまさらながら気づいたのでした。



       虫のことなら、この人に訊け


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春の花 感(観)察会(’06年4月8日)

 からすの学校・第7回は、長野県環境保全研究所)大塚孝一さんによる 【春の花 感(観)察会】
ザゼンソウを中心に、早春の植物を観察しました。
 まずは室内でスライドを見ながらザゼンソウについてのお勉強。ザゼンソウ・ヒメザゼンソウ、そしてナベクラザゼンソウについて、書物からでは得られない研究者ならではの 興味深いお話しに「へぇ〜 知らなかったぁ 来てヨカッタァ」の声を多数聞くことができました。(上の写真)手に持っているのはザゼンソウの仏炎苞(ぶつえんほう)。 「この株は20年以上の年数を経ているのでは」 とのこと。そう!ザゼンソウは(草のイメージからはほど遠い)長生きな植物なのです! ところで
… まさかとは思いますが「掘って持ち帰ろう」などという考えはくれぐれもしないように。 なぜなら、掘り出すためには1mあまり の巨大な穴を掘ることになり、結局途中であきらめざるをえないからです。





  教材用に掘り採った株は、保全研究所で栽培されます


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葉でわかる樹木(’06年6月11日)

 からすの学校第8回は、馬場多久男先生による 「葉でわかる樹木」観察会。午前は室内でスライドを観ながらみっちりと理論武装。 午後は絶好のフィールドに出て検索&同定の実習をおこないました。
 検索図鑑がどんなに良く出来ていても、その本来の使い方(著者の意図) を知らなければ、調べるのに手間どることがあります。今回はテキストの著者である馬場先生 自らのご指導により、その検索方法 ・手順を学ぶことができました。
 動植物に興味をもったとき(もたせたいとき)、情報を得るためには、"共通の識別記号"としての標準和名を知る必要があります。「名前なんか覚える必要はない、感じればよい」 という意見もありますが… 
それって、本当に好きになったと言えるのだろうか(¨)?



   樹種が豊富な森林エリアは、格好の観察フィールド


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ライトトラップ(’06年7月22日)

 からすの学校第9回はライトトラップ。 光に集まる虫たちの観察です。 講師は三郷昆虫クラブの中田信好さん、スライド解説は同じく 那須野雅好さん。
 前日までの大雨騒動で気分も沈みがちだったのですが…。 人里離れた森林エリア、夕闇の中で過ごしたひと時は、ブルーな気持ちを払拭してくれました。 …と、そんな私事はともかく、参加者の皆さん(地元の昆虫大好きっ子をはじめ、遠くは埼玉から参加のお父さんと虫好きの息子さんや、偶然来園して知ったお孫さんとお爺ちゃんほか) も、 きっと楽しんでいただけたことでしょう。灯りめがけて次々と飛び込んでくる虫に子供達は大騒ぎ。 思ったよりも種類は少なかったのですが、それはともかく、街中を離れ暗闇の中で過ごし、 その闇に棲む生物の存在を実感していただければ、主催者側の企て大成功です。



 真っ暗闇となる新月の三日前。幸運にも雨のあがった日


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変りだね竹とんぼづくり(’06年7月30日)

 からすの学校第10回は 「クラフト教室〜変りだね竹とんぼづくり〜」。 講師は吉沢 嘉寿さん〔なんでも手づくり吉沢学校 主宰〕
危ないからと、刃物を持たせないのが世の流れ。今回は怪我をしないナイフの使い方を教わり、子供だけでなく大人にも有益な講座となりました。 講師の吉沢さんは、子供のナイフの動きが止まると、そばに行き 「何か困っていますか?私はそのために来たのですから」 と巧みな話術で 参加者をほのぼのさせながらも、的確な指導に皆さん「なぁるほど」と納得。
 子供の頃、竹とんぼ作りで「もやっ」とした思いをもったままのお父さん。 じつは羽と支柱の比率に秘密があることを知り、長年の疑問が解けたよう。  完成品が、みごとな軌跡を描いて飛んだ時、子供たちの尊敬の眼差しを浴びて、とっても得意そうでした。



  ある参加者の方いわく… 「心が豊かになった気がする」


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水辺の生き物観察(’06年8月6日)

 からすの学校第11回は 「水辺の生き物観察」。 講師は北野 聡さん〔長野県環境保全研究所〕。舞台裏をあかしますと…予定していた採集場所が先日の豪雨による被害で使用できなくなり急遽変更。 今回初めて観察する場所でしたので、水質や生物の種類を気にしながらの開催でした。
 水遊びを兼ねながら、楽しくかつまじめに採集した結果、汚い水に棲むミズムシや、少し汚い水に棲むコガタシマトビケラ もいましたが、 一方できれいな水に棲むカワゲラ、ナガレトビケラ、ヒラタカゲロウ、ウズムシ、ガガンボ等、多くの種類を確認しました。この結果から、「水質はきれい」 と判断できそうです。
 それにしてもあの豪雨の日、大荒れの濁流の中でこのちいさな虫たちが、どのように過ごしたのかと思う時、儚い生命体に畏敬ともいえる感情がわきます。



   一見、なにもいない… でも、そこには多くの生物が!


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里山の動物(’06年9月3日)

 からすの学校・第12回は、吉田利男先生による「里山の動物」。 午前は森林エリア ・森の家での講義、午後は園内を散策しながら、このあたりに棲む動物についてのあれこれをうかがいました。 実際に見ることができた動物はいませんでしたが、むしろ それが本来の野生の姿。 平気で人前に出てくるサルなどを、不自然に思ったり 問題視すべきなのでしょう。 ただし、動物が棲息している証(あかし)はあちこちにありました。〔…クマの爪跡やクマ棚、リスの食痕、キツネやカモシカ、ノウサギの糞 などなど〕
 開園以来これまでに確認できた哺乳動物は … ニホンザル、カモシカ、キツネ、タヌキ、テン、イタチ、
オコジョ、ノウサギ、ホンドリス、イノシシ、ツキノワグマ、ヤマネ、ムササビ、ヒミズ、アカネズミ、モグラ
など。 





参加者の多くが、ここに棲む動物の種類の多さに驚かれます


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きのこ について(’06年10月8日)

 からすの学校 ・第13回は、竹内嘉江さん〔長野県林業総合センター〕による 「きのこ について」。
 きのこの見分け方(といっても、毒きのこ ・食べられるきのこを見分ける法則はないので、ひとつずつ覚えるしかありません)や、研究者ならではの興味深いエピソードをお聞きしました。
 ところで、講師はマツタケ研究で高名な方。広汎なきのこの話題を拝聴するとともに、質問はいつのまにかそちらのほうに…。思わず身を乗り出す参加者もいて、やはりマツタケには多くの人(日本人に限るのだろうが)を惹きつける格別の魅力があるようです。  ただし、今回のからすの学校の目的は【菌類】につ いて学ぼうというもの。単に食べられるか否かではなく、きのこの奥深い生態にも話しが及び、一味違っ
た講座になったのではないでしょうか。



名前がついていないものの方が多い菌類。奥深い世界です


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地質を探る(’06年12月2日)

