お墓を移すことを「改葬」といい、これを行うためには、まず墓地を確保しなければなりません。この時必要になるのが「永代使用料」です。「永代使用料」とは、墓地または霊園の管理者から、墓地を永代に渡って使用する権利(永代使用権)を取得するための費用であり、よく「墓地を購入する」といいますが、これは墓地という土地の所有権を取得することではなく、お墓をお守りする方がいる限り、半永久的に使用できる権利を取得することとお考え下さい。また、取得後は継続的に管理料が必要となります。
「改葬」の手続きについては、地域によってやや異なりますので、ここでは一般的な流れについてご紹介しておきます。墓地を確保すると「受入証明書(永代使用許可書)」を発行して貰えますので、移したいお墓がある墓地または霊園の管理者に改葬の事由をいって「埋葬証明書」を発行して貰います。後は、移したいお墓がある市区町村の役所に行って改葬許可申請(受入証明書、埋葬証明書等と共に改葬許可申請書を提出)をすれば「改葬許可証」を発行して貰えますから、これをもって改葬の作業を進めることになります。
お墓参りに行くと、墓の後ろにたくさんの卒塔婆が建てられている墓がありますが、卒塔婆にはどんな意味があるのでしょうか?
卒塔婆は、古代インドの「ストゥーパ」という語を漢字にしたもので「そとうば」と読み、「塔婆」とも呼ばれ
ています。今日、「塔婆」といえば、木の板で出来た「板塔婆」を指しますが、もともとは「積み重ねる」という意味から「積み重ねて造られた塔」のことをいい、「五輪の塔」を意味する言葉でした。ですから「塔婆」の上部が「五輪」を表しており、上から「宝珠形」「半月形」「三角形」「円形」「方形」という形状になっています。この「五輪」を表す形状は、五大すなわち宇宙のすべてを構成する五元素のことで、「空」「風」「火」「水」「地」を表しており、そこに五大を意味する梵字の「キャ」「カ」「ラ」「バ」「ア」を記してお墓としました。また真言宗において「五大」は五佛五智のことでもあり、五佛は「大日如来」「阿しゅく如来」「宝生如来」「阿弥陀如来」「不空成就如来」を、五智はこれら五如来に配当される智慧(大日如来の法界体性智:絶対真理を現す知慧、阿しゅく如来の大円鏡智:森羅万象を鏡す知慧、宝生如来の平等性智:諸事象の平等を悟る知慧、無量寿如来の妙観察智:正当に観察する知慧、不空成就如来の成所作智:必要な事を行う知慧)のことをいいます。
「塔婆」に記されている内容についてですが、まず表には、上記の「梵字」に続いて年回忌の「十三仏の種字(しゅじ)」、「戒名」、「追善供養名」が記されます。これは、大日如来の大いなる世界で、故人がその懐で安らぐように、年回忌のご本尊に見守られていることを意味しています。「塔婆」の裏には、大日如来の種字である「バン字」が記され、その下に苦厄災難を除く「破地獄の真言」、大日如来を意味する「南無遍照金剛」、「年月日」、「施主名」が記されます。
卒塔婆は、埋葬時の他、法要、年忌、お盆、お彼岸などに、先祖や身近な故人の冥福を祈る意味で建てられますが、これは仏像を一体造るのと同じくらいの功徳があるといわれ、先祖や身近な故人はその功徳によって、もし苦界にある時は苦界を脱し、極楽にある時はますます楽土へと導かれるという意味があります。故人の冥福を祈ってお墓参りをする時、その気持ちを推し量ることはできませんが、卒塔婆は施主から故人への心からの便りとなるものであり、これを建てることは「最も故人の供養になること」とされています。
お墓参りに行くと、いつも何気なく合掌をして冥福を祈っているだけのような気がしますが、これで供養になっているのでしょうか? もっと心掛けることがあるとすれば、どんなことでしょうか?
お墓参りに、例えば「こうしなければならない」といった決まりはありません。大切なことは、故人を供養する気持ちですから、心を込めてお参りすれば大丈夫です。ただ、故人を供養するという意味で、一つだけ知っておいて頂きたいことがあるとすれば、故人は葬儀で戒名を授かり、引導を渡されたということです。つまり故人は引導を渡されたことにより、ご本尊である大日如来の弟子となり修行をしているということです。従って、お墓参りをすることによって、私たちがご本尊から授かる功徳を、故人のために回し向けて頂くことにより、故人の修行を後押しすることになり、ひいては供養となります。ですからお墓参りをする場合は、出来れば菩提寺にも参拝し、故人のためにご本尊に感謝の気持ちをもってお参りすることが大切といえます。
このことからお分かりのことと思いますが、お墓参りでは先祖や身近な故人の霊に対して、あまり願い事をしない方がいいとされています。成仏するために修行をしている先祖や故人に負担を掛けることになり、結果として供養にならないからですが、そうした意味では、感謝の心をもって「私も一緒に修行しますから、頑張りましょうね」というのがお墓参りのあり方といえます。いずれにしても、お墓は先祖や身近な故人との対話の場でもありますから、お盆やお彼岸だけでなく、出来るだけお墓参りをして、穏やかな心で生活している姿をお見せするのが何より大切といえましょう。