 からすの学校 ・第14回は、木船 清さん〔日本地質学会会員〕による 「地質を探る」。
 まずは室内で、観察の仕方や、地形 ・地質の予備知識を講義していただいた後、外に出て 河原の石の観察。 そこここに、なにげなくころがっている石くれが、 数千万年から一億年以前のものであることに 改めて感慨を深くしました。 その後 園地から2キロほど移動して、活断層の観察。 採石のために山の一部が掘削されて、断層観察の絶好のポイントになっています。(現在は樹木を植えて植生回復中)
 時が過ぎるのを忘れてしまう講座。 終ってみれば、フォッサマグナの壮大な話から、地質についての講師の考察、さらには安山岩の名の由来は〔南米・アンデス脈の石 → 安山〕 という豆知識まで、レベルが高いながらも、理解深まる楽しいひと時でした。





       「ほら あそこに 活断層が!」


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樹木の冬芽観察(’07年2月24日)

 馬場多久男先生による、冬芽観察講座を開催しました。 予定人数を超え、会場の定員ぎりぎりまで受付けさせていただいたため、窮屈な思いをされたことを お詫びいたします。 先生の人気の高さを再認識するとともに、どちらかというとマイナーな樹木観察ポイントである〔冬芽〕に興味をもたれる方が少なからずおられることに、ちょっと感動!
 まずは園内の冬芽観察&採集。 観察に適する芽が、枝のどの部分に出るかを知ることが重要です。 併せて、樹にダメージを与えない配慮も求められます。 腐朽させないように、あるいは 今後どのように再生するかを予測しながら、ひとつひとつ切ります。
 採集した後は、室内での講義と検索実習。 検索の手順を理解すれば、驚くほど短時間で同定ができるようになります。 さあ、あとは ひたすら実践!




     寒い一日、舞い降りる小雪もなんのその


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外来生物問題(’07年3月10日)

 からすの学校 ・第16回は、前河正昭さん〔長野県環境保全研究所〕による『外来生物について』。
前半は、外来生物の現状や問題点を解説していただきました。アライグマやミンク、ブラックバスといった大型のものから、ザリガニ、セイヨウオオマルハナバチ など、普段は見落としがちな小さな生き物まで。人間の恣意的行為に起因する生態系の混乱や、その奥深い問題を再認識された方が多かったのでは ないでしょうか。
後半は、ニセアカシア林の林相転換の研究として、その管理方法や管理体制などを講義していただきました。 実験によって、巻き枯らし(※)による駆除が、伐採に比べて萌芽(ぼうが:芽が出て再生する)の発生を 低く抑える結果が確認されたとのこと。 今後の管理において貴重な指針となるデータです。




     .(※) 形成層を含む樹皮を、ぐるっと一周剥ぐことにより、篩部組織が断たれ養分不足になったが根が衰退して枯れる。
         なお、人工林(針葉樹)における作業方法〔→ 剥皮の仕方〕とは、ちょっと異なるようですので、ご注意を。



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オオルリ観察会(’07年4月21,22,28,30日)

 からすの学校 ・第17回は、オオルリ観察会
信州野鳥の会 会員で、個性溢れる解説をされる三人の方々を講師に招いての四日間でした。
 お蔭様で大成功! 毎回それぞれ異なる出会いと感動がありました。時には目の前の一羽をじっくりと観察したり、時には4,5羽が一本の樹にとまっている(縄張りができる前の)この時期だけの珍しい生態を目撃!  ほかにも、オオタカの悠然とした姿やノジコの美声など オオルリ以外でも盛りあがりました。
期間中 確認できた種類は… オオルリ、ノジコ、アオジ、キビタキ、ウグイス、センダイムシクイ、エゾムシクイ、コサメビタキ、ヤブサメ、イカル、イワツバメ、ミソサザイ、カワガラス、オオタカ、トビ、ヤマガラ、エナガ、シジュウカラ、 ヒガラ、コガラ、コゲラ、アカゲラ、カワラヒワ キセキレイ、カケス、ハシボソガラス など。







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葉でわかる樹木(’07年6月9日)

 からすの学校 ・第18回は、「葉でわかる樹木」観察会。 『葉でわかる樹木』(信濃毎日新聞)の著者である 馬場多久男氏 を講師に招いて、理論と実践の両面から、みっちりと学びました。
 午前中はスライドを見ながらの座学。より効率的に検索する方法(=著者の苦労の成果)を知ることができました。そして、午後は実践! 午前の会場と隣接した当園地に向けて 『いざ 出発っ!』…が、園地までの数百mの間の街路樹で、話題沸騰。
あちこちで足止めをくい、ようやく園地にたどり着いたと思いきや… 雨足が強くなり、急遽予定変更。  スタッフが採集したものを、室内で同定することに。
…で、いつもながらのことですが、皆さんすっかりはま ってしまい、終了時刻を過ぎても多くの方が図鑑と首っ引き。 しばらくの延長の後、やむなく 「タイムオーバー」 を宣言させていただきました。







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水辺の生き物の観察(’07年7月29日)

 からすの学校 ・第19回は、水生生物観察会。 梅雨あけのこの時期、清流での水生生物観察は お奨めです。(この日、からすの学校とは別に管理 事務所で対応した川遊び&観察会も好評でした)
観察できた生物は… オオナガレトビケラ(写真左)、ムカシトンボ(写真右)、ニッポンアミカモドキ、 モンカゲロウ、クロヒゲカワゲラ、フタフシモンカゲロウ、ブユ、アミカ、ガガンボ、マダラカゲロウ、ヒラタカゲロウ、モンカゲロウ、ヨシノマダラカゲロウ、ナガレトビケラ、ヤマトビケラ、コカクツツトビケラ、ウズムシ、 ナガレアブ、モンキマメゲンゴロウ、マメゲンゴロウ、サワガニ、イワナ、 カジカ など、その多くが清流に生息するものです。
なかでも前三者【オオナガレトビケラ、ムカシトンボ、ニッポンアミカモドキ】は絶滅が危惧される種であり、自然環境の高さの指標になる生物です。







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烏川の生いたちを探ろう(’07年10月13日)

からすの学校・第20回は烏川の生いたちを探ろう
 お話しは、松本盆地や北アルプスの成り立ちからはじまり、烏川の段丘扇状地の形成のされ方(堆積と隆起と侵食の相互作用) など、その壮大なる地殻の動きを、専門的でありながらも判り易く説明していただきました。
 昼食時間には、参加者が持ち込まれた収集品(岩石)を、‘おにぎり’片手の浅川先生が【お宝鑑定】。 質問者の長年の疑問が解決したようです。
 午後はフィールドに出ての露頭観察。 近くの断層や園内森林エリアの斧研沢(ゆきとぎ沢)の地層 をじっくりと観て回りました。 時に講師も驚く新たな発見があり、(スタッフも含め)参加者の皆さん、充実した一日となったのではないでしょうか。



     衛星画像などを使っての興味深い講義



       園内 ・外での地層や地質の観察

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歴史(’07年11月10日)

 からすの学校 ・第21回は歴史
人間の営みに焦点をあてるべく、烏川周辺の歴史を紐解いてみました。
 旧石器時代から現代まで、この地に連綿と刻まれた歴史。発掘から判った研究成果や考察を、百瀬先生ならではの巧みな話術で伺いました。 先生曰く「歴史は名も無き人々がつくりだしたもの、一部の選ばれた者がつくったのではない」 「発掘すると、そこに家があり、残された道具がある。まさしくそれは、我々と同様の無名の人々がいた証拠。 それが歴史となる」とのこと。  そう、私もあなたも歴史を創っている歯車の一つということなのです。
 午後は古墳や廃寺の探訪。 当園地のすぐそばに点在する遺跡の数に驚くとともに、浅学を恥じたのでした。一方で、知ることの喜びを覚えたひと時でした。







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野生動物の話(’08年3月1日)

  からすの学校 ・第22回は、野生動物の話とアニマル ・トラッキング。 長野県環境保全研究所主任研究員の岸元良輔氏に講師をお願いしました。
 午前中は室内で講義。 研究者ならではの調査データや写真を見ながら、わかりやすく解説していただきました。 たとえば、問題となっている動物の頭数推移や、あるいは… 樹の年輪から樹齢がわかるように、クマやシカは歯の年輪から、カモシカは角の年輪から、それぞれ年齢がわかることなど。(なんと、人間の歯にも年輪が刻まれているそうです)
 午後は屋外で野生動物の痕跡探し。 あいにく、午前中に降った雪で消されてしまい、残された足跡はリスやキツネ、サルなどわずかなものでした。
〔蛇足ながら… 講義のなかで、最近完成したばかりの剥製の数々を活用していただきました〕







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オオルリ観察会(’08年4月20,26日)

 からすの学校 ・第23回は、オオルリ観察会
例年ならば、4月15日頃には 園内のあちらこちらで見られるオオルリ。 しかし、今年は観察会の前日までその姿を確認できず 「20日は無理かなぁ」と諦めかけていました。 「皆さんに なんと言いわけしよう」と暗い気持で始まった1回目… ところが、歩き出して間もなく、あの瑠璃色の姿が見えたのです。
はるか東南アジアから 海を越え山を越え、律儀にもこの日に間に合わせて来てくれたかのようでした。
 20日は天候に恵まれましたが、26日は生憎の雨模様。 しかし、両日とも間近でオオルリを観ることができ、時にはクロツグミの美声が楽しめました。
⇒ オオルリの写真は、観察会において、参加者の
  I さん撮影のもの (オリジナル写真は → こちら



  「こんなに簡単に見られるんですか」 と参加者の声





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飛騨 ・信州の間道を歩く (中止)

 からすの学校・第24回飛騨 ・信州の間道を歩く は、中止となりました。 当初 5月24日の予定でしたが、雨天により31日に順延。 しかし、またもや天候に恵まれず、再度延ばして6月3日にしたのですが…なんと、今度は落石により林道が閉鎖になりました。 開催当日でなかったことは不幸中の幸いでしたが、結局イベントは中止せざるをえなくなりました。
 古道の一部は、今回踏査したことにより見出されたもの。 このような機会がなければ、時の流れとともに、ますます判りづらい廃道になっていたと思われます。 道筋を探している最中に見つけた【観音信仰】の証となる碑は、往時を偲ぶ縁(よすが)として、貴重な発見となりました。 それにしても、信州と飛騨 を往来するには、今で言う ‘北アルプス’を越えるこ とになり、途中には上高地があります。 あらためて 先人達の健脚さと、我が身の不甲斐なさを思い…



    谷を越え 川を渡り… 〔踏査のための仮設橋〕


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水辺の生きもの観察会(’08年8月3日)

  からすの学校・第25回は、水辺の生きもの観察。 過去2回、同様の趣旨で開催したところ、いずれも多くのご家族の参加をいただきました。 そして今年 も、小学生と父兄の方々で満員御礼になりました。
 夏はやっぱり川遊び! 皆さん楽しくも有意義なひと時を過ごされたようです。ある参加者いわく 「昔は水遊びができたのに、今はできなくなった川が多い。ここはいつまでもこのままでいて欲しい」 とのこと。 しかし、当園地の性格上、単に水遊びできればよいというわけにはいきません。 現在の環境を維持することが最優先。 その許容範囲で、人々も楽しめる川(烏川 ・小野沢川)であり続けることが求められます。
 幸いにも、開園7年目を迎えた現在、水質に大きな変化はないようです。 今年もまた、ヒラタカゲロウ、アミカ、ウズムシ、ナガレトビケラ、ヤマトビケラ など、清流に棲む生物を観察できました。





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木を植えた男』の世界(’08年11月29日)

  からすの学校・第26回は、『木を植えた男』の世界。   『南仏オート=プロヴァンスの住人たちは自分たちの故郷に満足しているのに反して、信州の住人たちで信州に満足していない人がかなり多い。 それは、日本人とフランス人の自然観や生活感覚の相違に由来しているのではないだろうか』との ご指摘からはじまった講義。 ヨーロッパ文明の基層:ケルト文明における世界観やその民族的背景の話から、現在のオート=プロヴァンスの自然や人々の生活など、スライドやビデオあるいはCDを駆使しての、瞬く間の2時間でした。 講義の中や休憩の合間には、日本にもファンの多いエンヤの楽曲を流し、気分はすっかりケルト的に…。 (講師の著書タイトルに従 えば)『信州松本(安曇野)は日本のオート=プロヴァンス』であることを実感したひと時でした。



世界的ベストセラー:『木を植えた男』の驚くべき真実は?


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木地師の世界(’09年2月21日)

 からすの学校・第27回は、木地師の世界
漂泊の職人集団という一面から、時に、良きにつけ悪しきにつけ、様々な誤解があったことを判りやすく解説していただきました。 その興味深い伝説 ・ 伝承とともに参加者の皆さんが注目されたのは、 轆轤(ろくろ)の技によって生まれた数々の名品。松本市の木地師小椋邦彦さんの作品や、おそらく今後 目にする機会の無いであろう 百万塔 (下写真:中央奥の 「三重の塔」様式の二つ) などを、見て触れる貴重な体験をしていただきました。   また、折口信夫(民俗学者、歌人:釈 超空)と木地師の関わりについても解説いただきました。  歌集『海やまのあひだ』の一首『人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。旅寝かさなるほどの かそけさ』に、生きるもの ・死にゆくものへの優しさや 憐(あわ)れを感ぜずにはおられません。〔以前の木地師の話題は⇒
こちら







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冬の樹木観察(’09年3月14日)

 からすの学校・第28回は、冬の樹木観察
この時期の恒例講座となった、馬場多久男先生による、冬の樹木観察です。 小雨まじりの冬寒の一日、今回の講座を通じて、多くの方がこれまで‘見ても見えず’ だった冬芽に興味を持たれたようです。
 まずは園内で標本の採取。葉に比べて個体差の少ない冬芽ですが、枝のタイプ(短枝、徒長枝、当年枝etc) により変異があります。 あるいは、切断する個所により、与えるダメージが大きく違います。いかに適切に採取するかのノウハウをご伝授いただきました。 その後、会場を室内に移して、数名づつの班に分かれての検索(同定)実習。   はじめは戸惑っておられた方も、やがてコツをつかみ、採取あるいは事前に用意したサンプルを次々と同定されました。
こうしてまた、マニアック(?)な方々の誕生です!






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オオルリ観察会(’09年4月19・25日)

 からすの学校・第29回は、オオルリ観察会
春の恒例イベントとして、毎回好評を博しています。今回も定員を上回るお申し込みをいただきました… が、心配だったのは 1回目(19日)。  昨年は4月20日(観察会当日)に初確認しましたが、今年は4月16日でした。 しかし、 その時見ただけで、それ以降は鳴き声すら聞かれず、ハラハラしながら迎えた当日。 そんな心配をよそに、まるで存在をアピール するかのように、駐車場わきの樹の上で 盛んに囀(さえず)り、車で到着する参加者を迎えてくれました。 2回目(25日)は、生憎の荒天のため短時間の観察でしたが、雨に濡れたオオルリの姿は 多くの皆さんにとって印象深いものだったようです。室内の講義では、講師の軽妙洒脱な話術により、オオルリをはじめ、数々の野鳥への理解を深めたのでした。






      上: 一回目(19日)  下:二回目(25日)


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樹木観察会(’09年6月27日)

 からすの学校 ・ 第30回は、葉・でわかる樹木観察。 この時期の恒例講座として、毎回好評を博していますが、今回は、ちょっと趣向を変えてみました。 まずは、園内を歩きながら、樹木のことや山づくりのあれこれを語っていただきました。 皆さん、アカデミックかつ実践的なお話を 『聞き漏らしたら一大事』と思われてか、先生を囲む輪は いつのまにか小さくなるのでした。   後半は、樹木の葉や花から、その樹種名を調べる検索実習。数十種類のサンプルを目の前にして、戸惑いをみせる方もおられたのですが…  当初は要領を得ずに苦労していた方も、やがてコツをつかみ、次々と調べ上げていきました。
 自然のことに限らず、何かを好きになる第一歩は、その名前を知ること。 名前が判れば より深く関心を持ったり、調べることができるからです。








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水辺の生きもの観察会(’09年7月26日)

 からすの学校 ・第31回は、水辺の生きもの観察。  親子を中心に県内外から多くの方々のご参加をいただきました。 室内での講義と実際に川に入っての観察で、皆さん 驚きの時間を過ごされたようです。  興味深かった話題は… 【現在上高地から松本盆地に流れている梓川は、 2万6千年以前は飛騨側に流れていた。その地形の変遷を水生生物(この場合はオビカゲロウ) のDNAを調べることで推し測れる】というもの。 カゲロウといえば儚(はかな)さの代名詞と言えます。 その儚き虫をよりどころに、遥か数万年の昔を偲ぶことができるなんて… しかしながら、 数十万年(原人を祖先とすれば 100数十万年)の歴史しかない人間と比べ、カゲロウ類の誕生は(なんと!)4億年前に遡ることを考えれば、驚くには値しないのかもしれません。 小さき虫から教えられ…









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土壌動物観察会(’09年10月17日)

 からすの学校・第32回は、森を耕す生きものたち。  まずは土壌動物の採取。方法やコツを伝授していただいたあと、2人づつのペアを組んで、いざ出発!  最初は「簡単にみつかるものなのかなぁ?」 と弱気な方もちらほらと。  しかし、落ち葉をどかしたり、地面をちょっと掘ってみれば… トビムシ、ムカデ、ヤスデ、ワラジムシ、ヒメフナムシ、ザトウムシ、センチュウ、ケバエガの幼虫 などが次々と現れました。
 屋内で、それらをスケッチして、じっくりと観察。これまでは 見ても見えずだった小さな生きものの存在を実感されたようです。 あわせて、研究者用のツルグレン装置(※)や、身近な材料でできる 簡易ツルグレン装置をご紹介させていただきました。
(※)中型土壌動物を採集するための装置 : 土に熱を加えて乾燥させ、動物が下方へ移動する習性行動を利用して集めるように考案された装置









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野生動物について(’10年2月20日)

  からすの学校・第33回は、野生動物の話しとアニマル・トラッキング。 座学は、この周辺に棲む野生動物(哺乳類)について研究者ならではの興味深い講義となりました。 また 昨年9月に長野県乗鞍高原において ツキノワグマによる人身事故が発生した経緯についても講話いただきました。 そのクマは雄で、体毛の分析結果から、餌付されてはいないことや、 歯の成長状況から19歳(クマとしては老獣)であるとが判明したとのこと。なんらかのきっかけでパニックになり、次々と人を襲ったようです。しかし、人間以上に恐怖感を抱いていたようで、走り回りながら脱糞していたとのこと。  一説には、木陰に隠れているのを見つけた観光客が石を投げて、それが引き金になったとも言われています。  不憫にも彼は無残な殺され方で死にました。こんな悲劇を無くすために、ヒトはどうすべきかのパンフレットを現在作成中です。







 テン,イタチ,キツネ,ウサギ,リス,ムササビ 等の痕跡が…


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野鳥の話題&観察会(’10年4月24,25日)

 からすの学校・第34回は、野鳥の話題あれこれ。 1日目は、【鳥が森をつくる】ことや【都市鳥の生態】について講義していただき、身近すぎて見過ごしがちなカラススズメについて多くの知見を得ました。
 2日目は屋外での野鳥観察。講師として唐沢孝一氏と長野県環境保全研究所主任研究員の堀田昌伸氏をお招きしました。  例年ならば、歩き出してすぐに オオルリを観察できるのですが、今回はこれまでになく不調。 『企画が始まって以来、初めての不発かなぁ』と弱気になりかけた頃… いました いました! オオルリが!  『やれやれ どうにか公約は果たせた』 と安堵したのですが、その後が続かず…
〔後で知ったのですが、その頃、出発地点に群れがいたそうな〕 しかし、これまで園内で数回しか視認できなかったキクイタダキを見られたのは収穫でした。









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樹木観察(’10年6月19日)

 からすの学校・第35回は、葉・花・実でわかる樹木観察。  樹木分類(検索)シリーズとして毎回好評を博する講座です。今回はまずはじめに『森づくり ・山づくり』 と題して講義していただきました。  理論に偏らず、フィールドでの研究や実践の成果を聞くにつけ、大学の先生とは思えない説得力 (←おぉっと 失言!) に惹き込まれるのでした。  参加者の中には、山づくりをしている個人やNPO関係者、造園業あるいは林業の方などもおられ、講師の示唆に富む話題は即活用できるのではないでしょうか。
 午後は【葉・花・実を使っての樹木分類(同定)】。 いつもながらのことですが、はじめはそれど熱心でない(関心が無い?)方も、検索方法のコツがつかめると やがて夢中になって 図鑑と首っ引きになるのでした。‘知ることの喜び’ を体感できるひと時です。









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水辺の生きもの観察会(’10年7月24日)

 からすの学校・第36回は、水辺の生きもの観察会。 毎年、この時期の恒例イベントとして定着した感のある催しです。 講師は長野県環境保全研究所の北野研究員。 ご家族での参加が多かった今回。 炎天下で頭は暑く、清流に入って足は冷たく、 多くの生物が生きていることを知り心は熱くなる講座となりました。 観察できたのは、カワゲラ、カゲロウ、トビケラの仲間多種や、ムカシトンボ、イトトンボのヤゴ(トンボの幼虫)、 イワナ、アズマヒキガエルといった生きもの達でした。 終わってからのアンケートに、このような回答がありました → 『川ではついつい魚に目がいってしまうが、その魚を見かけるには今日見た虫たち、きれいな流れ、 森が必要ということを、子どもたちもわかった』 というもの。  まさにそのような思いを持っていただければとの願いのイベントであっただけに、主催者には励みとなるコメントをいただきました。









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骨から見た動物のお話(’10年10月30日)

 からすの学校 ・第37回は、骨から見た動物のお話と頭骨ストラップ作り。  左写真は豚の足の骨格標本(!)。参加者の多くは、豚足は食べていても 足の指が何本あるのかは気に留めていなかったよう です。(ご存知です? 豚の足の指が何本あるか?) 先が 2つに分かれていることから、2本と思われる方が多いようですが、正解は 4本。 人間の手で言う 親指(第 1指) は、ほぼ完全に退化し、さらには、人差し指(第 2指)と小指(第 5指)も使うことが少ないことから退化して離れた箇所にあります。 そのため、中指と薬指にあたる第 3指と第 4指のみが 目につくのでした。(ちなみにウマは第 3指:中指のみ)
 飾り(?)を外すと様々な疑問も解決します。今回、頭骨を並べて観察したことで、タヌキとキツネが同じ仲間(イヌ科)であることや、イタチとテンが同じ仲間(イタチ科)であることをご理解いただけました。







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文学と信州(’11年1月29日)

 からすの学校 ・第38回は、文学作品から見た信州の自然とその魅力。当からすの学校において、文学は特異な講座です。 これまでの講座の多くが、動植物や地質など自然に関わるものであり、その他に歴史や民俗、クラフト などの分野で開催してきました。今回は文学の第2弾。参加者は、いつもとは違う雰囲気をかもしだされている方々で、カルチャーの違いを感じたのでした。(偏見?それとも劣等感?)
 講師が信州に住むことになった経緯やこの地への愛着を語っていただき、あわせて、幾多の文学作品を引き、信州と文学について講義いただきました。
多彩で原始的な自然に惹かれた北杜夫、南木佳士、玉村豊男。山を眺め山を撮影した田淵行男、深田久弥。 山歩き・山登りあるいは山の魔力を著した新田次郎、井上靖 などなど。 恵まれ過ぎて忘れがちな信州の価値を再認識したひと時でした。







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冬の自然まるごとウォッチング(’11年3月1日)

 からすの学校 ・第39回は、スノーシューハイクと冬の自然観察会。  まずは室内で当園地のある安曇野に棲む動物について解説していただきました。(後のアンケートで判ったことですが)講師の巧みな話術に惹きこまれ、いましばらく興味深いお話しを聞きたいとの受講者が多数おられたようです。
 未練を残しながらも、外に出てのアニマル・トラッキング。 数日前の雨のため、スノーシューで歩くにはコンディションがいまいちで、はたして動物の痕跡 (足跡)が見られるのか心配したのですが… 始まってみれば サル、キツネ、タヌキ、テン、イノシシ の足跡やツキノワグマの熊棚(樹に残されたクマの食痕)、 さらには行く手を横切る 2匹のリス などが見られました。
 日ごろ忘れがちな野生動物の痕跡を目の当たり にして、身近な存在として実感できたひと時でした。







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烏川流域の里山の歴史(中止)

 からすの学校 ・第40回は、烏川流域の里山の歴史を予定していました。  しかし、未曾有の地震災害が発生したことにより、中止といたしました。





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オオルリ観察会(’11年4月26日)

 2日間おこなったオオルリ観察会。1日目は生憎の雨模様。そのためなのか、オオルリを観ることはできませんでした。 毎年おこなっているオオルリ観察会でオオルリが姿を現さなかったのは初めてのことでした。 始まってすぐに囀(さえず)りが聞こえ、幸先良いスタートになったのですが… ただし実際には、スタッフ(当WEB管理人)は目撃しました。姿は見えても啼かないために見つけることが難しかったようです。 そして雪辱戦となった 2日目。 …なんと、この日も姿を現したのは 1回のみ。オオルリ以外ではミソサザイ、コサメビタキ、ヤマガラ、シジュウカラ、カワガラス が見られたぐらいと、当園地にしては極めて不作な観察会となりました。その代わりと言っては語弊があるかもしれませんが、事故にあって保護中のオオルリ(下写真)を間近で観ていただきました。 ガラスにぶつかり現在は飛べない彼が、羽ばたける日はくるのでしょうか。









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間道を歩く(中止)

 からすの学校 ・第42回は、間道を歩くを予定していました。  しかし、台風の影響による降雨のため、中止といたしました。





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ツキノワグマのこと(’11年6月19日)

 からすの学校 ・第43回は、ツキノワグマを知ろう。  ツキノワグマの生理・生態や付き合い方などを知ることができた有益な講座でした。 テリトリー(縄張り)のない動物であることや、これまでの理解とは違う食性であることを知り、 (個人的に)得ることの多い内容でした。 〔上写真〕森林エリア・森の家にて、まずは座学。 当方で用意した 2頭の剥製(成獣と生後 5ヶ月の幼獣) や頭骨あるいは糞、 さらには 講師が持参された毛皮など、ビジュアルかつ生々しい資料で、参加者のご理解が深まったのではないでしょうか。
 〔下写真〕園地から少し離れたところにあるクマ棚を見に行きました。〔クマ棚の説明は⇒ こちら〕  思いもかけない身近な場所でクマとヒトが共存していることに、多くの皆さんが驚かれた様子でした。しかし、意識の高い方がほとんどで【危険動物 → 捕殺】との短絡的な思考をされる方はおられないようでした。









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粘菌(’11年7月24日)

 からすの学校・第44回は、粘菌の魅力と不思議。  定員を大幅に上回るご応募をいただき、急遽会場を変更したのですが、それでもまだ多くの方のお申し込みをお断りすることになってしまいました。 ご要望にお応えできなかった皆様には申し訳ない限りです。
 今回は、小学生から年配の方まで幅広い年代に受講していただきましたが、ちょっと意外だったのは中高生の参加が多かったこと。年金(粘菌)問題は年寄りだけの関心事ではないことが証明されました。
なかには相当な知識を持った高校生もいて、あちらこちらで高度な会話が。そんな彼らの期待に応える一方で小さな子どもも飽きさせない座学と実習になりました。「迷路を解く粘菌」として 研究者が「イグ・ノーベル賞」を受賞したことや、 アメーバ状で時に数十cmにもなるこの生き物が、実は単細胞生物であるなど、なんとも不可思議で興味深い存在です。







    下写真は、粘菌を観察&採集しているところ


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樹木同定と森林管理(’11年10月1日)

 からすの学校・第45回は、葉・花・実でわかる樹木観察。 毎年の恒例イベントとなった馬場多久男先生の樹木観察講座です。今回はちょっと趣向を変えて、『森林管理』について、その考え方や実践方法を講義していただきました。 まずは室内で、森林管理(山づくり)の事例を見ながら、どんな調査をおこない、その結果をどのように活かすのかをお話しいただきました。 あわせて、森林管理には必要不可欠な知識 (技術?)である、樹木同定のための検索図鑑の使い方も学びました。  後半は、当園地森林エリアを歩きながらのフィールド講義。 軽率な作業(皆伐や低層植物の排除など)で、数十年を棒に振ることを回避するためには、そこにある樹や草の生態を知ることが必要不可欠です。  そのための第一歩は、植物の名前がわかることであると、受講者の多くの方々に認識していただけたようです。









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間道を歩く(’11年10月23日)

 からすの学校 ・第46回は、間道を歩く。 3年越しの計画がやっと実現できました。 当初の予定は '08年 5月 24日でしたが、雨天のため同月 31日に順延。 しかし、またもや天候に恵まれず、再び延ばして 6月 3日にしたのですが… なんと、落石により林道が閉鎖になりました。 そして捲土重来、今年の春に計画したのですが… 今度は台風による降雨のためやむなく中止! からすの学校始まって以来の珍事となりました。  裏話をすれば、このイベントの準備は からすの学校企画としては、最も準備時間と労力を要しました。 今は廃道となった道を踏査し、道跡を探し出し、笹を刈って道筋をつくりました。 『本当にこの道で合っているのだろうか?』と不安になりかけたころ、馬頭観音や「南無大悲観世音」の石碑を見つけ出して感激したのも今は懐かしい思い出です。 5度目の正直で実現した古人の疑似体験でした。







    道々の途中にある石像や石碑に古を偲ぶ


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アニマル・トラッキング(’12年1月29日)

 からすの学校 ・第47回は、スノーシューハイクと冬の自然観察会。  昨年好評だった同企画、今回も定員を大幅に上回るお申し込みをいただき、多くの方にキャンセル待ち をしていただくことになってしまいました。 はじめに室内でアニマル・トラッキングについて、その内容や方法を講義していただき、その後スノーシューを履いて森林エリアを散策&観察しました。 前夜までの雪のために、足跡の数・種類とも少なかったのですが、それでも以下の痕跡が観られました。
キツネ、テン、オコジョの足跡、ツキノワグマのクマ棚、リスが巣材を集めるために剥いだスギ、 アカネズミが食べたオニグルミ 等々。 身近に生きている動物に気づいていただけたようです。  下写真は、コナラに残されたクマ棚を観ているところ。 当WEB管理人から、周辺での クマの目撃情報や研究者から聞いた生態についてなどを 解説させていただきました。









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烏川流域の里山の歴史(’12年3月25日)

 からすの学校 ・第48回は 烏川流域の里山の歴史 〜入会山を複眼で見る〜。 当園地のある烏川流域の里山(入会山)について講義していただきました。 入会山の利用のされ方のひとつに、田の肥料(刈敷)の採取があります。そこで、当時の水田面積と単位面積あたりの刈敷の必要量から、 烏川流域周辺の村全体でどれほどの量の刈敷がいるのか、あるいは、それを馬で運ぶ作業量はどれほどか、などを計算してみました。その計算結果は驚くほどの膨大な量となりました。そのため、江戸時代中期には(採り過ぎて)山が荒れ、山奥まで行かなければならなかったり、争いが起こったとのこと。 どうやら、山の荒廃は昨今のことではないようです。他にも、空中写真(国土地理院やランドサット)による、戦後の植生変化の読み取り方や、信州と飛騨を結ぶ間道について、あるいは野性動物の生息状況などを学びました。







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オオルリ観察会(’12年4月21,22日)

 からすの学校 ・第49回はオオルリ観察会。春まだ浅い園内での、毎年恒例のイベントです。今年もまた多くの方にキャンセル待ちしていただいたことを、お詫び申し上げます。  ところで、毎年ぎりぎりまで姿を見せないオオルリに、気が気でない思いをするのですが、やはり今年も同様でした。 数日前に初確認したのですが、前日までは ‘声はすれども姿は見えず’状態でした。 「今年はダメかな」との思いがよぎったのですが… しかし、いざ当日になってみれば、二日間とも、じっくりとオオルリ観察ができました。 ところで、今回の目玉メニューは『猛禽類について学ぶ』こと。ワシタカ類の渡りの調査地として知られている白樺峠で長年調査されている講師ならではの、説得力あるお話を伺いました。 さらには、講師自身が撮られた写真は素晴らしく、ハチクマクマタカ などについて、その生態を目の当たりにすることができました。









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樹木観察(’12年5月26日)

 からすの学校 ・第50回は葉・花・実でわかる樹木観察。 平成17年6月から始まった『からすの学校』。今回はその記念すべき50回目(うち、中止が3回)となりました。 この 7年間に多彩な講師を招聘させていただきました。 その講師陣のなかでもっとも回数の多い馬場多久男先生に、今回の記念すべき講座をお願いいたしました。 今回は、葉による樹木分類(同定)のほかに、講師が携わったアカマツ林のフィールド研究の成果を解説していただきました。 群落の特徴的な植生と、土壌・土質・斜面の方角・標高などとの相関関係を垣間見ることができました。
 林床の植生(自然に生えている植物の種類)が判れば、たとえ雨の日であっても、その土地の日常的な乾燥具合が知れることに感心したり、一方で、点的な間伐では‘山づくり’はおぼつかないと聞き、 戸惑い顔の受講者もおられたことが印象的でした。





    名前を知ることが、自然を理解する第一歩


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う ○ こ(’12年6月9,10日)

 からすの学校 ・第51回を、二日間に渡って開催いたしました。 1日目は公開講座 “ウンコはごちそう!”。   2日目は公開学習会 “ウンコでわかる命のつながり” でした。 写真は 2日目の様子。まずは室内で菌類について学びました。いつもは上から目線で見るきのこ(子実体) が、視点を換えて虫になった気分で下から見上げると、思わぬ造形美であることを知り、参加者の多くが感激されていました。
 後半は、フィールドに出て、【お尻を拭くための‘マイ・葉っぱ’】を探しました。 今回の講座の副題は【お尻で見る葉っぱ図鑑】。 お尻を拭くのに適した葉っぱのうち、お薦めのひとつが園内にもあったキリの葉。 他にご推奨はノウタケとのこと。園内でも見かけることの多いキノコですが、そんな一面があったとは… 乾燥させた物を実際に触ってみて、半信半疑だった皆さんも納得です。 〔ノウタケの話題は→こちら









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驚異と感動の生物(’12年7月8日)

 からすの学校 ・第52回は、アブラムシ観察会
アブラムシは、草木の液を吸汁し、葉や実を縮れさせ、新梢の奇形化を促し、ウィルス病を伝搬するなど、植物にとっては不倶戴天の敵です。 植物の側に立つ(?)当WEB管理人としては、アブラムシはまさに宿敵。その憎っくき相手を知る機会となりました。
 アブラムシが爆発的に増えることが可能な理由、その生理や生態、(効果のある)天敵について など。 当園地で新種のアブラムシ (オニグルミクチナガオオアブラムシ) を発見された研究者ならではの、興味深い話題が目白押しでした。 ところで、当WEB管理人の当初の心配は『参加者が集まるだろうか?』というもの。 メジャーとはいえない領域だけに、一抹の不安がありました。 しかし、いざ蓋を開けてみると、満員御礼の参加者数となり、当日は講義も観察会も、思わぬ(!?)盛り上がりをみせたのでした。







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用水路学習会(’12年10月14日)

 からすの学校 ・第55回は、烏川扇状地の用水路学習会。  北アルプスを背景に一面に広がる田園は、安曇野の原風景です。 その田んぼに欠くことのできないのが、潅漑(かんがい)のための用水路。今回の講座では、烏川渓谷と扇状地の生い立ち、 縄文時代〜古墳時代の遺跡、烏川の名の由来、取入口の地形や構造についてなどを、座学(講師:重野昭茂氏)と現地見学(講師:古幡達雄氏)を通して学びました。 地質や歴史についての室内での内容濃い講義の後、フィールドに出て、園内に残された堰(せぎ)をはじめとして、その取水口や流路、増水時の排水路を目のあたりにしました。 ちなみに写真の用水路は現在使われているものであり、その取入口は大岩を穿って開けたトンネルを流路としているとのこと。 講座を通じて、安曇野に生きた先人たちの苦労を偲び、その偉業に驚かされたものです。







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アニマルトラッキング(’13年2月7日)

 からすの学校 ・第56回は、アニマルトラッキング。  この時期恒例の講座ですが、今回初めて水辺エリアにおいて開催しました。 積雪深があり、生息する野生動物の種類が多いことから、それなりに期待してはいたのですが… 明け方までの降雪ということもあり、思ったほどの痕跡はありませんでした。 それでも、キツネテンリスの足跡やツキノワグマのクマ棚やミツバチの巣を襲った跡などが観察できました。
 なによりの収穫は 【本来のアニマルトラッキング】をしていただけたこと。 この手のイベントでありがちなのは、足跡をみつけて、その種類を伝えるだけのもの。それは単に【足跡ウォッチング】です。『トラッキング』とは『追跡』のこと。 今回は、キツネの足跡をしばらくの距離追跡しました。キツネが、いかに脇目もふらずに一直線に歩いているのかを得心していただけました。







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オオルリ観察会(’13年4月27,28日)

 からすの学校 ・第57・58回は、オオルリ観察会。例年ならば 4月20日過ぎの最初の週末に実施するのですが、今年は一週間遅らせて開催しました。
 2日間の内の 1日目。スタート直後は、前日までの賑やかさが想像できないくらいに鳥の出現は少なかったのですが、終盤になったころ オオルリルリビタキが幾羽も現れてくれました。2日目は 打って変わった状況。オオルリがいたるところで見られ、あわせてコマドリ、ウグイスと【日本三鳴鳥】が観察できました。
  また、室内講義では、さすがに信州野鳥の会会長ならではの、数々の興味深い話題が提供されました。例えば、現在松本市の街中で見られることでニュースにもなっているハヤブサのこと。じつは当WEB管理人も、数日前に (じっくりと)目撃しており、 その飛翔の姿に魅せられて時を忘れ、場違いな双眼鏡を持って、車の行き交う道路に立ち続けたものです。





  【2日目】探すまでもなく、次々とオオルリが現れる


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水生生物観察会(’13年6月8日)

 からすの学校 ・第59回は、水生生物観察会。  烏川渓谷緑地の売り(謳い文句)のひとつに『水生生物の種類と生息数の多さ』があります。 5〜6月にかけて、安曇野市内の小学校 10数校・1000人あまりの体験学習(環境教育)が園内でおこなわれます。 それら児童への対応として、【園内を散策しながらの自然観察】【レクチャールームの展示品説明】そして【水生生物の採集&観察】 をおこなっています。 これまで 10年近く接してきて感じたことは、多くの子供たちが動物や野鳥に興味や好ましい思いをもつことがあっても、いざ昆虫となると無関心あるいは拒否反応を示すということ。 しかし、そんな子供たちも、実際に川に入り自ら採集した生きものには興味をもちます。 今回の講座は、水性生物研究の第一人者から昆虫生態を学ぶとともに、ライト・トラップの仕組みや作成方法を知る絶好の機会となりました。





 夕方から始まったライト・トラップ(灯火採集)実践講座


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外来・帰化植物観察会(’13年6月22日)

 からすの学校 ・第60回は、外来・帰化植物観察会特定外来生物に指定されている オオカワヂシャが安曇野に多いのは、湧き水であるのが理由とのこと。 年間を通して水温が一定(ほぼ 15℃)であるため冬でも枯れず、今後ますます繁殖が心配されるとのことです。 懸念される影響に、準絶滅危惧種に指定されている在来種のカワヂシャとの交雑があります。繁殖力の強い交雑種が増えると、急速に在来種の遺伝的攪乱が生じます。 なお安曇野では、カワヂシャと同じ場所に ワスレナグサ(外来種)が生えている場所があり、その際はカワヂシャが除草されてしまうことが多々あるとのこと。 『見た目に好ましい』という、ヒトの価値観による、在来種を減らし外来種を増やす行為です。 余談ながら、数日前に訪れた上高地においては、ワスレナグサ属の中で唯一の在来種である エゾムラサキが、一面に咲いていました。





     安曇野の外来種問題を再認識した講座


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間道を歩く(’13年11月3日)

 からすの学校 ・第61回は、間道を歩く。 以前好評を博した講座ですが、今回はそれをブラッシュアップした内容で開催しました。  まずは、集合場所から紅葉を愛でながら‘馬頭観音’へ。 午後にたどり着いた‘南無大悲観世音’の石碑とともに、この道が まさに飛騨に通ずる古道であった証となるものです。 写真の馬頭観音は当緑地の近く(車で10分ほど)にあります。ここを到着地とした飛騨からの旅人は、里にたどり着き さぞやほっとしたことでしょう。 一方で、ここを山越えの出発地とする旅人は、これから先の苦難を思い、気を引き締めたことでしょう。  この先 その旅人は、目の前にある大滝山を越え、徳澤から上高地に入り、焼岳の麓を通り、飛騨に向かいます。講師資料には『昔飛騨の 2人の幼い姉妹が、別れた父を慕い飛騨古道を通り、この近くで力尽きた』との胸しめつけられる一文がありました。





      マウスオンで馬頭観音(4体)を明示


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アブラムシ観察会(’13年11月10日)

 からすの学校 ・第62回は、アブラムシ観察会。  一般にアブラムシ=害虫との固定観念をもたれやすい生物です。 しかし、その生態には興味深くも驚きの事実が多々あります。 他の昆虫と比べて著しい違いは… ・通常は雌のみ現れる ・交尾をしなくてもよい  ・子虫は親の体の中で孵化する ・個体によっては翅をもつ 等々。ところで、今回の講座では、観察だけでなく【解剖&標本づくり】も体験していただきました。有意義な体験に貢献してくれたのはヌルデシロアブラムシ。 園内に生えるヌルデ(樹木)には少なからぬ虫こぶがあります。虫こぶの名はヌルデノミミフシ。かつて、それを加熱乾燥させた‘五倍子’が、お歯黒(鉄漿)に用いられたとか。 その虫こぶを開くと、 中には数千のヌルデシロアブラムシがいます。体長1mm程度の小さな虫を解剖するという至難の作業に、皆さん果敢に挑んでおられました。





    実体顕微鏡と針で作ったピンセットで解剖中


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アニマルトラッキング(’14年2月20日)

 からすの学校 ・第63回は、アニマルトラッキング。  開催予定日は近年まれに見る大雪(豪雪)になったため延期しての実施となりました。  講座の始まりは室内での講義。 当園地や周辺に生息する野生動物のあれこれについて、面白くも真面目な話題で盛り上がりました。 その後、フィールドに出ての観察。当日は60cmあまりの積雪深があったために、参加者の皆さんにはスノーシュー の効果とありがたさを実感していただけたようです。  園内には多くの種類の陸生大型哺乳動物が生息していますが、今回確認できた痕跡は少ないものでした。 残されていた足跡(痕)は キツネタヌキニホンザルノウサギリスなど。  時折見られるテンカモシカイノシシなどの痕跡はありませんでした。 そんななかで話題になったのがヤマドリの歩行した跡。 追跡して「鳥なのに、こんな所を歩くのか」との驚きの声があがりました。





        ヤマドリの歩いた後を追う


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間道を歩く(’14年5月17日)

 からすの学校 ・第67回は、間道を歩く〜春〜。  昨年の秋に開催した同講座の春バージョンです。 写真は、この道が古道であったことの証である【南無大悲観世音菩薩】 の石碑文を講師が読み解いているところ。 秋と同じ道でありながら、新緑の中の古道歩きは心躍るものがあります。 紅葉の季節に、はらはらと落ちる木の葉の中を歩くのも捨てがたいのですが、旅人にはちょっと寂しい道。 この先、蝶ケ岳を越え、上高地を過ぎ、飛騨までの旅を思えば、さぞや心細くなったことでしょう。 それに引き換え、この時期の旅は、生命観あふれる樹々やさえずる鳥の声を聞きながらのウキウキした道中です。…などとお気楽なことが言えるのは、身の安全を保障された現代人のこと。昔の旅人は相当な緊張感を持って旅を続けていたはずです。 一方で、自然に対しては、はるかに優れた感覚や価値観を持っていたことでしょう。





   古の旅人も、こんな日なら楽しかったことでしょう


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髪・紙・噛み 切り虫(’14年7月26日)

 からすの学校 ・第69回は、カミキリムシ観察会。  草木の枝や葉を棒でたたいて、落ちてきた昆虫を逆さにした‘こうもり傘’で受けるという方法 (これをビーティング法という)で、カミキリムシ各種(ニセビロウドカミキリ、ヨツスジハナカミキリ、ハンノキカミキリ、ゴマダラカミキリ、 ホソツツリンゴカミキリ、フタスジカミキリ)をはじめとして 30種あまりの昆虫を観察できました。 ところで、今回の大収穫のひとつがオオキンカメムシを見つけたこと。 長野県内ではめったに見られない珍種であり、 参加者はいうまでもなく、講師でさえも実物を見るのは初めてという希少種です。本来の生息域は関東以西の照葉樹林(ツバキ、マテバシイ、タブノキなど)であるため、長野県で見かけないのは当然と言えます。 観察会においては、知っているようで知らない事象を再認識することの大切さがある一方で、未見の生きものに出会える悦びもあります。





      マウス・オンでオオキンカメムシ表示


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幻の動物(’14年12月20日)

 からすの学校 ・第71回は、ニホンカモシカ学習会。 かつてカモシカは【幻の動物】とされていました。 そのことから、今でも国の特別天然記念物に指定されています。そんなカモシカですが、一時『奥山の木を伐り過ぎたので、里山に下りて人工林被害をもたらしている』との風評がありました。 それが真実であるか否か、講師をはじめとする研究者たちのおこなったフィールド調査の結果、誤りであったことが判明しました。 個体数が少ないだけでなく、特別天然記念物であることから容易に捕獲することができず、研究は困難であったとのこと。 個体調査といいながら、出会えずに空振りに終わる日が多かった一方、そこに行けば同じ個体を観察できることから、テリトリー(雌雄で広さやエリア重複が異なる)を実証できたことなど、 自ら野山に分け入り体感されたお話だけに、説得力と感動をおぼえた参加者が多かったことでしょう。





  カモシカの過去の話題は ⇒ こちら と こちら


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アニマル・トラッキング(’15年1月25日)

 からすの学校 ・第72回は、アニマル・トラッキング。 この時期に恒例となっている好評イベントです。 雪原をスノーシューを履いて自由に歩き回るだけでも楽しいのですが、その上さらに、野生動物について『知る喜び』があります。 写真は、開始後間もなく見つかった足跡(足痕)を注視しているところ。 足痕(フットプリント)の大きさから、大型獣であることは一目瞭然。いくつかの足痕を観察して候補に挙がったのは カモシカ、ニホンジカ、イノシシ。 さらにじっくり観ると、その特徴からイノシシと判明。 さて、動物の種類が判ったところで、アニマル・トラッキングのお楽しみはこれからです。 残された痕跡を追って、野生動物の行動や生態に思いをはせることが本来の目的。 この時の足跡(トラック)から、2頭が川から上がって雪原を歩いて行く様子を想い描くことができました。観察力と想像力を駆使しての楽しい時間が流れました。





    姿を見ることはなくても、その存在を実感する


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スノーシュー(’15年2月11日)

 からすの学校 ・第73回は、スノーシューハイク。  からすの学校 としては珍しく、園地外を会場にして実施しました。 場所は当緑地 ・森林エリアの横を通る林道。  この道は、やがて常念岳への登山口(一の沢登山道口)に至ります。 飛騨山脈(北アルプス)の一部である常念山脈。 登山シーズンともなれば、その主峰である常念岳、あるいはそれに連なる峰々を目指す登山者の車が、引きも切らずに通る道ですが、当然ながら今その面影はありません。  下見の際は 「林道歩きで、ちょっと物足りないかな」と一抹の不安があったのですが、いざ始まってみると、目前にせまる常念岳や蝶ヶ岳の眺望や、 いたるところにある動物の足跡からその生息の多さを目の当たりにするなど見所の多さと、なによりも講師の巧みな解説に惹きつけられて、瞬く間に時が過ぎました。





 啄木鳥(きつつき)の採餌痕観察〔写真にマウス・オン〕


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冬越しの生き物(’15年3月14日)

 からすの学校 ・第74回は、冬越しの生き物観察とオオルリシジミのお話。 この講座のために、昨年‘こも巻き’をしました。最近になって、開催を前に確認したところ… 結果は惨敗でした。設置したどれにも虫の姿はありませんでした。 そして当日。幸か不幸か、明け方の降雪のためにフィールドには出られず、室内での座学となりました。 そんな無念な状況で始まったのですが、終わってみれば、それらが帳消しになる有意義な講座となりました。 とりわけ、時間をさいて講義していただいたのがオオルリシジミ。 かつて安曇野には多く生息していたのですが、今や絶滅危惧種となった蝶です。その生態について、データや写真により明快に解説していただきました。 歴史をひも解き、勅旨牧(ちょくしまき : 古代の朝廷直轄の牧場)の存在と オオルリシジミの生息の関連性についての推論に多くの方が心惹かれたようでした。





   人との関わりが深いオオルリシジミについて


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オオルリ観察会(’15年4月23,29日)

 からすの学校 ・第75回は、オオルリ観察会。 春が来て、毎年、新年度の【からすの学校】は、このオオルリ観察会から始まります。 今春のオオルリの初見は 4月6日、キビタキは翌 7日でした。 例年に比べて 2週間ほど早い渡来でした。その後、何日かはオスの群れが見られたこともあったため、観察会当日を楽しみにしていたのですが…。  いざ、ふたを開けてみると、これまでにない絶不調でした。両日とも、開始前には、【日本三鳴鳥】の面目躍如たる鳴き声を響かせていました。 しかし、講義が終わりフィールドに出る頃には、あたりはすっかりと静かになり、カラ類の鳴き声さえ聞こえず、まさに【カラ振り】状態。  オオルリ観察会でありながら、1日目は見られず、2日目にじっくり観察できたのは 1羽だけ。 その日以前に視認していた サンショウクイ、コサメビタキ、ノジコ、キビタキ なども、その姿を現しませんでした。





  マウスオンで、長旅を終えたオオルリの雄の勇姿


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間道を歩く(’15年5月30日)

 からすの学校 ・第77回は、間道を歩く 〜烏川の歴史をたずねて〜。  好評の『間道を歩く』シリーズの4回目です。これまでとは違い、間道を歩くだけではなく、烏川の生い立ちを地形的な面から知ることが目的のひとつでした。 標高1000mを超す場所に立ち、そこがかつての川底であったこと、隆起と侵食による河岸段丘の成立など、悠久の時の流れと壮大なスケールを実感できました。  ところで、今回の講座がいつもと違ったのは、お申し込みの段階で意思確認をさせていただいたこと。 危険の伴う悪路(笹刈りした場所や河床)を歩くことから、ある程度の山歩き経験者を対象としている旨をお伝えし、それを了解いただいた方にご参加いただきました。   終わってみれば… 一人のけが人も無く、『疲れたけれど楽しかった』とのご感想を聞くことができたことは、主催者冥利。 準備の苦労も報われました。





        深緑の中、道なき道を行く